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SAULTについて簡潔にまとめてく

ある友人に「初心者の僕とお友達各位に、SAULT(ソー)というアーティストは何がすごいのかを簡潔に教えてください」とお願いされたので、少し変なタイミングではあるが簡潔にソーについて書いていきたいと思う。

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僕が最初に聴いたのは『Untitled (Black Is)』だった。この作品を聴いた時の第一印象は「UKらしいブラック・ミュージック」と「UKからのBLM(Black Lives Matter)への強いオマージュ」だった。

昨今UKアンダーグラウンド・シーンで盛り上がっているソウル&ファンク、クラブ・ジャズ系の落ち着いたサウンドと、UKダンス・ミュージックのビートをベースとし、そこにスラム・ポエットやチャーチなチャントを乗せ、硬質なサウンド・プロダクションで仕上げているのが印象的だ。

そんな「UKらしいブラック・ミュージック」に、プロテスティックなリリックが乗っかることで、「BLMへの強いオマージュ」がダイレクトに且つ強烈に突き刺さってくる。

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このユニットについてわかっているのは、アルバム『Untitled(Black Is)』にも参加しているマイケル・キワヌーカのプロデュースをかつて務めた”インフロー”ことディーン・ジョサイアが中心となり、R&B SSWのクレオ・ソル、シカゴ出身のMCのメリサ・ヤング(かつてキッド・シスター名義でカニエ・ウェストのアルバムにも参加している)らが軸になっていると言うことぐらいだ。

とはいえ、ネット上にもほとんどユニットとしての情報は出てこないので、このユニットの音楽を理解する材料は、ほぼ音源のみと非常に匿名性が高い。しかし、その匿名性の高さがあるゆえに、ポリティックなサウンドと歌詞がダイレクトに胸に突き刺さってくるわけだ。

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ソーがリリースしたアルバムは全部で4枚(『5』、『7』、『Untitled (Black Is)』、『Untitled (Rise)』)で、いずれも2019年から2020年の間にリリースされている。アルバムごとに当てられるフォーカスの位置こそ微妙に異なるが、一貫しているのはBLMの視点である。


『5』(2019年5月5日リリース)、
『7』(2019年9月27日リリース)

4作のうち前半2作品は「現地イギリスに住む黒人」を主語にして描かれており、ある意味後半2作品よりもイギリスの"生"が感じられる。サウンド面で言うと、冒頭に書いた特徴に加え、ポスト・パンク的な硬質さがあり、よりイギリスの音楽っぽさが強い。


『Untitled (Black Is)』(2020年6月19日リリース)

本作はジョージ・フロイド事件に端を発したBLMに触発された作品で、アルバム全体を通して黒人に対する不当な暴力に対決していく強い決意を歌った内容となっている。本記事冒頭に書いたようなサウンドが特徴。


『Untitled (Rise)』(2020年9月18日リリース)

前作から一転し、本作は祝祭的な空気を持つ作品に仕上がっている。BLM運動をさらに咀嚼し、アフリカン・アメリカンがもたらした光と恩恵にフォーカスを当て、ファンク〜アフロ〜ブラジルのルーツ・ミュージックに乗せ、希望と祝福に満ち満ちた音を鳴らしている。(作品性的にはケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』に似ているかもしれない)


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