ヨハネ受難曲〜BCJケルン録音
凄い。
バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)による「ヨハネ受難曲」を、今ようやく全部通して聴いた。
新型コロナ感染拡大で、ロックダウンの迫るケルンの街で収録された歴史的名演となるであろう作品。
収録中のホールに警官が踏み込んでくる。
閉鎖するから収録やめてホールから出て行けと命じられる。
警官がBCJを知っていてくれたおかげで、ホール閉鎖を1時間延ばしてもらえる。
何とか全曲収録完了。
経緯を聞くだけでも、切羽詰まった状況は想像に余りある。
そんな中で、この見事な演奏はまさに神がかっている。
冒頭のHerrの絶唱は、この感染症の危険が迫る中、絞り出すような祈りを感じる。聴いているこちらも、胸だけでなく、喉も締め付けられるような心持ちになる。
その一方で、全曲通して聴くと、この難局にあって、取り乱すようなところもなく、変に激情的になることもなく、これだけ完成度の高い落ち着いた演奏を聴かせてくれるのは、さすがBCJである。
ジャケットの棘は、イエスの荊冠を描いたものなのだろうけど、不謹慎ながら、コロナウイルスの形に見えないこともない。
しかし、「コロナ」とは本来「冠」のこと。イエスの荊冠とウイルスの形状が一致してしまったのは偶然なのか。
ケルンでは、同じ曲を、無観客でネット配信もしていました。これも忘れがたい公演となりました。
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