この気持ちはどこからが恋なのだろう。【短編小説】
それは人類が生み出した英知の一つである事は例え地球上と言えど否定するものは乏しいだろう。
恋とは、正に焦がれ物であると同時に無くなって初めて大切さを知るモノでもある。
良く……良くもまぁここまで来たものだと感傷に浸る他ない。
まずはかの魅力を語るとしよう。
【個では魅力を発揮できない】
それはお箸のように
それは山と田畑のように
それは地球と月のように
それは餅と砂糖醤油のように。
それは二つが一体になることで真の効力を発揮するのだ。
布団と敷布団
この二つの名称を見比べて欲しい。
一枚では不完全であるところを見て欲しい。
なんと美しいことか
この世には完璧など無く、一つ一つは不完全なれど、合わさる事で天と地を大きく駆けの乗る程の神秘を生み出すのだ。
不完全故の完全性こそダビィンチすら求める事が叶わなかったこの世の理なのかもしれない。
私は飲酒をしていた。そしてシェアハウスに住んでいた。そこから導き出される結果とは
私は昨日飲んだ。飲酒を嗜んだのだ。肝臓に仕事を割り振りながら嗜んだ。
レモンがいくつも輪切りにされており、連続して縦に凍り付く様はまるで輪廻を表すようだったが、凍り付いた薄レモンは喉に絡みつくアルコールとの相性は抜群で、一つ。また一つ。ついでに一つと口に運ばれていく様はさながら生まれてから労働者になるまでのレールに乗っているような気分になる。
アルコールという外部から注入された麻薬によって非常に豊かな安らぎを私に与えてくれたのは言うまでもない。
一杯。……そう一杯で十分なのだ。
それだけで酔いしれてしまう私はもっとも外部からの変化に適応できる人間とも言えるかもしれない。
そしてあれよあれよと帰宅し、真っ直ぐに押し入れを開く。
やや湿気た様なお世辞にも素晴らしい寝床ではないのだが、私にとっては豪華客船のようなものだ。
ここはシェアハウス経験者なら分かるかもしれないが、押し入れとは限られた空間に存在する貴重で稀有な個室に位置するという事を切に伝えたい。
そして目が覚めるのだ。
ああ、寝ていたと気づくのは何時だって起きた時である。
体軋む様な循環する感情に身を委ねながら目覚めの悪さにも気づく。
布団が無いのだ。
ああ、今まであれがどれほど僕を支えてくれていたのか。失って気づく痛みこそこれが恋なのかもしれない。