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世界一危険な鳥「ヒクイドリ」は世界で最初に家畜化されていた!?

ヒクイドリは大型の飛べない鳥で、大きな鋭い爪を持つことから「世界で一番危険な鳥」としてギネスにも認定されています。この危険な鳥がかつて家畜化されていたかもしれないということが最近の研究でわかりました。しかも、それは、はるか昔の約1万8000年前のことだというのです。この研究結果が正しければ、ニワトリの家畜化よりも何千年も前に、ヒクイドリが家畜化されていたことになります。これは世界ではじめて家畜化された鳥類でもあります。世界一危険な鳥が世界で最初に家畜化された鳥とは非常に興味深いですね。

この記事は動画でも見ることができます。


世界一危険な鳥「ヒクイドリ」

ヒクイドリはヒクイドリ目ヒクイドリ科ヒクイドリ属に分類される鳥類です。彼らはインドネシア、ニューギニア、オーストラリア北東部の熱帯雨林に分布しています。かつてはもっと広範囲に生息していたと推測されていますが、熱帯雨林の減少と人間によって持ち込まれた動物の影響により個体数が減少しており、絶滅が危惧されています。これはヒナが生き残る確率は1%以下という研究結果も発表されているほどです。

現生する鳥類の中ではダチョウに次いで2番目に重く、最大で85kg、全長190cmにもなります。ですが平均的な全高は127~170cmで、メスの方が大きく、メスの体重は約58kg、オスの体重は29~34kg程度です。 

頭に骨質の茶褐色のトサカがありますが、これは藪の中で行動する際にヘルメットの役割を果たしたり、暑い熱帯雨林で体を冷やす役割があるなどと考えられています。顔と喉は青く、喉から垂れ下がる2本の赤色の肉垂を持っています。ヒクイドリという名前はこの肉垂が火を食べているかのように見えることから名づけられたとされています。 

食性は果実を中心とした雑食性で、森の中で落ちている果実を食べます。オスが卵を温め、単独でヒナを育てます。 

ヒクイドリは翼が小さく空を飛ぶことができませんが、その代わり、脚力が強く時速50km/h程度で走ることが出来ます。3本の指には大きく丈夫な刃物のような12cmにもなる爪があります。この強靭な脚力と刃物のような鉤爪で人や犬を、刺すなどして殺す能力もあることで知られています。死傷者も出ていることなどから、ギネス世界記録に「世界一危険な鳥」と掲載されています。 

卵の殻からヒナの成長段階を判断

こんな危険な鳥が本当に家畜化されていたのでしょうか。それはヒクイドリの卵の殻を調べることで明らかとなりました。この領域はこれまでまだ十分に研究されていませんでした。しかし今回、ペンシルベニア州立大学を中心とする国際研究チームは、卵が割れたときに、鳥類の胚がどれくらい成長していたかを判断できる方法を開発しました。 

彼らは胚の成長過程で卵の殻が変化することを発見しました。この事実は卵の中のヒナが成長過程で、卵の殻からカルシウムを摂取していたことがわかったため判明しました。 

研究者は504個ものダチョウの卵の殻のサンプルを分析し、ヒナの発育段階を高い確率で当てることに成功しています。 

ヒクイドリの卵はニューギニアのユクとカイオワで見つかった、18000年から6000年前の人間の居住地の跡のもので、1000個にも及ぶ破片から調べられました。その結果、ほとんどの卵の殻が胚の成長過程において最終段階だったのです。このこのことから、ここに住んでいた人たちが卵をバロットとして食べていたか、ヒナをふ化させて育てていたかのどちらかが推測されます。 

バロットとはほとんど発達しきった胚のヒヨコを茹でて食べる料理のことで、フィリピンやベトナムなどのアジア各地の屋台で食べることができます。滋養強壮に良いとされていますが、ヒナの形がある程度できあがっているため、日本人には苦手な人が多いと思われます。興味のある方は調べてみてください。 

この発見された卵の殻には焼いた痕跡が見つかりませんでした。また、当時の人がヒクイドリの巣を見つけ、意図的にふ化直前の卵だけを選んで採集することは困難だと思われます。これらのことからバロットとして食べられていたとする仮説は否定されます。 

こうして、ヒナを育てるために卵をふ化させていた可能性が浮上してきました。ニワトリの家畜化は、約3600年ほど前の東南アジア(タイ)で始まったとされています。このため、ニワトリよりも何千年も前に鳥類が家畜化されていたことになります。ニューギニアに住んでいた人たちは鳥の繁殖のために卵を管理し、鳥を大人になるまで育てていた最初の人類かもしれないのです。 

ヒクイドリの刷り込み

ここで小鳥ならまだしも、当時の人々が本当にヒクイドリのような大きく危険な鳥を飼いならすことができたのかという疑問がわいてきます。しかし、ヒクイドリは危険な鳥であるものの、簡単に刷り込みが可能で、大人サイズまで容易に育てることができるといいます。刷り込みは生まれて初めて見たものを母親と認識することを言います。ヒナがもし、ふ化して始めてみたのが人間なら、その人間をどこまでも追いかけます。また、ニューギニアの一部では現在もヒクイドリのヒヨコが売られていると言います。 

ニューギニアの農耕の開始

ニューギニア島はオーストラリア大陸の北部に浮かぶ島で、およそ5万年前にはすでに人類が存在していたことがわかっています。これは、アフリカ大陸を出た人類がユーラシア大陸に渡り、その後、ニューギニアに渡ってきたものと考えられています。そしてこのニューギニアの南部、標高1500m程の山地に湿地帯があり、この土地がニューギニア島最古の農耕地であったことがわかっています。発掘調査で、少なくとも7000年前、古ければ1万年前に耕作が行われてきたとされています。ここではタロイモやヤムイモなどを栽培していました。 

このことから、少なくとも農耕の開始より8000年も昔にニューギニアの人たちはヒクイドリを家畜化していたということになります。これまでイヌ以外は、人類が農耕を始めたのちに、残飯や作物に近づいた動物を家畜化したと考えられています。

家畜化の起源について詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。

ニューギニアでは実は農耕を1万8000年くらい前から行っていたのでしょうか。それとも本当にヒクイドリは農耕が始まる前から飼育されていたのでしょうか。まだまだ分からないことがたくさんあるようです。今後の研究に期待したいと思います。

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