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【人生最期の食事を求めて】炎天下に襲いかかる塩分の過剰。

2023年8月27日(日)
キリンケラーヤマト大阪駅前第3ビル店

旅の醍醐味と後悔は、好奇心に応じるがままに大いに食し、大いに飲み過ぎてしまうことにある。
尿酸値を下げる薬を常用してからこの方、どこで自らの歯止めを乗り越えてアルコールの過剰摂取に身を委ねてしまうことは、この薬を処方してもらう時点で容易に想像できた。
通風のあの激痛がこの1錠の薬によって制圧されるとは。

公益法人痛風・尿酸財団によると、痛風は最も古くから知られた病気の一つとされ、エジプトで発掘されたミイラの関節の中から尿酸塩が発見されたという。
歴史上の人物では、アレクサンダ-大王、ドイツの宗教改革者マルティン・ルター、イタリアの芸術家ミケランジェロやレオナルド・ダ・ビンチ、詩人ダンテ、そして文豪ゲ-テという大物の名前が挙がる。
それを知っただけでも、私の心の中では言い知れぬ安堵、さらに言えば奇妙な優越感にさえ浸ってさえしまうのだが、それはひとえに自己欺瞞の証左に過ぎない。

前夜の関西の灼熱は、私をアルコールの海にいざなった。
その蒸し暑さは、東南アジアの亜熱帯を彷彿させた。

翌日、腹痛とともに目覚めた。
まるで夏祭りのような凄まじい怒涛と喧騒で私の下腹部は揺れ動き続けた。
午後からの仕事への不安がよぎるも、時が経つにつれて落ち着きを取り戻した。

ホテルを出ると深い青を帯びた空が広がり、佇立するビル群が空を突き破ろうと灼熱の太陽に挑むように見えた。
日曜日だというのに、午前中の大阪駅や梅田エリアは人の気配が少ないように思われたが、地下街に潜ると異様な灼熱を避ける人々が地下に集っている。

下腹部は何事もなかったように穏やかさを維持していた。
だとしても油断は禁物だった。
大阪とはいえば、やはりうどんだと決めこんで店を歩き回ったが、どこも混雑を極め入り損ねているうちに午後の仕事の時間が着実に近づいて来ていた。

心なしか仄暗いビルの地下の片隅に辿り着くと、サービスランチの看板が目に止まった。
日曜日だというのに珍しいと思いながら、時間が気になって思わず入った。
ビールの誘惑に思わず駆られたが、体調を取り戻したばかりだし大切な仕事も控え、しかも時間がない。
すぐに出来上がり、スムーズに食べられるものをメニューの中から模索した。
「ケチャップオムライス」(680円)を見出し決定するまでにさほど時間はかからなかった。

キリンケラーヤマト大阪駅前第3ビル店

他の客の様子を窺うと、確かに皆ビールを飲んでいる。
日曜日の灼熱ならば納得だ。

「お待たせいたしました。ケチャップオムライスでございます」
にこやかな男性スタッフがサラダとスープとともに運んできた。
純白の大きな皿の上に忽然と置かれたケチャップオムライスは、どこか無機質な印象を醸し出していた。
まずはサラダから食べ始めた。
水気のないキャベツとコーンが私の口内から水分を奪った。
塩分の強いスープは追い打ちをかけるようであった。
そこで、ケチャップオムライスにスープを投入した。
夥しいケチャップの塩分が獰猛な獣のように、水分を奪われ塩分に浸された口内に襲いかかる。
思わず水を飲み干し、男性スタッフに水を催促した。
その獰猛な塩加減は輪をかけて矢継ぎ早に襲いかかって来るのだ。
猛暑には塩分は必要不可欠だが、それにしても塩まみれのような印象は拭い去れない。
私は水の援軍を受け、ケチャップオムライスをどうにか完食にまで漕ぎ着けた。

すぐさま会計を済ませて再び灼熱の地上に向かうと、猛火の熱が頭上に近づいてくる。
過剰な塩分と水分に守られながら、私は寸分の緊張を抱いて目的の場所に歩くのだった……。

ケチャップオムライス

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