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新子焼への期待が弾む、焼鳥たちの躍進。

「新子焼 鳥〼」2021年2月9日(火)

『日が長くなったね』
そんな会話が彼方此方ではびこり出す頃、この地の冬は頂きを迎える。
そういった日々が流れ去る。
流れ去る?
長い間、日々が流れ去ることに大いなる疑念を抱いていた。
それはもしかしたら、ひとつの自己欺瞞かもしれない。
“人生とは、虚構ではないか?”
ぬぐいようのない自己欺瞞のうえに、突きつけられる自己疑念…
日常を越境することを試みる。
それは日常をデザインすることだ。
過ぎ去る時を見通して時を区切り、そうして自分を夜に解き放つ。

20時も過ぎ、デザインがいかに窮屈で不自由なものであるかと思いながら、伽藍堂のすすきのを歩き回った。
36号線というすすきのの南北を分断する場で浮遊し、空を見上げると、紺青の夜空に白光のネオンが滲んでいた。
大きな白い暖簾を思わず潜る。
奥行きのあるカウンター席に位置を決め、早速ながら瓶ビールを頼んだ。
生ビールとは異なる懐古主義とともに、お通しの冷奴にビールが消えてゆく。
そこで新たな後悔と諦念を覚えた。
この店の主役は「新子焼」なのだ。
けれど22時の閉店を目前にして、その選択は哀しすぎる。
「鳥レバー」の白、「砂肝」、「鳥正肉」、さらに閉店時間の焦りに任せて「揚げ納豆」を、機敏な女性スタッフに告げた。
カウンター越しで調理する音が瓶ビールを軽々しく空にしようとすると、順を追って注文した品々が到来した。
この店の主義は、おそらく重厚なボリュームにある。
ニンニクとタレをまぶして白レバーを頬張り、焼鳥たちを歯に噛む。
いたたまれずに「大雪の蔵 絹雪」を求めた。
すっきりとした飲みごたえに、思わず「手羽先」と「うずら玉子」を追加した。
22時閉店。
日常をデザインするという制約から解き放ったというのに、閉店時間が切迫する。
『まもなく閉店ですが、ラストオーダーありますか?』
その最後通告に、「カベルネ・ソーヴィリオン」という赤ワインとともに、「せせり」と口走った。
注文したどれもが満足のゆくボリュームでありながら、その確たる旨味はきっと「新子焼」への情念を昂らせるばかりであった。
潔く会計を済ませて外に出た。
まだまだ寒さは勇ましい。
が、この真冬の頂きもまもなく過ぎれば、春へと下るだけであろう…

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