反省:北海道は広かった。特急宗谷で行く!母娘弾丸稚内ウニツアー
明日、稚内へ
2022年7月某日、私は夫と娘と三人で札幌は円山公園のお鮨屋さんに居た。
北海道のウニは6月~8月が旬。短い夏の間にしか獲れたての生ウニを食べることはできない。
お鮨屋さんで極上ウニを頂きながら、「やっぱ産地に行ってほんとの獲れたて食べたいよね!」「だって期間限定だもんね!」
4月に札幌に転居してきた私と夫と違い、東京から遊びに来ている娘にとっては本当に今だけ、期間限定でしか生のウニは食べられない。
「いっそ稚内に行く?」なぜかいきなり満場一致で日本最北端、稚内までウニを食べに行くことになった。
その場で翌朝の時刻表を調べると朝の7時半に札幌駅を出る特急がある!
これは行くしかない!(と何故その時全員でそう思ったのか、実は覚えていない。99%酒の勢いだ)
札幌7時30分発 特急宗谷
翌朝、仕事の夫を残し私と娘は札幌駅から特急宗谷に飛び乗った。
7:30 札幌発 12:40 稚内着。
北海道を縦に大移動、5時間10分の旅だ。
昨夜興奮してあまり眠れなかったので、車内ではおにぎりを2個食べて眠ってしまった。
というか、眠る以外にすることがほとんどない。
札幌を出発して途中まではスマホもつながったのだが、北に進むにつれほとんどつながらなくなっていった。列車は北海道の大平原というよりも深い森の中を進んでいく。
車窓の景色は左右両側とも木々の濃い緑しか見えない。はじめのうちは山の中を走っているのかと思っていたのだが、それにしてはトンネルが少ない。たまに開けたところを通ると平らな牧草地は畑だ。
ああ、もしかしたら、原生林の中を走っているんだ。
どこまでも深い森の景色は続いた。
この深い森を開墾しながら先人たちが北へ北へと向かっていったのかと思うとちょっと胸が熱くなる。雪深い厳しい寒さの北の果てに何を求めて移り住んでいったんだろう。
途中、いくつかの駅を通り過ぎる。
和寒(わっさむ)、美深(びふか)、音威子府(おといねっぷ)、幌延(ほろのべ)…。東京出身の私には新鮮な地名が並ぶ。
音威子府村は、村のHPによると平成30年の人口は770人。北海道で一番小さな村で、産業は林業と農業だ。
旭川を過ぎてからほとんど乗降客がいなかったのに、この音威子府で何人も乗客が降りていった。
「北海道で一番小さなこの村に、何のご用で降りるんですかー?」
聞けなかったけど聞いてみたかった。
日本最北端の駅
鉄道好きなら皆さんご存知なんだと思う。稚内駅は日本最北端の駅。
ふとこのフェンスを外を見ると
鹿がのんびりと草を食べている。
札幌に引っ越してきてもうすぐ3か月。富良野やニセコにも遊びに行ったけど野生の動物に出会ったのはこれが初めてだった。
ここから宗谷岬に向かおうと当初は思っていたが、稚内から宗谷岬までバスで50分かかる。数十分滞在してまたすぐバスで引き返してこないと戻って来られない。5時間以上列車に乗ってようやくたどり着いたのに、また乗り物に乗って慌ただしく帰ってくるのもなんだかなーと思っていた(だから弾丸なんだけどね)
娘が「樺太食堂っていうお店でうに丼が食べたい」と言いだした。
駅から食堂までは4.4km。
宗谷岬行きのバスの時間までまだあったがさすがに往復9km移動してうに丼を食べるほどの時間の余裕は無い。
樺太食堂と宗谷岬を天秤にかけ、我々は樺太食堂を選んだ。
だって店名がエモいじゃん。
樺太食堂はノシャップ岬にあった。
準備不足勉強不足で申し訳ない。ノシャップ岬は天気が良ければ礼文島や利尻島も望める景勝地だと知った。
バスのルートを調べてみたらノシャップ行き、ノシャップ経由のバスは頻繁に出ているようだった。
10分ほど路線バスに乗って「ノシャップ」で降りた。車内アナウンスで「ノシャップ岬観光の方はこちらでお降りください」と知らせてくれる。
ノシャップでは一眼レフを首から下げた若い男性と見るからにストイックな雰囲気のソロ活女子と私たちが下車し、全員岬に向かって歩いていった。
快晴。日差しは強くじりじりと肌を焼くが、風は爽やか。いや、冷たいぐらいだ。これが7月、夏の道北の気候なのね。
ソロ活女子は足がとても速く、あっという間に我々の視界から消えていった。
樺太食堂
二段式生うに丼狙いだったけど残念ながら本日は提供なし。うにだけうに丼も品切れってことは、うにの入荷が少ないんだろうか。
このお店は小さな丼と大きな丼のメニューがあるのが嬉しい。店員さんが丼片手に説明してくれる。
私たちは小さいどんぶりの生うに丼を選んだ。通常はうにの他に生のほたてと漬けにしたホタテがのっている。プラス420円でこのホタテをいくらに変更できる。
1つはそのままホタテに、もう1つをいくらにチェンジしてオーダーした。
まずは乾杯。
こんなお天気の日はビールだろ。
でもあのストイックなソロ活女子は昼からビールなんて飲まないんだろうな。
それどころかどんぶりの白米なんて食べないに違いない。そういえばこの食堂に彼女の姿はなかった。
きっと持参したサラダチキンを水筒の白湯と一緒に海を見ながら食べてるんだろう(ひどい妄想癖)
まわりを見渡すと中高年の家族連れがほとんどだった。
皆さん大きなどんぶりの三色丼を頼んでペロリと食べている。
私も決して小食ではないけど、小さなどんぶりで十分な量だった。
正直に言うと、プラス420円出していくらにチェンジする必要はない。
いくらもとても美味しい。でも、美味しいくらはいろんなところで食べられる。
このホタテが、特に漬けが大変美味しくて、ホタテの漬けだけお代わりしたいほどだった、
稚内はホタテの産地でもある。
ぷっくり肉厚なホタテを漬けにすることで旨味がぎゅっと凝縮され、とろけるような甘みを持つのだ。お刺身ももちろん美味しいんだけど、このひと手間が美味しいホタテをさらに極上の味にしている。
肝心のウニも大変にクリーミーで美味。
もちろんミョウバン不使用で苦みはゼロ。
そのまま何もつけずに食べてもよし、少量のワサビ醤油をかけて白飯と一緒に口いっぱいに頬張るのもよし。
前夜、お鮨屋さんでウニを頂いたばかりだけど、飽きるなんてことは全然ない。
毎日食べてもいいぐらいだ。
樺太食堂のすぐ隣にも食堂があり、そちらは海鮮丼だけでなくホタテラーメンなど麺類もいろいろある。
ホタテラーメンも食べてみたいな。
ノシャップを歩く
トイレを借りるついでにお土産物屋さんを覗いた。
コロナ前は外国からの観光客をはじめ、観光バスで団体客もきっとたくさん来ていたんだろうと思う。
今はほとんどお客さんの姿はなく、生鮮食品の売り場には商品は何もなかった。
お菓子などの賞味期限の長い食品と冷凍のものだけが並んでいた。
海鮮丼のお店には車が何台も停まっていたし店内も賑わっていた。
この品揃えでは私も買い物する気になれずすぐに店をあとにした。
人が来ないから商品を置かないのはわかるけど、商品が無いからお客さんはさらに来ない。
目の前の食堂が賑わっているのに焦りはないのかなー。おせっかいですけどね。
ノシャップ岬は海も空も信じられないほど青く、穏やかで静かだった。
北の果ての海というと勝手に灰色の荒波の海を想像していた。
こんなに穏やかで澄んだ海とは。
そしてこの穏やかな海の先にはロシア、サハリン(南樺太)。
氷雪の門
ノシャップから再びバスに乗り、稚内駅の少し手前の停留所「宝来2丁目」で下車した。
小高い丘というか、鬱蒼と茂る森を抱えた山、そこが稚内公園。
私たちは舗装された急な坂道を歩き始めた。
ほどなくして下から登ってきた軽自動車が私たちのそばで停まり、車の中から男性が私たちに声をかけてきた。
「氷雪の門まで行くの?無理だよ。乗ってきな」
私は食い気味に「乗りまーす!」と答えて同乗させてもらった。
車が走り出すと、道はさらに傾斜を増した。
「この前もあのカーブのところで若いカップル拾ったんだよ。この先もっと坂がきついよ」
確かに軟弱な娘とメタボな私が歩いて登るのは無謀な山道だ。
「僕はヒグマのパトロールでこのあたりまわってるんですよ」
ヒグマ!
浅はかな私は人里に近い公園にもヒグマが出るとはちょっと考えていなかった。
公園というと人工的な開けた場所を想像しがちだが、ここは深い森の中だ。
森に道路を作ったに過ぎない。
ここ稚内だけでなく、北海道ではどんなに人里に近くても茂みや森には熊や鹿がいるもんだと思っていた方がいいんだろう。
実際、この直後に札幌市内の公園(真駒内)での熊の目撃情報が報じられた。
頂上に着くとヒグマパトロールの男性は「くだりは大丈夫でしょ。ヒグマに気をつけてねー」と言って去っていった。
氷雪の門について、恥ずかしながら私はほとんど何も知らなかった。
様々な土地を訪ねると、その土地の歴史にも触れることができる。
「氷雪の門」という言葉をうっすら覚えたいたのは、おそらく過去に映画のタイトルとして耳にしたことがあったからだと思う。
氷雪の門のすぐそばには映画のモデルとなった九人の乙女の碑もある。
お国のために疎開命令を無視して樺太に残って任務を続けた彼女たちの行動を非難するような映画のレビューも目にした。ソ連が攻めて来ているのに逃げずに残るなんて、しかも日本の降伏の後なのに、集団心理は恐ろしい。
…って、本当にそうなんだろうか?
自分たちの領土がなくなるかもしれない危機に瀕した時、どこの国の国民もただ逃げるんだろうか。
ウクライナを見てほしい。
確かに戦争は無益だけれど、決して対岸の火事ではない。
ここ稚内からはロシア(樺太)が肉眼で見えるのだ。
帰路
山道を下ると稚内駅すぐだ。
途中で北門神社のお祭りの縁日に出会った。
稚内駅に併設された道の駅で塩ソフトクリームを食べた。
お土産や駅弁も売っているしイートインコーナーもあり列車の待ち時間を快適に過ごせる。
セイコーマートも隣接している。
帰りは稚内発17:44。
うっかり者の私たちは往復でチケットを買っていなかった。
往復で買えば13000円ほどだったのに片道11800円を2回買った。
これから行く人は気をつけてね。
同じルートを帰るだけなのだが、札幌まで長かった。
いやー長い。
車内で私は娘とたびたび顔を見合して「長いねー」とため息をついた。
稚内を出発して1時間もするとあたりは真っ暗で何も見えない。
原生林の中をひた走るのだから車窓は漆黒の闇だ。
スマホの電波は無し。
行きの車内で眠っていたので眠くもならないので、何もすることがない。
駅を通過するときに受信したTwitterの投稿を読むのが精いっぱいだった。
あまりにも必死に読んだせいで途中から酔ってきた。
中国を列車で移動したことのある娘に「中国旅行もこんなもん?」と聞くと「いやぁ、中国の硬座の方がまだまし」と答える。嘘だ~。
往復、特急に乗っているだけで10時間超。
皆さんは日帰りで行くような場所じゃないって言うんだけど、泊まったからって時間が短くなるわけじゃないのよ。近くなるわけじゃないのよ。
そこまで行ったら利尻や礼文にもって言われても、これ以上長時間の移動はむーりーと思った次第。
結論
北海道は島じゃなくて大陸。(すみません、雑な感想で)
北海道の広さをからだで感じることができて、実は楽しかった。
帰宅して夫に感想を求められ、私と娘は「着かなーい!遠いー!」と叫んだ。
夫は「ワッカナーイ、ツカナーイ」と連呼していた。
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