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【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#03『やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中』 ※ネタバレあり

どうも皆さんこんにちは、漫画系YouTuberのゲス顔です。

今回ご紹介する作品は、『やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中』
こちらの作品、漫画版3巻までを読んだレビューとなっております。

この作品に対する僕の感想を一言でまとめるのならば、「じれったさって尊いよね」といったところでしょうか。


この物語の主人公は、「ジル・サーヴェル」という名の少女です。
彼女は辺境貴族の娘であり、同時にその国の王子の妃でもありました。

魔力が強いこと以外に何の取り柄もない自分に求婚してくれた王子。
たとえそれが政略結婚であったとしても、自分を必要だと言ってくれる彼のために頑張りたい。

その一心で努力を重ねた結果、彼女は軍神令嬢と呼ばれるほどの戦果をあげる傑物になりました。

ところが、そんな彼女が反逆者として追われる身になってしまうのです。
理由は、彼女が夫である王子の秘密を知ってしまったから。

なんと、王子は実の妹とただならぬ関係になっており、それをカモフラージュするためにジルと結婚していたというのです。

そして、その秘密を漏らされる前に口封じをしようとします。
そんな理不尽に従う理由はないとジルは抵抗するのです。

しかし、軍を率いる王子に抗う術はなく、一縷の望みをかけて城壁から飛び降りますが、その身は飛んできた槍によって貫かれてしまいます。


ところが、彼女が気がつくと、その姿は10歳の少女になっていました。
場所は、あの悪辣王子15歳の誕生日パーティー。

それは、自分が王子から結婚を申し込まれた日です。
どういう状況になったのかはわからないが、自分の人生が狂ったのはあの告白からだと思ったジル。

何とか王子からの結婚の申し込みを避けるため、ちょうど近くにいたとある人物に自分から結婚を申し込んでしまいます。

しかし、その人物はやがてこの国を戦渦へと巻き込む隣国の呪われた皇帝だったのです。

といった形で物語がスタートします。

一度目の人生が不遇な形で終わってしまうも、記憶はそのままに過去に戻ってきたので、何とかその悲惨な未来を変えようと奔走するタイプのお話です。いわゆる、やり直しものやループものと呼ばれる作品だと思います。

最初の人生では結婚相手が最悪だったので、彼と結ばれないために何とか手を打ったら、あら不思議!もっと最悪な相手に求婚してしまいましたっていう感じで物語が始まるわけですね。

もちろん、普通に考えて急に隣国の貴族令嬢から皇帝へ結婚を申し込まれ、それに対してわかりました、なんていうのはおかしな話です。
しかし、この話ではそれが成立します。

理由はですね、告白を受ける皇帝側の事情。
ハディスが求めている結婚相手の条件に、そのときの主人公がぴったし合っているからなんですね。

その条件っていうのが2つ。
1つは、皇帝を守護している竜神の姿が見えること。
そしてもう1つが、14歳未満だということ。


ちょっと待ってください。
皆さん思われるかもしれません。ロリコンじゃねえか!と。

もちろんね、物語の中でそこら辺をいじる話はあります。
ですが、なぜこの皇帝が14歳未満の女性を結婚相手に選ぼうとしていたのかというのは物語の中心に関わる話で、この皇帝がロリコンってわけじゃないので安心してください。

このように、皇帝側には皇帝側の事情があって、主人公からの求婚を受け入れます。

主人公としても何とか前の結婚相手である王子から逃げるための手段として、この隣国の皇帝陛下が自分の求婚を受け入れてくれたという状況を利用しようとする。

それぞれが特殊な事情を持っているがゆえに成立してしまった結婚話っていうところから話が始まり、事情から生まれた見せかけの結婚・夫婦関係っていう中で、次第にお互いを理解し惹かれ合い、そして大切に思うようになっていく。

言ってしまえば王道ラブコメっていう感じでお話が進んでいくのですが、この2人の関係が進んでいく過程の中で、主人公の内にある様々な疑問が明かされていく形になっているのが非常にうまいなと思ってるんですよ。

こちらの作品はループものですので、主人公は前の人生の記憶を持っています。
しかしながら、一度目の人生もあくまで彼女自身の視点で見たものですから、何もかもを理解しているわけではありません。

もちろん、未来に起こることの一部は分かっているのですが、全てを見通しているわけではない。

その中で、何だかおかしなことがあるなって感じる部分が現れるんですよ。
まずこの作品の中心となる謎が、主人公が結婚する隣国の皇帝「ハディス・テオス・ラーヴェ」の人物像です。

実はですね、最初の人生で主人公はこのハディスと戦っているんですよ。
そしてそのありようときたら、まさしく冷酷・無慈悲・残虐、敵国の人間と見ればたとえそれが民間人であろうとも容赦なく蹂躙する。

まさしく恐怖を体現するような人物だったんですが、やり直しに入ってから自分の前に現れた皇帝ハディスは、そんなことをする人物には全く見えません。

もちろん、ときには敵対する人間を威圧するような態度っていうのは見え隠れしますが、少なくとも誰彼構わずとにかく手当たり次第にひどいことをして回るというような人物にはとても思えない。

主人公のジルには常にニコニコと笑顔で向き合ってくれるし、毒殺の危険がないようにと磨いた料理の腕でジルの胃袋をガッツリつかもうとしてくるし。

一体前の人生で見た彼は何だったんだろうと、主人公が困惑してしまうくらいに彼はとても優しくて、とても純粋に見えるんですよ。

しかし、実はそんな彼のありようこそ、やがて戦争によって多くの人を犠牲にしうるその可能性を危険性を内包したものだっていうのが次第にわかってきます。

ここはね、僕本当に個人的にすごいなと思っていて。
明らかに一致しないこの2つのキャラクター。
主人公に甘々で手料理を出してくる今の皇帝と、やがて戦争によってたくさんの人の命を無残に奪っていくことになる皇帝の姿。

この2つが、ちゃんと繋がるんです。
そしてこの2つの繋がりが、主人公ジルと皇帝ハディスの関係が前に進まない理由であり、それを乗り越えることが2人の関係を進める大きな力になる。

しかもそこにあるのが、なぜハディスが主人公の求婚を受け入れたのかっていう部分とも関わっていて、これが漫画版3巻でパチッとわかるようになっています。

そして、それが明らかになると同時に主人公が真実を知って踏み出していく。

それはある意味では彼女にとって1つ残酷なことでもあるんだけれども、それを知った上で乗り越えて……いや違いますね。

ぶん殴って前に進んで、ハディスとの関係を見せかけの義務的なものじゃなくてちゃんと気持ちで繋がるものにしていくっていうところ。

ここがね、個人的にすごく良かったと思っていて。
いやぁ、本当、胸がときめきますね。

やはりですね、その中心にいるのは、主人公ですよ。
もうね、主人公のジルちゃんがめっちゃ動く。

とにかく行動、行動の人物なんですよ。
元々魔力の量が多くて、そうであるがゆえに、戦場でも大きな戦果を残す人物でした。

生まれ変わって多少力が落ちたとはいえ、才能そのものは変わっていません。

その魔力を使った怪力というか馬鹿力というか、これで割と色々なことを解決します。

かつて戦場を駆け抜けた軍神令嬢のカリスマで窮地を乗り切るけれど、やはり恋愛面は疎い。

むしろ、戦場で駆け回り続けてきたからこそ、異性に心を許すっていうのがどういうことなのか。
どうやってハディスと向き合っていけばいいのかっていうのがわからない。

そのせいですれ違ってしまったり、相手の思惑を読み間違えてしまったり。
また、ハディス側にも隠していることがあるので、それを違う形で理解してしまうこともありまして、2人の関係はギクシャクしてしまいます。

しかし、気持ちが吹っ切れると、一気に場が動きますよ。
迷って悩んで、まごまごすることはあるんだけれども、一度こうと決めてしまえば一直線ですよ。

これがね、かっこいいし、かわいいです。
やはり僕はこういう、自らの手で未来を切り開いていこうとするタイプのヒロインが好きですね。

その好みにバチッとはまったヒロイン像っていうのは、ここにあるなっていう感じで、非常に好きです。

というわけで総評です。
「本物の愛は神様だってぶっ飛ばす」といったところでしょうか。

こちらの作品は『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました。』の原作者さん、そしてコミカライズ担当者さんと同じコンビで描かれた作品です。



やっぱり、面白い作品を作る人たちは、何回やっても面白いものを作るんだなと思いましたね。

世界観がファンタジーな内容ですが、ファンタジー要素もちゃんと物語の中に織り込んで進めてくれるので、ファンタジーな世界における恋愛ものっていう雰囲気をめちゃくちゃ感じさせてくれます。

漫画版3巻でひと区切りがつく形になっています。
もしかして前作みたいに3巻で終わりってことになるのかなとちょっと思っていました。

ですが、どうやらここで1部完結。
第2部も進めていくようなので楽しみですね。早く先が読みたいと思ってます。

皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思って、今回ご紹介させていただきました。
気になった方はぜひ手に取っていただければと思います。



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