【腸閉塞からの】備忘録#6 チューブ抜去から悪化
入院17日目の4月22日夜明け前、ずっと続く腹痛で疲れ果てていて頭痛もしていた。
その日15時。「今日の検査結果は良くなっていないけど、チューブを抜いて様子を見る」と、担当医Zに言われた。
抜去は病室で突然だった。
鼻から腸まで2mは挿れているチューブなので処置室で抜くのだろうと思っていたら、そんな必要もないとのことで、慎重さなど皆無で乱雑だと感じる程強引にベッドに座った状態で抜かれることとなった。
イレウスチューブ自体はこの数日クランプしておりチューブとしての役割を果たしていなかったのに、このチューブを抜いたあとにここから状態が明らかに変わってゆくのはこの丁寧さのない粗雑な抜去がきっかけだったのではないか、と正直思えてならなかった。
抜去翌日の4月23日。
本日昼から再度の流動食開始となったが、前回吐いてしまったのでまた吐いたらどうしようと思ってしまい吐くのが怖くてほんの少ししか食せず。
一度あることは二度あるそんな不安に苛まれる中、「今日のレントゲン結果は良かった」と副担当医Fに聞いて、結果が良かったのが手術後初めてで、もう一度チューブ挿入するしないもなくなるかもしれないとも思い、思うことはいろいろあっても単純にとても嬉しいと思った。
夕方には入院してから初めてのシャワーを浴びることが出来て(どうやらかなり前からシャワーOKだったらしい)、傷口自体の痛みを感じることがほとんどなかったのもあり初めてきちんと自分の傷口を眺めることになった。久し振りのシャワーで疲れたのもあってか、その夜は横になりたくて吐き気がしてる様にも感じていた。
この日は流動食開始・検査結果良好・シャワーと良い兆候の並びではありつつも、ぐるぐるとする腹痛は継続してあり、前日から感じていた空腹の所為なのか、胃がおかしくてキューキューして収縮する様な痛みが強くあって、苦しくてしんどくて身体的な改善は欠片もなかった。
4月24日、悪化。
前日から半日続く胃痛がもうどうしようもなく酷くて、更に下痢と吐き気もあり全く動けず。呻き声を上げてしまう痛みを看護師にも医師にも訴えるが、現在出されている以外の投薬もなく検査もなく、誰ひとり私の訴えを真剣に受け取ってくれてない様に思えていた。
ひたすら胃の辺りが痛くて苦しくて苦しくて堪えられなくて。
吐き気はあるが吐けそうになくて辛くて、14時半頃、洗面所でよろよろしながら持っていたガーグルベースに嘔吐した。
ガーグルベースいっぱいに2回、真っ黄色の液体。
ガーグルベースいっぱいに2回、真っ黒の液体。
続けて吐いたが、どちらの色も合わせて500mlずつくらいの量はあった。
(ああ、また、吐いてしまった。それも大量に。再チューブの挿入不可避になってしまった。)
(イレウスチューブ挿入してる時の排液の種類で、黄色とか黒とかあった気がする・・・・。でもそんな色のものを吐くって・・・・。苦しかったからもう吐くしかなかったけど。)
吐いたらすっきりすると思ったが思った以上に全くすっきりはせず、この後、ガーグルベースがなく洗面所に吐いてしまった3回目の吐瀉物は緑色をしていた。
(緑って・・・・明らかにヤバい色だなぁ・・・・。)
同室のSさんが呼んでくれた看護師にガーグルベースに吐けず確認して貰えなかった吐瀉物について「緑だった。緑色って何?」と訊いて、看護師に何と返答されたのかはっきりと憶えてはいないが、ヤバさ確定の単語だったのは確かだった。
この時いた看護師は吐いたことを心配する素振りもなければ驚いてもいなかったので、この病気ではこの病棟では頻繁にあるありきたりの出来事なのかもしれないとも感じていた。
あとになって同じ病室だったSさんに会えて、この日この時の話を聞いた。あんなに痛がって訴えてるのに「起き上がって歩いたらどう?」「歩いた方がいいんじゃない?」と看護師たちが頓珍漢なことばかり言っていて対応があまりに酷過ぎて、同じ病室になったばかりの私を見てもない話したことのない方ですら聞くに堪えがたかったと言っていた、とのことだった。
共感してくれてて理解してくれるひとがいてくれて、あの日辛くて苦しんでいた自分が救われた気持ちになったのはいうまでもない。
前日夜からの痛みをどうにかして欲しくて投薬等の処置はないのかと散々訴え続け午後から3回嘔吐をしたが、この時点でもまだ、医療的な対応も看護的な対応も何ひとつなく、いわゆる「放置」といっても過言ではなかった。
この日の夜勤の看護師は、患者毎に紐づけされている担当看護師のNさんだった。
既に丸一日以上続いている胃痛と嘔吐に疲れ果ててぼんやりしていたら、検温で39℃あることが判明した。どうやらぼんやりではなく朦朧としつつあった様でそれから少ししてすぐに40℃オーバーとなり、急遽、4人部屋から1人部屋へ移動することになった。
この時はもうただただ寒くて、わざとそーゆー演技でもしてるみたいな笑えるくらいの大振りな震えが止まらなくて、Nさんに「寒い寒い寒い」とその言葉しか喋れないみたいに訴えることしか出来なかった。
発熱があると分かった時点でNさんが即対応してくれていて、早々に当直医がやって来て培養用の血液の為ふとももからの採血をし、点滴が増えるので追加インサイトの血管確保、元々の血圧が低くて下がり過ぎて危ない可能性があるからと二の腕にカフを装着してくれた。
(毎日の数値は低く出てないのに、Nさん、私の血圧がほんとは低いってなんで気付いてるの?)
(今日一日何もしてくれなかった看護師たちだったらこんなに素早い対応をしてくれただろうか?)
1人部屋に移動したあとで、また吐き気がして、ナースコールを押した。
ガーグルベースいっぱいに1回吐いてしまったところで、Nさんが飛んで来てくれて背中をさすってくれた。真っ黒い吐瀉物(液体)を袋に移してくれたあと、ガーグルベースにまた吐いた。そのあとも続けてガーグルベースいっぱいに2回、真っ黄色い吐瀉物(液体)だった。
どうやらそもそも午後に嘔吐していたことで脱水症状になっていると言われて、そういえば起き上がることも動くことも出来なくて水分も全く取れていないことにそこで気付いた。
見上げるといつの間にか抗生剤やら輸液やら複数のパックが点滴台にぶら下がっていて、高熱と寒さと震えがようやく治まったのは、看護師Nさんが「だいぶ下がったけどまだ熱があるからね」と心配そうに言っていた25日朝の検温の時だった。
意識がなかっただけなのかもしれないが少しだけ眠れたと思えたのは、Nさんと夜勤の看護師たちのやさしさと対応のお陰で、当たり前の病院らしい対応をして貰った夜だったと感じたのを憶えている。
インサイトが漏れて痛みがあると伝えても「(血管は)腫れてもないし漏れてる様子もない」と患者の申告を平気で無視する無視出来る看護師(たち)だったら、もしかしたら、この夜は明けていなかったのかもしれない。
何故なら、どうやら嘔吐からの感染症だった。そう誰からも結局言われてすらいないが、間違いなく。
#7へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?