俺の一人卒業旅行(出発~九州上陸まで)
みんなとは一年遅れた大学生活の終わり、俺は人生最後のモラトリアムを謳歌すべく、独り旅に出た
これまで1万キロを共に走った150ccのバイクを相棒に2月の下旬、若干の霧状の小雨が降る中、夜な夜な西に向かって走りだす
目指すは九州
お城巡りを嗜んでいた俺は九州に訪れていないお城を大量に残していたので、コレを期に九州の城をコンプリートしに行こうと思ってのことだった
最後のモラトリアムを謳歌する旅としては、かなり地味なコンセプトの旅ではあったが、他に思いつく案もなく、そんなに卒業旅行にお金をかけたいという欲求もなかったため、卒業旅行も在学時と同じように具体的な旅程を全く決めない適当バイク旅行をすることにした
なお、夜な夜な走りだしたのは、このころの自分は生活リズムが破綻しまくっていたからである
「……寒い」
時は深夜3時
真冬シーズンのアホみたいな時間にバイクで走っているものだから、当たり前である
なかなか寝付けなかったので、朝を待たずに出発してしまったのだが、素直に朝までじっとしておけば良かったと走りながら思う
しかし、一度走り出したら、止まるのもめんどくさいのである
そしてスピードも緩めない
特に信号の流れが良い時などは本当に止まりたくないのである
この流れを絶やしたくない…!!
信号に止められたとしても、所詮、数分の足止めであるし、止まる回数が多ければ体温の回復が間に合って、体の芯まで凍えてしまうことも防げるはずなのに、一度走りだすと永遠に走り続けてしまうのである
そのくせ、1時間おきくらいには体の冷えすぎに耐えられずに、目に付いたコンビニに寄って30分ほど休憩するのである
トータルで考えればトロトロと走り続けていた方が遠くに行けるのになと頭で考えても、それほど賢明な考えを行動に起こせる人間ならば、そもそも真冬の深夜にバイクで疾走などはしないのである
そんなこんなで、もうすぐ冷凍マグロのようにカチカチに固まりそうになっていたタイミングで、日差しが差してきた
西に向かっていたので、背中にじんわりとした温かみがやってきた
「ちょっとあったかい」
まだまだ寒かったが、どうしようもないほど寒かった時間は終了し、我慢でなんとかなるほどの状況になってきた
太陽の恵みは偉大だということを感じる瞬間であった
無心で走っていたからか、だいぶ遠いところまで来ていた
下道で京都から相生までこのクソ寒い中走って来たのかと思うと、よくわからないことをしてるなぁと我ながら呆れつつ、日差しが照ってきたからか、急に猛烈な眠気がやってきた
眠気をまといながら走るのは危ないということをこれまでのバイク人生で学んできたので、迷わずにネカフェに直行して寝た
これから1日が始まるというタイミングで寝る
それが俺の旅行のやり方だ
ちょっと仮眠をとるつもりで、起きたら昼過ぎであった
外に出るとすっかり暖かい
夜中に走らずに、昼間に走るべきであることを嫌というほど痛感させられるのであった
今日こそはしっかり日が沈んだらすぐ寝るぞ!という意気込みと共にバイクにまたがり、西を目指していく
国道2号線沿いに進んでいく
個人的にめちゃくちゃ好きな道だ
瀬戸内の風をずっと受けながらストレスフリーでずっと走り続けられるからである
時折目に入る船を見つけて、島に行きたいなぁとなる衝動を抑えて、ただただ、西へ走る
今回の本命は九州である
そう思って無心で走り続け、広島まで来た
夜通し走れば、九州まで上陸できるが、さすがに日も暮れてきたので、この日はしっかり休んだ
適当に宿(ネカフェ)を探す
それにしても広島のネカフェは弱い
出来る限り、滞在時間を短くして、さっさと出ようと思ったら、次の日の出発時間は4時になった
クソ夜中である
さて、ちょっと仮眠を取ったが、やはり、弱いネカフェだと眠りが浅くなり、あまり寝れずに出発時間が来た
仕方ないので、外に出る
寒い
寒すぎて走るやる気が全くでないので、あんまり空いていない腹で、牛丼屋に退避することにする
朝ごはんがばちクソやすい牛丼屋の朝ごはんで、日が照るまで時間を潰し、日が照ってから走りを再開することにした
田舎の朝の寒さは一段と堪える寒さだったが、日が照ってくると、海の水面にキラキラと輝く光がきれいで、瀬戸内ってめっちゃええとこやなぁーと感じたりもする
とにかく雰囲気がいい
さて、走りを再開する
ふと、ずっと2号線を走り続けてるのもつまらんな
出来るだけ、海岸沿いを走ろうということで、岩国あたりから、海岸線の方を回るルートを迂回することにした
周防大島とかに行く方のルートである
周防大島もいってみたかったが、なぜか今回は行かなかった
寒かったからだろう
もったいない
瀬戸内をずっと走っていると瀬戸内の町並みにはなんだか統一感があるよなぁと思ったりする
どの地域に言っても感じるのだが、地域ごとの街の作り方というのはどことなく似てくるものなのかなぁと走っていると感じることがある
たとえば、この川の感じというか山の感じの街並みを見ると、「あー瀬戸内感あるな~」となるのである
上手く言語化できないが、同じような感覚を持ってくれる人はいるのではないのかなと思う
瀬戸内は特にこんな感じの河の作りをしていて、他の地域ってこんな川に風情というか良さみを感じるっけ?となって非常に謎に印象深い象景を植え付けられている
個人的には全国の河はこんなスタイルになってくれるといいのになぁとぽもたったりする
また、本当になぜかわからないのだが、この辺をバイクで走っていて、柳井の白壁の町並みの風景だけが謎にずっと今も印象に残っていたりするのである
ここで何かあったとか何かを食べたとかそんなことはなく、ただ単純に通過しただけなのだが、妙に印象に残っているのである
なんでだろうね
ちなみに、こういう街並みが瀬戸内沿いに残っている地域がそこそこ多く、どこもよい雰囲気を漂わせている
こういう町並みの有名どころをあげると、例えば倉敷だろう
この街並みが自分の瀬戸内の雰囲気が好きな理由の一つである
そして、また、2号線に戻りひたすら走る
防府あたりで、そういえばもう俺山口に入ってたんだったなということに気づく
ちなみに防府はほうふと読む
こんなん読めないよなー
せっかく山口に来たし、時間もあるから山口市にタッチしておこうかなともおもったが、やはりやめて、普通に先に進むことにした
というのも、山口は山口市がしょぼすぎるのである
なんで山口県なんて名付けてもらえたんだぁ?ってくらいしょぼすぎるのである
せめてもの情けで道路沿いの新山口をタッチし、先ヘススム
そうこう(走行?)しているうちに下関につく
下関に来ると、いよいよ本州との別れ、九州への上陸が目前に迫ってきて、非常に胸が高鳴ってくる
下関から九州へ上陸するルートは何通りか存在するが、自分は迷いなく地下トンネルを選択した
海の下を走れるならぜってぇ海の下だろうということで迷いなく海底トンネルを選択する
安いしね
そして、トンネルに行くためにはかなり手前の分岐を間違わずに右折しないといけないのだが、この右折をすることで、いよいよ俺も九州へいけるか…という気分になる
胸がどんどんと高鳴っていく
そして、地下トンネルはかなり内陸部から料金所があり、そこからトンネルに入ることになる
ドキドキの瞬間である
長い……!!
トンネルはひたすらに長く、そして、ひたすらに湿気がすごかった
そして、渋滞と排気ガスも相まって、バイクで走るにはものすごく劣悪な環境だった
もう九州かと名残惜しい気持ちがあったが、心機一転、早く九州に上陸したい気持ちがどんどんと高鳴ってくる
そうこうしていると、ようやく長いトンネルを抜けた
うぉ~~~!!!九州に来たぞ!!!!
トンネルを抜けた瞬間の心地よさは半端なかった
九州自体は何度か来ているはずなのだが、2号線をひたすらに走ってきたことはなかったので、これほどまでに九州への上陸の達成感があるのかということに驚きを隠せなかった
長かった2号線が終わり、3号線にバトンタッチする瞬間がやってきた
特に夕焼けのタイミングであったので、シチュエーションとしても完璧であった
これからが旅の始まりであるはずではあったのだが、なんというか、一つの大仕事を終えた気分になった
さあ、始めよう俺の九州
#わたしの旅行記