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アラ還おばちゃんコロナ禍のジョージアを行く ②怒涛の準備編

自己紹介

「ジョージア美食研究家あき」こと小手森亜紀です。
東京都文京区で日本唯一のジョージア料理専門の料理教室を主宰しています。(2022年4月から拠点を札幌に移しています)

シルクロードで餃子が食べたくて会社を辞めたお話しはこちら。

ジョージア料理と私の出会いはこちら。

コロナ禍の2021年。私はジョージアに2度、計4か月滞在しジョージア各地を旅してきました。
コロナ禍でもできる。アラ還でもできる。ひとり旅の経験なくてもできる。

そんなおばちゃんの冒険ストーリーです。
第1話はこちら

2021年4月 出発準備の情報源はTwitter

要るの要らないの?PCR検査

2021年当時を思い出してほしい。

もちろんコロナ禍まっさかり。

東京は緊急事態宣言下で飲食店でお酒を飲むこともできなかった。

ジョージアをはじめヨーロッパのいくつかの国は、ワクチンを2回接種した人は入国が可能になっていたけど、日本ではまだ一般の人のワクチン接種は始まってもいなかった。
私はもちろん未接種だったし93歳になる私の父のもとにようやく自治体から申込の用紙が届いた頃だった。

前回お話しした Remotly from Georgia 制度を使った入国の場合は、ワクチン未接種であっても、「入国時に指定のホテルで隔離され、隔離期間終了時にPCR検査陰性であればOK」というもので、どこをどう読んでも入国前(すなわち日本出国前)のPCR検査は要求されていない。

ジョージア政府のWEBサイト上の記述を文字通りに解釈すれば、日本でPCR検査を受けていく必要はない。
羽田空港内の海外渡航者用のPCR検査とその証明書は2021年5月当時、当日結果受取の場合4万円近くした(現在は同じクリニックでも費用は半減、時間も短縮されている)

何かと物入りな今、4万円は痛い。
もっと安い検査機関もあるとは聞いていたが、ちょっとの不備の可能性も回避したかったので、どうせ受けるなら空港でと考えていた。

私はTwitterでジョージアに渡航を考えている人、準備をしている人をかたっぱしからフォローして、彼らのtweetをチェックしていた。

PCR検査については「結論としては不要」なんだけど、Remotly from Georgia という制度が認知されていないがゆえ、ワクチン未接種、陰性証明も持っていないとなると成田や羽田の出国時にもめ、乗り継ぎでもめ、人によっては当のジョージアの入国時にももめる場合があることがわかってきた。
羽田のチェックインカウンターで「PCR検査の陰性結果持ってこないと乗せない」と言われ空港内の検査機関に駆け込むも搭乗時刻までに結果は出せないと断られ「詰んだ…」と絶望したところに航空会社とジョージアのイミグレの電話がつながってギリギリ搭乗OKになったという体験談も読んだ。

生まれて初めてひとりで出入国の手続きをするこのおばちゃんは、お金で解決できることは、できるだけお金で解決しておきたいと思い、羽田でのPCR検査を予約した。

飛行機のチケットを予約

ジョージア政府から入国を許可するメールが届くと同時に往復の飛行機を予約した。
スカイスキャナーで検索し、トリップドットコム経由でターキッシュエアラインの便を購入した。
海外旅行事情は日々変わる。
私は安いチケットを探すためによくスカイスキャナーを使っていたが、航空会社の公式HPで買った方が安いという話もある。
ある時Clubhouseで、ジョージア拠点に活動している人の話を聞いていたら「トリップドットコムは使いませんね。リスクが高いから」と言う。
これまでトリップドットコムで何かトラブルになったことはなかったので「どういうリスク?」と聞いてみた。

「コロナ禍でフライトそのものがキャンセルになったり変更になることが珍しくない。格安チケットだと現地で対応してもらいない場合があるけど公式HPから購入すればたいていチェックインカウンターでちゃんと対応してもらえる」というのが彼の意見。
確かに格安チケットにはそういうリスクがある。
私はトリップドットコムは使ったけれど常にターキッシュエアラインが直接対応してくれたので、急なフライトキャンセルでも何も困ることはなかった。
また、トリップドットコムも24時間日本語対応のヘルプデスクがあるので、決してサービスも悪くない。

日本からジョージアへ行くには残念ながら直行便は無い。

  1. イスタンブール乗り継ぎのターキッシュ

  2. ドーハ乗り継ぎのカタール

  3. ドバイ乗り継ぎのエミレーツ の3択が普通。

私はこの中ではターキッシュしか選んだことはないので比較はできない。どこも乗り継ぎの空港は快適だと言う噂なので、単純に値段や乗り継ぎ時間の長短で選べば良いと思う。
私がターキッシュを選んだのは、無料で預けられる荷物の重量が重かったから。実際帰国時も荷物については超適当で助かった。
安さでエミレーツを選ぶとドバイ→トビリシ間がLCC(フライドバイ)を使っていて重量制限が厳しかったり、ターキッシュでもやけに安いなと思うとイスタンブールで別の空港に移動して乗り継ぎの場合もあるので、選ぶ場合は要注意。

余談だけど、2019年にトビリシから中国のウルムチ経由(乗り継ぎではなくなぜか「経由」と書いてある)北京乗り継ぎで帰国した。
中国での留学経験のある娘が「アラブ人やトルコ人より言葉が通じる中国の方が安心感ある」と言うのでこのルートを選んだけど、正直お勧めしない(今はコロナで飛んでないでしょうが)。

まずトビリシで乗った時点で私たちふたり以外は乗客乗員全員中国人。機内はリトルチャイナ状態で、うるさいうるさい。中国の「お互いに他人に迷惑かけながら生きていこう精神」が存分に発揮されている。(でかい声で通話、メッセージの着信音の嵐、スマホやタブレットで大音量で動画を観ながら爆笑している等平和なものですが)

ウルムチに着くと全員降ろされ入国審査。乗り継ぎでさえないのに、なぜ?そしてまた同じ飛行機に戻されて北京まで飛ぶのです。
べつに入国審査は北京で良くないですか?なんで全員降ろして全員また乗せるの?
この入国審査でなぜか娘はひっかかり別室で尋問を受けた。
デジカメのデータを調べながら「これはどこの写真だ?」「ジョージアだ」「ジョージアってどこだ?」って尋問されたらしいんだけど私らが乗ってきた飛行機ジョージア発じゃん。なんでー??
飛行機の出発までに娘が尋問から戻らなかったらひとりで日本に帰るしかないのかとドキドキと待っていた私。薄情に聞こえるかもしれないけどウルムチの空港で決められた飛行機に乗らないという選択肢が乗客には無いのです。入国審査を通過できた乗客は搭乗ゲート前の狭いロビーに閉じ込められ最低限の給水とトイレ以外何も許されていない。どこへも行けないよう閉じ込められてるの。カフェも売店も無しよ。
イスタンブールやインチョンで快適な乗り継ぎしか経験したことない方々にはちょっと想像しづらい社会主義国のしかも厳戒地域(ウルムチだからね)の空港での珍体験。

宿泊先どうする?

今回の滞在は約2か月だったので、初めから普通のホテルに泊まるつもりはなかった。

9日間の隔離期間の間にどうするか決めようと思っていたのだけど、観光シーズンの夏が近づけばどんどん部屋はなくなるので、できるでけ早く予約した方が良いとTwitterで知り合った日本人のガイド氏のアドバイスを受けた。

はじめの数日は様子がわからなくて不安かと思い、日本人のご夫婦が経営するゲストハウスを5泊予約した。
ドミトリー(相部屋)もあるけれど、大人世代の私としては夜寝る時間はひとりになりたかったので個室を予約。
個室は1泊22ユーロだが、4連泊以上だと18ユーロなので、5泊で計90ユーロだった。

実際には簡単な英語ができれば全然困らないのであえて日本語が通じる宿を選ぶ必要はない。(あとになって言えることですけどね)

その後は帰国日までAirbnbの部屋を借りた。
Airbnbには1か月を超えると割引がある。私は44連泊だった。
予約方法はとても簡単。スマホにアプリをダウンロードし、目的地(トビリシ)と日程を入れればずらっと候補がリストアップされる。地図上に各部屋の金額が表示されるので、だいたいの場所もあらかじめわかる。

目星をつけた物件をクリックすると室内の写真、設備、ホスト(家主)からのメッセージ、利用者からのレビューを見ることができる。
できれば感覚が近い日本人のレビューを読みたいところだけど、日本人のレビューは見つからなかった。(やはり文化が異なるといいと思うポイントが違うのだよ)

私はトビリシのランドマーク、自由広場のすぐそばの物件を選んだ。44泊で日本円で74834円、前払いだ。1泊1700円程度。
ホテルよりもはるかに安い。
ただ注意点としては、キャンセルした場合戻ってくる金額がとても少ないということ。
はじめの30日分は1円も返ってこない契約だ。
また、ホストの質もいろいろなので、先方の事情でキャンセルされた場合に返金されなくて困っているという話も聞いたことがある。

やはりレビューの数が多くて点数が高い物件の方が安心なのだ。

過去にホテルに泊まる場合は、Booking.comを利用した。
当時のトビリシでは、1泊3000円ぐらい出せば、広さは十分とは言えないが清潔で快適なツインルームに宿泊できた。
もちろん高いホテルもあるのでラグジュアリーな滞在をご希望な方は人気のホテルをお勧めしたい。

スタンバホテルとルームスホテルは隣り合って建っていてどちらも外国人にもトビリシっ子にも人気のホテル。土日にはインスタにあげる写真を撮りにきた若いジョージア人の女の子でロビーやカフェが混み合う映えスポットでもある。

スタンバホテル。カフェも大人気。

もう1か所お勧めしたいのがトビリシでノマドの聖地と呼ばれるファブリカという施設だ。

縫製工場の建物をリノベ
フリーWi-Fiが使え、カフェで飲み物の注文もできる

1階のラウンジ(無料)と中庭の飲食店が有名だが、2階以上は宿泊施設。ドミトリーと個室がある。
世界中のノマドワーカーが集まる場所と言われていて日本人旅行者にも人気のスポット。ラーメン、餃子が食べられるお店もある。ちょっととんがった意識高い系(物価も高い系)の場所。

それぞれにはそれぞれの魅力があるけど、2022年5月時点でホテルやAirbnbの事情がどう変わっているのか私にはわからない。
ロシアとウクライナの戦争で両国からビザ無しで入国できるジョージアに多数逃げてきていて部屋不足になっているとも聞いた。

もしも近いうちに渡航を検討しているのなら現地在住の日本人をTwitterで探して直近の情報を確認しておいた方がいい。仮にAirbnbで部屋を確保しておいてももっと高値で借りてくれるロシア人が現れたら一方的にキャンセルされる可能性があることをお忘れなく。
(2022年5月時点でのあくまでも私個人の見解です)

ジョージアで私は何をしたいのか?

ひょんな一言から

ジョージア渡航が近づいたある日、「ジョージアのワインを飲みに行きましょう」と誘ってくださった方がいた。
かつて私が開催したジョージア料理のイベントにお客様として来てくださったF氏だ。当時はサラリーマンだったけれど「退職したらジョージア料理のレストランをやりたいんです」とおっしゃっていた。商社マン時代にロシアでジョージア料理に出会ったそうだ。
現在は老舗の食品輸入会社を経営されている。
私たちは阿佐ヶ谷のバー頻伽(びんが)で店主のサチさんお手製のハルチョーを頂きながらジョージアのアンバーワインを飲んだ。

帰りの中央線の車内でFさんは「ジョージアで何をするか決めてるの?」と聞いた。
「ありとあらゆるジョージア料理を片っ端から食べて来ようと思ってます」
「2か月も行くのにトビリシのレストランで毎日食べてちゃもったいないよ。いろんな地方に行ってその土地の料理を食べてきたらいい」

なるほど!と思いさっそくジョージアの郷土料理について調べ始めた。
しかし日本語で私が読めるような資料はほとんどなかった。
「ゲムリエリア(ジョージア語で「美味しい」という意味)」というレシピ本は持っていたが、特段地方ごとに分類されているものではなかった。
唯一頼りになりそうだったのは

ウィキペディアだけ。

必要なのはちょっとした勇気 


たちまち行き詰った私は在日ジョージア大使館宛てにメールを送った。
5月にRemotly from Georgia 制度を使ってジョージアに2か月間滞在すること、ジョージアでは各地の郷土料理を取材しようと思っていること、帰国後は日本でジョージアの食文化を広める一助になりたいと思っていることを伝えた。

ただ、郷土料理を調べるためにどこの土地に行ってどんなものを習ってくればよいのか資料が乏しいため、何か良い方法が無いか伺ったところ、大使館の秘書の方から大使本人が面会してくださるという連絡を頂いた。

大使は私の話をお聞きになり、すぐにキーパーソンをご紹介していただくことができた。

たとえばジョージアのガストロノミー協会の会長さんやワインと食に特化した旅行会社を営む方だ。

私は帰宅するとすぐにご紹介いただいた方々へ自分の思いとジョージアで体験したいことを綿々と綴ってメールで送り、数日後前向きなお返事をいただだいた。ジョージアに着いて具体的にいつどこに行くかはまだ全然決まっていなかったけれどこれでちょっとずつ前に進んでいけると思った。

思いがけず大使に会っていただいたことで、私は何か大きな勇気を得たような思いがした。

これまで大使とは偶然お会いしたことはあったけれど、アポイントを取って面会したのはこの時が初めてだった。
在日ジョージア大使館というのは開かれた大使館で、民族衣装のチョハを貸し出していたり、スケジュールが合えば大使が面会してくれるということはTwitterで知ってはいたけれど、なんだか気おくれしてこれまでお邪魔しようという気にはならなかった。「こんなおばちゃんが伺っても大使が喜ぶわけないし、お時間いただくだけご迷惑に違いない」と思っていた。
いよいよ渡航の日が迫り、どこかからエイヤっ!と自分の殻を破る勇気が湧いてきたようだった。
尻込みしてる場合じゃない。
そう、チャンスの女神は前髪しかないって言うじゃない?
断られたところで私には失うものは何もない。恥ずかしがって躊躇してるほど先が長くないんだから、なんでも当たって砕けろだ!

出発に向けて私はどんどん自分が強くなっていくのを感じていた。

パスポートの期限も確認した。
ドルも準備した。
荷物もだいたい詰めた。
お土産も買った。

出発までの日々、私は時間が許す限りジョージア料理の教室を開いて過ごした。


「帰ってきたら、もっともっとジョージア料理を紹介するからね」

さあ、出発だ!


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