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アラ還おばちゃんコロナ禍のジョージアを行く ①出発決意編

アラ還冒険譚のはじまり

「ジョージア美食研究家あき」こと小手森亜紀です。
東京都文京区で日本唯一のジョージア料理専門の料理教室を主宰しています。(2022年4月から拠点を札幌に移しています)

シルクロードで餃子が食べたくて会社を辞めたお話しはこちら。

ジョージア料理と私の出会いはこちら。

コロナ禍の2021年。私はジョージアに2度、計4か月滞在しジョージア各地を旅してきました。
コロナ禍でもできる。アラ還でもできる。ひとり旅の経験なくてもできる。

そんなおばちゃんの冒険ストーリーです。

2020年春私は絶望のどん底にいた

おそらく世界中の人が同じ思いだったと思う。
日本では大型客船ダイアモンドプリンセス号での感染から端を発した新型コロナウイルスの流行は、当初は短期間で封じ込めに成功し、2、3か月で平常の生活が取り戻せると思っていた。

それが、局所的一時的な流行などではなく、とても短期間では終息しないだろうと世界中が気づき始めた頃、私はかねてから計画していたジョージア行きを中止にした。
まだ飛行機のフライトがキャンセルになる前だったため、キャンセル料は規定通りしっかり取られた。

宿泊予定のゲストハウスにもキャンセル料を請求された。
(規定通りですけどね)

ただでさえ経済的にも精神的にもダメージを受けていたのに
気晴らしのつもりで出かけた青森で足首を捻挫。
雪国特有の1段高くなっている在来線の列車の出入り口で、段差を忘れて降りようとして転落したのだ。

全治2か月。

直後に東京都に出された緊急事態宣言も相まって、気分は最悪。
毎晩家族で飲んだくれてばかりいた。

翌朝足首を捻挫するとも知らずに大鰐温泉でポーズを決める私

世界中の誰もが未知のウイルスに平和な生活を脅かされ、夢を砕かれ、命や健康を奪われ苦しんでいたとき、私は狭い狭い心で自分の不運だけを嘆いていた。

2020年夏 ウィズコロナにシフトしよう

コロナはすぐにはなくならない。根絶なんてできないかもしれない。できたとしても数年後かも。

周りを見渡すと、「絶対に家族以外の人とは会食しない」「絶対に県境をまたがない」と厳しいルールを守っている人たちがいる一方で、「感染に気をつけながら可能な範囲で楽しみたい」という声も聞こえてきた。

私は前から料理イベントでお世話になっている祖師谷大蔵のギャラリーカフェジョルジュのオーナーの森さんと、イベント再開の相談をスタートさせた。

定員をこれまでの半分に減らし、その代わり2日連続開催にした。
参加者全員にマスク、手指消毒を徹底していただき、お店は常時換気を行う。
食のイベントなので、マスクをお食事中はずさざるを得ないが、会話は控えていただくようお願いした。

今ではすっかりニュースタンダードとして定着したことばかりだが、当時はお客様に不自由を強いるお願いなんて、大英断だった。

ハチャプリはミニサイズで1人1個ずつ

ある時はみんなでハチャプリ(ジョージアのチーズのパン)を焼き

胡桃ペーストを使った3種類のお料理

ある時は胡桃ペーストを使った料理やハーブのワークショップも開いた。

月に1度のイベントと並行して、自宅で料理教室もスタートさせた。

実はそれまで自宅で料理教室を開こうと考えたことはなかった。
というよりも、我が家でできるわけがないと思い込んでいた。
自宅で料理教室を開くには、全員で一斉に調理ができる広いオープンキッチンが必要だと思っていたし、何よりも我が家には猫がいるので絶対に無理だと思っていた。

我が家の王子、ロシアンブルーのトロちゃん

しかし、コロナのおかげで少人数で開催するしかなく、広々としたキッチンは必要なくなった。
猫の問題も実は簡単に解決した。
料理教室のサイトに猫の写真を載せ、「猫が大丈夫な方だけご参加ください」と前もってお知らせしたら、むしろ「トロちゃんに会いたい」と猫目当ての方も少なくなかった。
なんだ。
こんなに猫好きが多いなら、もっと早く始めればよかった。
こんな感じでコロナと折り合いをつけながら、いつかコロナが終息してジョージアへ行ける日までぼちぼち頑張ろう!
やさぐれまくっていた春とは大違い。前向きに健気に日々を送っていた私に悪魔が囁いた。

2021年2月 コロナ禍だけどジョージアなら行けます

3枚前の写真で私の左側に座っているコウくんがTwitterでそう呟いたのだ。

それってどういうこと?
2021年の2月と言えば、日本はオリンピックを5か月後に控え、大きな感染者増を経験する前で、「今海外へ行くなんてとんでもない」という空気が社会全体に満ちていた。(今もですけどね)
2020年に世界の多くの都市がロックダウンし、飛行機の定期便は飛ばなくなり、海外在住者は帰国したくてもできない期間がかなり長く続いていた。
それなのに、「え?ジョージアに行ける?」
どうやらジョージアは2月1日から飛行機の定期便の運航を再開したらしい。
そう、ジョージアは国境を開いたのだ!

私はTwitterでジョージア移住を検討している人、直近でジョージアに渡った人をことごとくフォローし、情報をかき集め、裏を取り(在日ジョージア大使館に電話で確認)、ついに自分もジョージアに入国できることが決まったのだ。

現在(2021年6月以降2022年2月現在)のジョージアの入国はすごく簡単。
ワクチン接種証明。これだけでOK。
ワクチン未接種でも入国前72時間以内の陰性証明と入国3日目に自分でPCR検査を受ければOK。
6月より前でもワクチン接種証明で入国できたが日本ではワクチン接種がスタートしていなかったので、これからお伝えする入国時隔離が必須だった。

私が使った入国方法はRemotly From Georgiaという制度。
長期滞在を予定している人を対象に(主にノマドワーカーを想定していると思われる)一定の条件を満たせば入国可というもの。
所定のフォームに必要事項を入力し、提出書類を添付し、ジョージア政府に送信し、入国許可のメールを受け取る。
添付書類等についてはこの方のブログを参照した。

ま、しかし、現在はこの制度を使う必要はなし。ほぼフリーパスでジョージアに入国できるのだ。私の苦労はなんだったの?と思わなくもない。

渡航準備の中でいくつか私にとって高いハードルが待っていた。

隔離用ホテルの予約と送金
2021年5月末日までに入国する外国人は、ジョージア政府が指定している隔離用ホテルのリストから自分でホテルを予約しないといけない。
それまでブッキングドットコムでしか外国のホテルを予約した経験のない私はなんとも憂鬱だった。
政府から提示されたホテルのリストに載っているメールアドレスに、「私は5月18日からあなたのホテルで隔離されたいです。部屋は空いてますか?」という文章をGoogle翻訳で英文に翻訳して送った。
返事は割とすぐに来た。
部屋は空いているのですぐにお金を送金しろと言ってきた。「クレジットカードで支払いできないか?」と質問してもそれについては回答なし。ジョージアの銀行の口座番号だけを知らせてきた。
私は海外送金なんてしたことがない。
海外の会社との決済はPayPalかクレジットカードで済ませてきた。困った時のSNS。海外送金はどういう方法がいいのかとTwitterとFacebookで質問を投げかけると、経験者の皆様が詳しく教えてくれた(ほんと、みんな親切だよね)
いくつか方法はあるみたいだけど、日本の普通の都市銀行から送金するのは一番損な方法みたいだった。
私が選んだのはこちら。

お勧めされた理由は、①手数料が安い、②追跡が容易 ということだった。
初めての経験もやってみればなんてことなかった。
実は私はひとりで海外に行ったこともなかった。
個人旅行の経験はあるけどいつも娘が一緒だったので、ホテルや飛行機の予約も娘と相談しながらだった。相談しながらっていうのは常に責任を半分相手に預けているので、どこかお気楽なのだ。
全部自分で決めるんだね。
当たり前のことだけど、それまで考えてこなかったことだ。
考えてみたら、私は一人暮らしの経験も無い。
結婚するまで実家暮らしでその後はずっと自分の家族と一緒。
一家の主婦だから家庭を切り盛りしてるような気分だったけど、自分で何もかも決める経験ってこれまでの人生で実はなかったのかもしれない。

60を目前にようやく自立の時がやってきたのだ。

飛行機も予約したし、ホテルもOK。あとは出発を待つだけ…。と思って油断していたら、ターキッシュエアラインから「あなたの予約したフライトはキャンセルになりました」とメールが届く。
大汗をかきながら、当初の予定の2日前の便に変更し、ホテルにもメールで日程変更の連絡をした。
数日経って今度はホテルからメールが来た。
「我々のホテルはこのたび隔離を受け入れないことを決めた」
え?がーん。なんだって??
「こっちのホテルに変更してもいいなら送ってくれたお金はそのまま充当するし、別のホテルが良ければお金は返すから自分で別のホテルを予約して」とメールは続いていた。
出発も迫っていたし、私は指定された系列のホテルに変更する案を了承した。
せっかく街中のホテルに泊まれると思っていたのに、これで空港のすぐそばの辺鄙な場所のホテルで隔離されることになったのだ。
こうして文章で書くと簡単なことみたいだけど、英語がネイティブじゃない同士で英語で大事なやりとりをするというのは、不安でしょうがない。

でも、この不安でヒリヒリする感じを経験することがもしかしたら旅の醍醐味のひとつなのかもしれない。

私は初めてとなる一人での長時間フライト、一人でのトランジットを思ってまた気持ちがヒリヒリとした。
そもそも無事に出国できるのか、無事に入国できるのか、無事に空港からホテルにたどり着けるのか。

わくわくとヒリヒリが交互に押し寄せる日々が続いていた。

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