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修士論文の記録〜その2

ヨーロッパ修士留学しているナナです🐥 執筆中の修士論文について記録したいと思います。

現在の進捗ですが、去年11月に研究計画書が承認されると同時に指導教官が決まりました。今年の5月に提出し6月に審査会があるため、着々と進めている状況です。

今回は、修士論文の「トピック決め」について書きたいと思います。私自身、前回書いた通り散々悩んだのですが、時間が経ってプロセスを整理できたので!自分の振り返りの目的もありますが、今後学士や修士の論文を書き始めるにあたって悩む方の参考になれば嬉しいです。
※ヨーロッパの大学院での文系プログラムの経験談です。

まず、トピックをいつまでに決めるべきか。学校によって期日は様々ですが、私の場合は公式な期日として3セメスター目(2年目の秋)に研究計画書を承認される必要がありました。そのため、その前の夏休み中に、ある程度トピックを固めたいと考え動きました。

ただし、それまで何もしていなかったわけではありません。入学直後の最もモチベーションが高く、関心のアンテナが立っている期間に、惹かれるトピックをメモっておくことを意識しました。シンプルにトピックを記録するでも良いですが、なるべくリサーチ・クエスチョン+それを考えた背景(読んでいた論文や、受けていた授業等)を記録することで、後々振り返った時に活用しやすいと思います。これをすることで、真剣にテーマを決める作業に入る時に、ゼロベースじゃない状態になります。

入学前に研究したいテーマが明確な方も、この作業はおすすめです。なぜなら、入学前から論文執筆時まで統一したテーマを貫いている人はかなり少数だからです(私調べですが)。大学で様々な学びを経て、興味関心や重要だと考える分野も変わることが当たり前だと思います。なので、新しく触れて面白いと思ったことや、疑問に思ったことは、全部メモしておくのがおすすめです。

次に、この走り書きのようなメモを元に、論文のトピックとして適切かどうかを検討します。本記事では参考に「気候変動に懐疑的な国民の割合が増える要因は何か?」というトピックを使いたいと思います。

1. 先行研究の確認

一つ目のステップは、同じ分野ですでに明らかになっている事実を把握することです。そのためには、分野内の論文を漁る作業が必須です。大学のサブスクで機能性の高い論文検索エンジンを使える場合もありますが、今回は一番汎用性の高いGoogle Scholarを使います。

数年以内に発刊された文献レビュー(literature review)がなければ、検索で出てきた5〜10本を流し読みして最新の研究動向を確認していきます。

参考トピックの場合の検索結果(""をつけることで、完全一致する結果を返してもらえます)

先行研究を読んで、どのような研究がなされているか・どの研究者がリードしているか・自分のコンセプトの理解は正しいか、などを確認し、アップデートしていく必要があります。一つの論文を読んで、気になった点をさらに深掘りする、ということをやっていきます。上記の画像の例を使えば、「skepticism」と「denialism」の違いは何か?自分が関心を持っているのはどちらか?などを明確にするうちに、分野の最新傾向が分かってきます。

2. リサーチ・クエスチョンを仮定

二つ目のステップは、興味分野のギャップを特定し、リサーチ・クエスチョンを仮定することです。先行研究を読むと、(a)各方面から研究された論文が多数あり、ある程度結果が確実になっている部分、(b)大枠は研究されているが、調査母数や手法、問いを少し変えると結果が異なる可能性がある(まだ隙が残っている)部分、そして、(c)まだ全く手付かずの部分、などが分かってきます。

私の例トピックの「気候変動に懐疑的な国民の割合が増える要因は何か?」の場合、(a)は「国民のSNS普及率が影響する」こと、(b)は「条件によってはSNS使用時間が影響する場合もある」こと、そして(c)は「SNSプラットフォームごとの影響」かもしれません。(※調べたわけではないので、あくまで考え方の参考です!)

この中で自身の研究対象にしたいのは、(b)の点です。(a)は貢献できる余地が少ないため、研究する意義がありません。(c)は先行研究が少なく難易度が上がることに加え、誰も研究していない=研究する意義が薄い可能性が高いです。そのため、分かっていることもあるが、まだ貢献できる余地のある(b)がベストだと思います。例トピックの場合、SNS使用時間が影響するようになる条件は何か?(性別、年齢、地域…)を検討することができそうです。

(b)の部分でのギャップを特定できたら、リサーチ・クエスチョンに変換しましょう。リサーチ・クエスチョンの立て方は良記事がたくさんあるので、割愛します。

3. 実現可能性を検討

リサーチ・クエスチョンが立てられたら、研究のために必要なリソースが予測できるようになります。トピック決めの段階で重要なのは、実現可能性を検討することです。

問いによっては、費用や時間のかかる手法を用いる必要があるかもしれません。例トピックの場合、SNS使用時間のデータを自ら集めて分析するのであれば、多くのリソースです。研究補助費が得られるか?卒業までのタイムライン的に可能か?必要なノウハウを持つ研究室や指導教官はあるか?など、実施するために必要なリソースを洗い出して、用意できるかを考えます。

実現可能性が薄い場合は、実現できないトピックを考え続けても意味がないので、諦めてステップ1やステップ2を繰り返します。ここの潔さがないと、沼って病むので要注意(※経験談)。

リソース内でできそうだ!と判断した場合は、A41ページくらいの簡潔な研究計画書にして、関連分野の教授や関係性のある教授にフィードバックを依頼するのが良いと思います。私も、今振り返れば恥ずかしいような初歩的な内容も、何度もフィードバックをお願いしてブラッシュアップしました。教授の方々も暇ではありませんが、丁寧にお願いすれば親身になってアドバイスをくれる方がほとんどなので、お願いしてみることをお勧めします。

最後に、トピックを決めるにあたって考えておいた方がいいことをいくつかお伝えします。これらが全てではありませんが、社会人経験後に修士課程へ進んだ私が意識していたこと3選です。

  • 忙しさの予定→他にやりたいこと(インターンやバイト、他分野の授業など)と両立できるか?両立が難しい場合、よりライトなトピックにするために工夫できる点は何か?

  • 自身のキャリアとの整合性→これまでやってきたこと・今後やりたいこととを線で結べるようなトピックか?将来やりたい仕事の志望動機を考えた時に、綺麗に当てはまるか?(ピッタリ当てはまることが是というわけではありませんが、後から後悔のないように検討しておくことをお勧めします!)

  • 修士論文の目標との整合性→私の場合は、手法を学ぶことが一番の目標でした。が、博士課程に進む方はテーマや指導教官とのマッチ度だったり、特定のコミュニティや団体と接触できることなどを重視すべき場合もあります。学術論文を書くという枠組みを、なるべく広い視野で活用できると良いですよね!

以上がトピック決め編でした!個人的にアドバイスしてもらえたら嬉しかったな〜と思う内容を書いてみましたが、参考になればスキを押してくれたら嬉しいです☺️!
次回は、指導教官との付き合い方や活用方法について書きたいと思います。

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