【腸閉塞からの】備忘録#5 チューブ挿入からの数日
イレウスチューブを挿入した翌日、4月17日の夜中。
眠れてはなかったけれどもこんなところで地震に遭遇するとは思わずとても吃驚して、心配してチャットをくれた友人ふたりと一切連絡するつもりのなかった母にも入院してることを連絡してしまった。
4月18日。お腹は張ってるし左下部が痛かったりゴロゴロしてるけど便通はなく、レントゲンの結果も可もなく不可もなく。
4月19日。左鼻穴からのチューブの所為で左耳にも痛みがあり、喉が痛くて声が出しにくくなっていた。
造影剤を入れたレントゲン検査だと言われたのに、だまし討ちの形で、挿入しているイレウスチューブに再度ガイドワイヤを挿れて抜き差しを繰り返しされることになった。余りの痛みと酷さに生理的な涙が流れ続ける中、鼻がもげたのではないかと本気で思い、処置のあと、看護師に鼻はまだ付いてるか確認した程である。
挿入したチューブ自体は本来蠕動運動で閉塞部位まで進んでいくものらしいが、チューブ先端が横U字になって止まっているとのことで、鼻の中が血塗れになる位何度も何度も抜き差しをされたのに、午後からのレントゲンの結果としては、結局、チューブの先端を拡張箇所まで届かせることは出来てなかったらしい上に動きが悪い、とのことだった。
手術数日後より大建中湯(漢方薬)を飲み始めてから、昼夜問わず1~2時間毎にトイレに行くのもあって、夜明け前から廊下を歩くのはほぼ日課になっていて余程動けない時を除き5000歩は歩いていて下痢だが便通もあるのに、動いていないとはどういうことなのだろうか。
16日のイレウスチューブ挿入のあと予想以上に排液が少ないこともあり、クランプしたままで現状が悪化せず拡張が弱まればチューブを抜くことになるとのことだった。だが、お腹が張ったりまた吐いたりすれば一旦チューブを抜いてもまたチューブを再度挿入するのだと宣告された。
患者負担が大き過ぎるので長期間挿れ続けるものではないからなのかもしれないが、挿れたり出したりを繰り返す想定なこととそれに効果があるのだろうかと強い疑問とまだ同じことをされるという恐怖しかなかった。
手術前から手術してからも変わらず継続して激しく腹痛があり、そこに下痢も追加されている。既に手術をしてチューブまで挿入されたのにもはや何も良くなってないのではないか?と思うことが自然な程、良好なことがひとつとしてなかった。
4月20日。大建中湯を飲むと腸が動くのでお腹が痛み、歩くと今度はお腹が張って痛みがあった。
朝イチに副担当医Fが「レントゲンの結果が少しでも良くなってれば」と言いながら傷口を洗ってガーゼを取り替えてくれた。
今日のレントゲン結果が良くても悪くてもチューブは抜いて、もし拡張があれば来週再度チューブを挿れ直すことになるらしい話をされた。チューブの再挿入で現状が良くなる保証や確率があるという内容がないので、どう考えても、一昨日挿れ直したがっていた担当医Zの希望だとしか思えなかった。
その昼、知らない当直医がやって来て「今から下剤を入れます」と言われた。検査結果は当然聞いてもいないし、どうしてその薬剤を入れるのかも当然聞いていない。
(は?また説明なしですか?)
私が何も聞いてないと伝えると、拒否権はありますよと抜け抜けと言う当直医にも説明なしの担当医Zにも、一体患者を何だと思ってるんだろうか、バカにしてるんだろうか、昨今の医療にはインフォームドコンセントなんて存在しないんだろうか、と思わざるを得なかった。
当直医に下剤だと言われたが確認したらガストログラフィム(造影剤)で、そもそもこの翌日には検査もしなかったので今思い返してもこれは何の為の投薬だったのか全く不明である。便通がない状態ならいざ知らず、調べた限りでは閉塞予防にも対処にも下剤はさして意味があるという情報は見当たらなかったのだ。
造影剤を入れてから下痢が酷くトイレを往復してるところに、母から着信のあとにチャットがあった。病院に着いた、と。
え?!と思ったと同時に絶望した。
昨今どこの病院も同様かもしれないが、K病院において面会は申請制でまず担当医の面会許可が必要となっていて、数日置きに荷物を受け取り持って来てくれている友人Tにすら会ってもいない状況であった。
先日友人Kより母に入院についての説明をして貰ったのもありこの展開を全く予想をしてなかった訳ではなかったが、予想をしていたから母には連絡をしたくなかったし予想通り過ぎてうんざりしたのは言うまでもない。
面会出来る状態なのかどうかを確認せず、面会可能なのかを病院にも友人Kにも確認せず、友人Kが伝えた病室をメモもしてもおらず、面会に行くことを前もって連絡もせず、勝手に来て今着いたけど病室は何号室なのかどうやって病棟に行けばいいのかを、利用したこともない病院に緊急入院した患者に訊くという非常識っぷり。たぶん、本人は非常識だとは欠片も思ってはいない。
仕方なく看護師に面会可否を問うと土曜だから担当医の許可をすぐに取るのは難しい、とのことだった。だが家族ということで少しであればとの話になるも、感染予防の観点から咳をしている母とは(本当であれば面会不可)距離を取らねばならなかった。
通常でも気を遣う片耳が非常に遠い母との会話が、2mの距離がある状況で成立するのは不可能だった。出し辛い声を母に聴こえる様に大きく出したらなんで怒ってるのかと言われ、突然来るなんて困るとチャットしたのが気に障ったらしく「それだけ声が出せるなら元気そうで良かった」、と嫌味的に言われた。当然の如く面会はほぼ数秒で終わった。
母の心配してくれる気持ちを理解は出来たが、心配で堪らなかったとしてもその気持ちは配慮なき行動の免罪符にはならないし、元気な時には出来ていても体調が悪く不安で過ごしている最中においては母の気持ちを最優先にすることはどう引っ繰り返しても出来る筈がなかった。
(耳も悪いが目も悪い母には鼻からチューブを挿入されて点滴を数本ブラ下げてても元気そうに見えたのなら、よかったのかな。もしもの時これが最後になったとしても。)
手術の時にコンタクトレンズを外してから近視矯正のみの眼鏡では乱視矯正が出来ず、裸眼よりは多少見えるが、眼鏡を掛けていても視界ははっきりとせずほとんど見えていなかった。見えないことによるしんどさも日々あったけれど、見たくないものに関してははっきりと見なくて済んでそれはそれで良かったのかもしれない。
病衣が薄手なのもあってか耐え難い寒さとお腹の張りが強くあり、造影剤の影響なのか酷い下痢はここから半日以上も続いた4月21日。
この16日間延々と続いている苦痛は一体いつ終わるんだろう、一生のどれくらい分の下痢の回数でどのくらい分の腹痛なのだろう、と痛みと不安と恐怖の中、検査結果が悪いのは私の所為だと責められる様な状況で毎日打ちのめされて本気で本当に心が壊れそうだった。
この日回診に来てくれている担当ではないA先生に、「明日チューブ抜けるよ」と言われた。
早く抜きたくて仕方なかったので単純に嬉しいと思ったと同時に、イレウスチューブの挿入はもう二度と絶対にしたくない処置なので、予定されているであろう再挿入はしないと死ぬと言われても必ず一度は断ろう、と思っていた。
翌日22日がイレウスチューブの挿入から7日目で、排液量と排便・排ガス的に抜去のタイミングだったのは間違いなかった。
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