僕の音楽源体験はクイーンと共に
コロ ナ禍に入り、新しい音楽友達と出会い、話をする機会がめっきり減った昨今。対面での飲み会で相手の音楽嗜好を知るためのキッカケとして話題にしていた定番ネタがある。
「あなたの音楽のルーツにあるアーティストは誰?」
このテーマは、相手の音楽観を深掘ってくための良いとっかかりになるので、昔からよく使っていた。で、実際に話をして、自分と共通点があればそこから広げてくし、自分と共通点が無くてもそこから相手の音楽観を深ぼっていくことで色んなことが知ることができる。そう、どっちも楽しいのだ。
そんな時に僕が話す「音楽のルーツにあるアーティスト=クイーン」について、振り返っていこうと思う。
出会いのキッカケは『ツール・ド・フランス』
小学4年生の頃、たまたまテレビに映っていた『ツール・ド・フランス』の特別番組で流れていたのがクイーンの“Bicycle Race”だった(画面の右下に「Queen "Bicycle Race"」と表示されていた)。それまで、紅白歌合戦に出演しているような有名どころの日本人歌手の音楽しか聴いたことがなかった僕にとって、クイーンの音楽は衝撃以外の何ものでもなかった。
何重にも重ねられたコーラスとギターフレーズに、まるでミュージカルを観ているかのような感覚にとらわれる抑揚のある曲展開。僕はあっという間にその曲の虜に。
と言っても、テレビ番組のBGMで流れる程度なので、コーラスパートの前後の部分しか聴けなくて消化不良だった。「全部通して聴きたい!」そう思った僕は衝動と熱量だけで親から小遣いを押し切る形で前借りし、その小遣いとなけなしの貯金を手に外に出かけた。(ちなみにこの時持っていた情報は「QUEEN」と「Bicycle Race」のたった2つ…今思えば、調査不足だったなと思う笑)
はじめて洋楽に触れる
家から10分ほど自転車を走らせ、地元のローカルCDショップに到着。敷地面積四十平米もない店内には、主に演歌や歌謡曲、ニューミュージックなどのレコードやCD、カセットが置かれていて、洋楽はベスト盤を中心にほんの僅かしか置かれていなかった。
「クイーン、クイーン、クイーン……」店に着いた僕は、早く聴きたいというソワソワ感、CD置いてあるかなと言う不安感、フルで通して聴いたらどうなっちゃうんだろうというワクワク感、様々なベクトルの感情が入り混じって、とにかく探すのに夢中になっていた。
「クイーン、クイーン…あった!」で見つかったのは、『Queen II』と『Greatest Hits I』のCD2枚。速攻CDを手に取って、裏面の曲名リストの中から探した。「あ!あった!」と『Greatest Hits I』の曲目リストの中に“B i c y c l e R a c e”の文字を見つけた時のあの感覚は、サブスク全盛となった今では味わうことはできないものだ。こう言う時だけフィジカルメディアのリアルタイム世代でよかったなと思う(笑)。
"一目惚れ"ならぬ"一聴惚れ"る
CDを買って、しばらくはほぼ"Bicycle Race”しか聴いていなかったんだが、ヘビロテモードが落ち着いてくると、目当ての曲を存分に聴けた満足感から他の曲への興味も湧いてきた。とりあえず1曲めから聴き始め、その1曲めに耳も心も奪われてしまった。そう、皆さんご存知、“Bohemian Rhapsody”だ。
曲に関してはいろんなところで語られていると思うので、ここで詳しくは割愛するが、それまでの僕の音楽に関する固定観念を変えた事実だけ記しておく。この時、1985年の年末(ぐらいだったと思う)。
エンターテインメントの素晴らしさを教えてくれたライブ映像
これまでの音楽人生で今ふたつの後悔がある。
(1)フレディ生前のクイーンのライブを生で観れなかったこと。
(2)ライブエイドの放映をリアルタイムで観れなかったこと。
CDを買ったのが秋ぐらいで、ライブエイドがあったのが夏。ニアミスである。まあ、レコードを聴いてすぐに「ライブが観たい!」となるとも限らないので、結果論ではあるが「もし数ヶ月早く聴き始めていたら」なんてことは今でも考える。
なのでクイーンのライヴ原体験は生ではなくライブビデオ『ライブ・イン・リオ』だった。当時はブルーレイでもDVDでもなく“VHSテープ"。当時のビデオテープは結構高価なもので、親におねだりしまくって買ってもらった記憶がある。
そのビデオを観て、まるでライブ会場全体を掌握するようなフレディのパフォーマンスをブラウン管越しながらにでも体感し、幼心ながらに「これがエンターテインメントというものか」と感動した。
フレディの死、人生最初の喪失感
音楽を聴くことが僕の趣味になり、クイーン以外にもいろいろ洋楽を聴くようになった頃、僕らファンは大きな喪失感を味わうことになる。
1991年11月24日
フレディ・マーキュリー逝去
クイーンは日本でも知名度は高かったので、テレビのニュース番組にも取り上げられていて、たまたまそのニュースを観ていた親からあとでその話を聞いた。当時16歳だった僕には「死」というものに対する"実感"がなくて、ただただ頭の中真っ白状態…。
フレディの生前、最後にリリースされたアルバム『Innuendo』。全身全霊込めて歌うタイトル曲の"Innuendo"、まるで僕らに別れの言葉を告げているような"These Are The Days Of Our Lives"。そして「ショウはずっと続く」と唄う"The Show Must Go On"。全てが歩に落ちてしまった瞬間、そこから涙が止まらなくなった。
特に"These Are The Days Of Our Lives"のPVで、フレディが最後「I still love you...」と歌うシーンは、今見てもすぐ泣ける。
まさかのニューアルバムリリースに歓喜
フレディの死去から4年。彼が生前に残した録音源を元に、残ったメンバーによって制作された実質上のラストアルバム『Made In Heaven』が1995年11月6日にリリースされた。これは本当に嬉しかった。なんてったってフレディが歌う新曲が聴けるのだから。
僕はタイトル曲である"Made In Heaven"と、このアルバムのために書き下ろされたクイーンらしいコーラスワークが印象的な新曲"Let Me Live"が特に好きで、リリース後しばらくはこれらしか聴いてなかった(笑)。
ちなみに、収録曲のうち数曲はフレディソロ曲のリミックス版で"Made In Heaven"も実はセルフカバー曲である。僕はそのオリジナル音源がどうしても聴きたくて、その曲が収録されたフレディのソロアルバム『Mr. Bad Guy』を探しにCD屋を巡りまくってたのだが、廃盤になっていたためどうしても見つからなかった。
ソロアルバムの再発に歓喜と落胆
それから5年の間、中古CD屋に入るたびに「『Mr. Bad Guy』ないか『Mr. Bad Guy』ないか…」と探していたのだが、やはり一向に見つからず。そんなとき、なんとアルバムのリイシュー版の発売が発表されたのである。そのリイシュー版はフレディのソロ作品『Mr. Bad Guy』とオペラ歌手のモンテリーヌ・カバリエとの共作『Barcelona』とセットの再発だった。『Barcelona』の方は既に持っていたが、買わない選択肢はもちろんなかった。
ようやく手に入れたこのアルバムと"Made In Heaven"の音源だったが、思ったのと違う、ペラペラなアレンジにショックを受けたのは今でも良き思い出だ(笑)。
フレディ不在のクイーン再結成
その後、クイーンからは一旦離れて、他のアーティストの作品を聴きまくっていたのだが、クイーンの再結成の発表に歓喜する。元バッド・カンパニーのポール・ロジャースをヴォーカリストに迎えた「クイーン+ポール・ロジャース」名義としての再結成だ。ワールドツアーを周り、オリジナルアルバム『The Cosmos Rocks』もリリースされたのだが、正直僕にはハマらなかった。
理由は2つ。引退したジョン・ディーコンの不在と、ヴォーカルがポール・ロジャースであることの違和感。彼のブルージーなヴォーカルはどう考えてもクイーンとはマッチしないと僕は感じてしまっていて、第一印象がそれだったので、あとから取り戻すことはできなかった。多分自分と同じ理由で最初の再結成に乗れなかった人は多いんじゃないだろうか。
それだけクイーンのフロントマンは特別であり、特殊なものであるということ。ちなみに、僕がクイーンのヴォーカリストとして認めているのは、ジョージ・マイケルとこの後にも出てくるアダム・ランバートの2人だけだ。
"フレディ・マーキュリー"の後継者
クイーン+ポール・ロジャースの活動がひと段落し、引き続きブライアンとロジャーの2人で活動は続けていたが特に表立った活動はしておらず、2009年になり運命の出会いが生まれる。アメリカのオーディション番組『アメリカン・アイドル』に出演していた1人のシンガーとの出会いだ。その彼のヴォーカルにブライアンとロジャーが惚れ込んだのをキッカケにして、彼をクイーンのヴォーカリストとして引き入れた。そう、現在もクイーンのヴォーカルを務めているアダム・ランバートだ。
クイーン+アダム・ランバート名義での活動スタートに僕も胸が躍った。彼のハイトーンヴォイス、類稀なるヴォーカルテクニック、そして彼のセクシャリティはフレディと共通する部分があるかもしれないと、フレディが抱いていた苦悩を理解し得る彼なら信頼できると素直に感じたのだ。
生まれてはじめて生のクイーンを観る
2014年にサマーソニックでヘッドライナーを務めた彼らは、2016年に日本武道館3DAYSを開催。僕はここではじめて「クイーン」を生で観た。その時のインスタグラム投稿が残っているので下に貼っておく。
最後に
ここ日本におけるクイーン人気は今も昔も高い。リアルタイム世代の人でなくても、"I Was Born To Love You"がキムタク出演ドラマの主題歌に使われたり、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットがあったりで認知は大きく広まった。僕の知り合いの中には映画を40回観たなんて人もいて、昔からのクイーンファンとしても本当に嬉しい限りだ。
クイーン自体決して音楽シーンのど真ん中を行っているバンドではないが、僕はクイーンのファンであることに誇りを感じているし、これからも「僕の音楽ルーツはクイーンです」と言い続けると思う。
余談
これは余談だが『GREATEST HITS』とのファーストコンタクト時の印象はこんな感じだった。
その後、ヴォーカルが左下の髭フェイスガイと言うことを知り、仰天したことは言うまでもない。