【映画日記】『掟』『ラストマイル』『愛に乱暴』
2024年9月1日(日)
この日は日本共産党の前国会議員である大門実紀史さんが日野で講演をするということで楽しみにしていた。家族は皆で立川で映画を観るということだった。すると,支部の方から連絡があり,大門さんの講演は本人の急病により中止になったとのこと。急いで立川で観られる映画を調べて出かけることにした。
立川キノシネマ 『掟』
時間的に都合がいいということで選んだ作品。東京都知事選挙で得票数2位になった石丸伸二氏をモデルにした劇映画。実は,5月にも彼を取り上げたドキュメンタリー映画『つぶやき市長と議会のオキテ』があって,映画自体は観られなかったが,ポリタスTVでMCの宮崎園子さんが監督をゲストに議論する回を観ていた。その時は安芸高田市長としての石丸氏のことは何となくしか認知できていなかったが,都知事選で否応なしに彼のことを否定的な意味で知ることとなった。
『掟』の方は,事実に基づきながらも俳優を使った,人物名も地名も架空のものを使ったフィクションであるが,予告編を含めた宣伝の仕方は石丸批判的な雰囲気があったので楽しみに観に行ったが,実際はそうではなかった。おそらく上記のドキュメンタリー映画も一方的に石丸氏を断罪するようなものではなく,やはり石丸氏が改革したかった地方議会のあり方も大きな問題があることが分かる。とはいえ,石丸氏のネット戦術について『掟』の方ではほとんど描かず,公共事業の民間委託を中心とした新自由主義的な政策というのは描いているが,かなり石丸擁護的な作品だと私の目には映った。
2024年9月4日(水)
この日は私が勤めている会社の創立記念日ということでお休み。ちょうど午前中は息子の通う中学校の学校公開ということで観に行った。とても良い授業の進め方でとても参考になった。午後からは近場で映画。
府中TOHOシネマズ 『ラストマイル』
私のパートナーが薦めていた映画だったが,満島ひかりと岡田将生の出演ということで観ることにした。どうやらいくつかのテレビドラマを手掛けていたスタッフが,キャストと役どころもドラマのまま利用するというなかなか豪華な企画らしい。監督も脚本家も女性でこれだけ豪華な映画が作れるってのはすごいな,というのが第一印象。それはけっして女性の能力のことをいっているのではない。両者ともテレビドラマで評価を得て,劇場映画に進出ということかもしれないが,ともかく多額のかかる(CM収入でまかなえるテレビドラマとは違って,興行収入で回収しなければならない)映画が女性のクリエイターに任せられるということに新奇さを感じたということ。また,エンタメ映画でありながら,社会問題を扱っているというのも面白い。明らかにアマゾンを意識した,外資系の日本の物流大手を舞台にして,その流通センターを中心として,その荷物を運ぶ運送会社,そこで実際に荷物を運ぶドライバー。その企業間関係も含め,物流センターでの自動化される荷捌きと派遣・アルバイトの労働者たちとその管理体制,そうしたいかにも資本主義の最先端の問題をあぶりだしている。もちろん,グローバル企業の問題も。満島さんの演技はいつもながら魅力的だが,今回は岡田君の演技に注目していた。最近観た彼の演技はなんとなくしっくりきていなかった。彼がテレビドラマにどれだけ出ているかは知らないが,デビュー当時(『天然コケッコー』?)から映画に継続的に出演している。それは演技を評価されてなのか,単なる美貌か。本作を観てひとつ分かったのは,美貌を売りにするような役どころやコメディは向いていないということだ。やはり本作のような役どころは彼を魅力的に見せる。ただ,今後はいろんな役で彼の魅力を引き出すような作品を期待したい。
2024年9月5日(木)
吉祥寺アップリンク 『愛に乱暴』
なんと,一週間に三本の映画を観るという久し振りのスケジュール。この日は4日間与えられている会社の夏休み(有給)の最後の1日をとった。選んだ作品は江口のりこの主演作。吉田修一原作ということだが,これまで映画化されたものとはちょっと雰囲気が違って一組の夫婦+姑というこじんまりとしたスケール。江口の夫役を演じるのが小泉孝太郎。彼の演技をちゃんと見たことはなく,いつも満面の笑みを浮かべたCMくらいしか見ていなかったので,前髪が長くほとんど顔の全体像は分からず,CMでは比較的高い声を出しているが,本作ではぼそぼそと低い声で,まったくイメージが違かった。風吹ジュン演じる姑との仲が深い母息子関係という設定だが,なかなか面白い。風吹ジュンも相変わらず見た目が若いが,さすがにこの辺りの配役をさせられるようになったか。江口さんは以前は躊躇なく裸体を披露する稀な俳優だったが,本作でもさりげなく胸が写っている。ストーリー的にはなかなか評価が難しいが,江口のりこさんを堪能できるのと,雰囲気的には好ましい作品だった。