劇場版まーごめドキュメンタリー「まーごめ180キロ」【配信ライブレポ】【ネタバレ有】
2022年1月30日(日)に、まーごめのドキュメンタリー映像を配信する「まーごめ180キロ」が開催された。このライブは大きく話題を呼び、配信アーカイブが延長に延長を重ね2月20日までになっており、私は友人に熱烈に勧められたため配信アーカイブを視聴した。
オープニングではMCの真空ジェシカが登場。序盤からふざけっぱなしの自己紹介で、勢い良くライブの始まりを実感させる。そして今回のメインであるママタルトが登場するが……大鶴肥満が明らかに小さい。この日、大鶴肥満はコロナ感染により休養中だった為、代役として"大鶴義丹のモノマネ芸人"で"大鶴肥満のモノマネアーティスト"であるスカートが大鶴小肥満を務めていた。ガクが「大鶴小肥満連れてきてない?」と尋ねると、檜原が「大鶴小肥満って言っちゃったんや! 一本くらい電話くれよなぁ!?」と絶叫し、川北が「すごい! 大鶴のサブスクだ!」とママタルトのうどん屋ネタを展開し始める3人。開幕から楽しい展開にファンは大喜びであった。
大鶴肥満はリモートで参加。小肥満を見た後に本物を見るとやはり画面越しにもデカさが伝わる。
VTRは5部構成で、100分にもわたる長編ドキュメンタリー。大鶴肥満のドキュメンタリーではなくあくまでも「まーごめ」のドキュメンタリーであって、これを観れば"まーごめ"の全てが分かるとのことだった。肥満曰く「たまたま"まーごめ"があるんじゃなくて、"まーごめ"しかなかったんだということを伝えたい」だそう。
まず最初にスタッフが肥満との待ち合わせ場所に向かうと、肥満はワタナベエンターテイメント本社前に立っていた。何をしているか聞くと「マルシアさんの出待ち」と答える肥満。「もう1人の僕(大鶴義丹)がお粗末をしたから」「マルシアさんにごめんねと伝えたい」と出待ちを続けているそう。
一旦ワタナベを離れ、肥満のルーツとなった場所へ向かうのだが、狭い道(電柱と壁の間)を横歩きして通ろうとし、縦横の幅があまり変わらないと指摘されて笑みを溢す肥満の画がシュールだった。
場所は代わり、京王線・明大前駅へ。ここが大鶴肥満、そして"まーごめ"のルーツとなった場所だという。まず母校である明治大学へ向かうのだが、そこへ向かう途中「光り輝く黄金のMの文字」が。肥満の大好きなマクドナルドである。「いるんだよね絶対。俺の歩いてきた軌跡にはさ、絶対あるんだよマクドナルドが結局」と語る肥満は、「気付けよお前ら、マクドナルドはもう言ってるんだぞ。通ったら買うって」と主張し続ける。とても説得力がある。
場面は明治大学に。その近くでマクドナルドを頬張る大鶴肥満。まず1年生で野球サークルに入った理由や、そこからお笑いサークルへ所属を変えた経緯を語る。同じサークルの先輩であるサツマカワRPGや、学生お笑い時代からの友人である、さすらいラビー、ひつじねいり、ストレッチーズや真空ジェシカのインタビューが挟まれるが、川北は肥満との関係を聞かれて「まあ一番簡単に言っちゃうと相方ですね」と答えるなどふざけまくり。「相方? 真空ジェシカの川北さんですよね?」と問われると「すみません、ママタルトの檜原だと思っちゃってました」と残念そうな表情。それに対して会場のガクは「(間違えちゃって)ドジだなあ」と言っていたが、ドジとかの問題ではない。
続いては肥満の恋愛事情。マッチングアプリPairsで出会った女性とデートするための服を買いに行くとのこと。車の中で語り始めた「ロシア版mixi Badooで裸の写真をばら撒かれた」エピソードが強すぎた。成すすべなく脱力するしかなかった肥満の顔がとても良かった。「許せねえ!」「絶対に! 捕まえてみせる!!」と憤怒する様子も。
意中の女性へのプレゼントとしてSHIROのハンドクリームを購入したという肥満は「ハンドクリームの味なんて分からない」と語る。「味ってなんですか?」とツッコまれると、「ハンドクリームの味って言わないの? なんて言うんだ?」「匂いなの? なんか匂いって表現良くなくない?」「風味? 風味も違うか」「そうか、香りか」などと早口で照れ隠しのように捲し立てる。会場のガクは「見てらんないよ〜」と嘆いていた。
意中の女性に告白した際、即答しなかった女性を見て、即答じゃないならいける! と思い念押しで「お願いします!」と頭を下げたらしい肥満。返事は一旦保留となったが、頭を下げたことによって頭頂部のハゲも見られてしまうことに。「僕も頭頂部がハゲていることは知らなかったんで」と語る肥満だが、檜原によるとこれは事実だそう。年明けにシェアハウスで観ていた配信で、初めて自分の頭頂部を確認して驚いていた肥満のエピソードを話していた。
続いては肥満の家庭事情へ。車内で幼い頃から続いた祖母との対立構造などを語るが、話している途中に咳き込んだり嗚咽をしたり"溺れ"てしまうことが頻発。原因不明で医者にも匙を投げられたそう。
更なるルーツを探るため、肥満の通っていた小学校へ。小学校の隣を歩いている際、小学生が肥満を見つけて騒ぎ出す。しかしどうやら肥満を知って騒いでいるわけではなく「見たことないデカい人間」に対して騒いでいる様子。いつか「大鶴肥満だ!」と騒がれる日が来てほしいものだ。
小学校の思い出を振り返り、きゅうりが苦手でいつも給食のきゅうりを残していたと話す肥満は、スタッフが「克服しましょう」ときゅうりを手渡すと、本当に嫌そうな顔をして拒み続ける。「あの頃の自分とは違う! 100キロも増えてる!」「ビッグマックだと思って」とようやく口に入れたかと思いきや、すぐに吐き出して逃走。そして道に倒れ込み死亡。「トラウマは克服できねえからトラウマなんだよ」のセリフが非常に刺さる。
きゅうりを食べさせられたことに「こんなの続けらんないよ」と怒りを露わにする肥満だったが、場面が変わるとファミリーマート前で両手にソフトクリームを持ち満面の笑みを浮かべている肥満の姿が。機嫌の直し方がチョロくて良い。
中学校の前で初恋を語り始めると、「夏休み初日に電話で告白したら夏休みなのに次の日には広まっていた」「電話で告白したからあだ名が卒業まで"テル"だった」という悲しきエピソードが飛び出す。振られたことを「Goodbye my love」と表現する肥満が良かった。
高校ではいじめられていたと話す肥満。自転車を池に沈められたりかなり悲惨ないじめだった様子で、肥満は「許せない」「M-1行っていつか本当に番組で全部名前と住所言ってやろうかなって思ってる」と恨みを露わにした。「(相手を)社会的に抹殺するために動いているところはある」「お笑いは復讐だよ」と話す様子には哀愁が漂っていた。
3年ぶりに実家へ帰ると、そこには両親の姿が。こんな形で会うのは想定外だったと肥満も驚いている様子。家へ上がると、今までになかった部屋が新しく出来ており、自分が家を出てからの実家の変化にも驚いていた。
肥満の体型の話になり、母親は「心配だよ」と一言。肥満が「30で死ぬつもりで生きてきたから」と話すと、父親は「早くコロッと死んじゃえばいいんだよね。苦しまないで」「長かろうが短かろうがね、自分の好きなように生きてください。みんなに迷惑かけないように死んでください」と冷たく言葉を吐いた。更に「もうちょっと才能がある子どもに育ててあげれば良かったのに」などと言い続ける父親には流石に肥満もピリッとしたようで、「おばあちゃんにそっくりでありがとう」「変わってなくてありがとう」と自分の嫌いだった祖母と重ねて皮肉をチクリ。あまりの気まずさに、スタッフは話を切り上げて退散することとなった。
その後、父親から肥満の元に謝罪メールが届くが「明弘(肥満の本名)が帰った後の静けさに、冷静さを取り戻した私はとてつもなく興奮していた自分に羞恥を覚え……」といった、真空ジェシカの2人が「えっちだ」「官能小説じゃん」と反応してしまうほど表現を重視したメールで、肥満は「そういうことじゃないんだよな」と不満を漏らしていた。
この実家でのシーンが非常にリアルで、家族だからこその微妙な探り合いであったり皮肉を言い合ったりしてしまうところが見ているこちらとしても非常にもどかしかった。そこに愛は確実に存在しているはずなのに、それが交差していない様子を見てしまったことにドキュメンタリーを実感させられた。
続いてシーンは公園へ。松井秀喜のユニフォームを着て登場する肥満は、おもむろにサックスを取り出し吹き鳴らす。何のシーンなのかはよく分からなかったが愉快である。
公園で肥満が"大鶴肥満“になった経緯を語る。サークルの先輩がしつこく「お前は大鶴義丹に似ている」と言ってきた為、「いいとも!」のオーディションに参加してみたら出演が決まり、かなりウケたとのこと。肥満は自分のことを「いいとも!が産んだ最後のスター」だと豪語した。
インタビューは真空ジェシカ。ガクと肥満はお互いに超乳(巨乳の更に上)好きで、お互いにおすすめの"アダビデ"を紹介し合っていたそう。アダルトビデオを独特に略した"アダビデ"がみんな気になった様子で、会場の川北が「ガクは言う……"アダビデ"」とM-1のワンシーンを模して会場は大笑いだった。
一通り大学時代のことを話すと、遊んでいた遊具から降りようとする肥満だったが、体がデカくて通れない。諦めて座り込んだ肥満がシュールでとても良かった。
その後、就職の話やお笑いを始めたきっかけ、檜原との出会いを話し始める。初めて会った日から檜原は肥満に猛アプローチ。「俺は大鶴肥満を王にしたいんや」とまで言い、王にしてくれるならとママタルトを結成したという。肥満は謎の滑り台のような遊具の上でサンミュージック所属の経緯を語り始めるが、オーディションを受けに行った際に「こんな清潔感のあるデブは見たことない」と言われ所属が決まった、というエピソードを話しながら突然滑り台を滑り降りてくるのが不意を突かれて面白かった。檜原のおかげで同じ大学お笑いの仲間が増えたことから、「檜原の功績は俺を王にしてくれるし王の仲間を増やしてくれたこと」と肥満は話していた。
話は変わり、肥満の恋愛へ。告白をして保留中の女性とのデートを終え、神妙な面持ちの肥満。突然ニカッと笑い「ダメでした」と一言。保留されていた返事を聞くと、「異性として見られない」と振られてしまったそう。久々に返ってきたLINEに「今朝、明弘さんの夢を見ました」と書かれていたことや、肥満自身が「今自分が嬉しいと思うことが全部取り上げられても、その子と付き合えるならそれが嬉しいと思う」と語っていたこともあり、それくらい好きだった女性と上手くいかないことを嘆いていると耳に虫が侵入。遂にダムは決壊し「もぉ〜〜なんでだ!」「アァァークッソがぁ〜許さねえ」と頭を抱え、その後顔を上げると何故か笑っていた。可哀想だ。肥満はいわゆる楽しい"青春"を送れなかった為、この恋愛は「青春を取り戻す」行為だと思っていた。それでも好きになれてよかったと語る肥満は美しかった。
その後、大泣きしながらマクドナルドを頬張る肥満。「美味すぎ。めっちゃうま……」とその味を噛み締めながら泣いている姿には、哀愁を通り越してもはや芸術性すら感じた。
再びコンビについて語り出す肥満は、「全ての巡り合わせで今ママタルトがいるって考えたら、全て運命で決まってたコンビなのかなって」「そうであればM-1(決勝)に行くっていうのもその運命に含まれてるんじゃないか」と熱い思いを吐露した。初めてのライブで檜原を信じてネタを披露したことなどを振り返り、「大鶴肥満にとって檜原は光」「檜原がいるから俺は突き進むことが出来る」「時々眩しくて見ることが出来ない時もあるけども、ずっと俺の前で輝き続けてほしい」と檜原への思いは止まらず、「ひわちゃんには感謝してもし尽くせない」「本当にありがとう。感謝してる」と真っ直ぐに思いを伝えた。
コンビ愛の話かと思いきや突然「全ては大鶴義丹さんがいたからここまで来れた」「大鶴義丹さんがマルシアさんと結婚してくれて不倫してくれて、『まーちゃんごめんね』って言ってくれて今がある」「一番は大鶴義丹さんに感謝しないといけない」とここでようやく"まーごめドキュメンタリー"らしくなってくる。
そして映像はエンディング曲へ。「まーごめんドリーム」というタイトルのラップ曲。歌詞と映像が結びついた、ドキュメンタリーを総括する感じは、かつての「笑ってはいけない24時」を思い起こさせた。この映像を最後まで観たからこそ胸に染み渡る、中でも「『もっと僕が細ければ』なんて言わないで もっと僕が太るから」という歌詞には胸が熱くなるのを感じるほどだった。
大鶴肥満はいわゆる楽しい"青春"というものに縁がなく、ずっと苦しく辛い学生生活を送っていたようだ。場所が変わってもその呪縛は解けることがなく、未だに縛られて復讐の心を抱いている。とても辛いことだが、だからこそ「大鶴肥満を王にしたい」と名乗りを上げる檜原に出会い、ママタルト・大鶴肥満が誕生したのだと思うと、それも肥満の人生にとって必要なものだったとさえ思う。
このドキュメンタリーを通して大鶴肥満の核の部分を観ることが出来て、グッと大鶴肥満の心に迫れたような気がする。彼の抱えるものをこうしてファンに分け与えたことによって、彼はもっと大きく前に進めるのではないだろうか。ママタルトのことをもっともっと好きになり、ずっと見守りたいとまで思わせられるドキュメンタリーだった。