若者のチャレンジを投資と考える
鳥取でNPO法人bankupをやっている中川げんようです。今回考えている財団の軸は”若者のチャレンジ”にしています。僕も22歳(大学院1年)で活動を始めて、20数年。若者とは言えない年齢になったのですが、歩いてきた道や自分の周りを起こった事実から”若者のチャレンジ”は大切だと実感しています。今日は、そんな若者のチャレンジを、社会への投資として考えてみることについて書いてみます。
1.自分の通ってきた道を若者のチャレンジと捉えた場合を振り返ってみる。
僕が今日まで続けられているのは、活動初期の頃からいろんな人に助けてもらったことが大きいと思っています。
大学生が地域に足を運び続けることを仕組みで担保する”学生人材バンク”構想は大学4年の3月に地域の人の前でプレゼンして、「面白そうだね」と言ってもらえて調子にのって始めてしまった企画です。
22歳、静岡県出身、大学院1年生
という社会的には何も影響力も実績も無い若者のアイデアを面白いと言っていただいた事、当初はアルバイト情報なども含めて大学生に情報発信して、そこで興味をもった学生たちを束ねたり送り続けたりする仕組みでした。
「アルバイト情報は時給が良いものがあった方が良いね」と情報をくれた方々もおられましたし、「ちゃんと飯食ってるか」とご飯に誘ってくれた方も多かったと思います。そうやって生存確認されながら、農村ボランティア派遣の仕事が来たり、イベントのボランティアコーディネーターの仕事が来たりで死なずに続けていられます。
結果として、鳥取県内においては年間100回以上、県内50地域に大学生ボランティアが農村のサポートをする仕組みができていますし。三朝町の学生プロジェクトは卒業生が役場で働いたり(Iターン)、観光大使を担っていたりと地域の担い手になりつつあります。卒業生は延べ40名以上がIターンしています。毎年確実にボランティア参加者が生まれているだけでなく、卒業生たちの動きまで含めると、大きなチカラになりつつあります。
弊社としても、対若者系のワークショップやプロジェクトの伴走支援など各種ノウハウなどが蓄積したこともあり、自治体と一緒に事業を実施できるようになりました。
2.歩留まりが悪いと言われ続けた10年
鳥取県には3大学4拠点(鳥取市×2、倉吉市×1、米子市(鳥大医学部))となっています。倉吉市・米子市は医学系で鳥取市には鳥取大学(地域学・農学・工学)、鳥取環境大学(環境・経営)です。学生数の割合でみると多くは鳥取市の2大学に通っています。
そこで、鳥取大学・鳥取環境大学の鳥取市にある2キャンパスを軸に考えてみます。両方の大学とも、実は鳥取県出身者は2割前後です。鳥取県人口が全国最小なので、仕方ない部分もありますが学部の幅なども含めて地方国立大学の中でも地元率の低い大学です(多様な地域から学生が集まっているので、学生にとっては良いことも多いです)。
僕も静岡県出身で砂漠緑化に興味をもって鳥取に来ました。最近だとキノコの研究がやりたくて来ている学生にも会います。外から目指したい大学であることは良いことでもあります。
うちの学生も多くは鳥取県外から来ています。県外から鳥取に来て4年間を鳥取で過ごし、卒業後は都市部や地元に就職する学生がほとんどです。大学時代に農村に飛び込み現場を踏んでいるので、就活でも自分の行きたい会社に入っていきました。
そうやって、鳥取で経験して羽ばたいていく学生が続くので、「学生に時間を使っても出て行ってしまう」と言われていました。歩留まりが悪いわけですね。若者の人生もあるので、歩留まりという発想ではないと思いますが、そう見えてしまう。
僕からすれば、興味関心を自己選択するのが大事だと思っているので、「○○な仕事がしたい」「○○に住みたい」という想いがあって、結果として「鳥取に暮らしたい」っていう学生があるなら、一緒に探すぜという感じなんですね。外に出ることも尊重したいのです。
3.先輩が残ると選択肢として考えやすくなる
20年実践してきて、卒業生も残る選択肢が出てくると現役生にも鳥取を卒業後の選択肢に入れるメンバーが出てきます。この状態になるまでは少し時間がかかりますが、一旦、この状態になると毎年Iターンを考える子が出てきます。うちも毎年2-3名(一学年が20-30名なので1割)がIターンで残っています(出身者も入れるとあと1-2名増えます)。
身近に事例がいることで、具体的にイメージできるのが強いです。価値観が多様になってきているので、地方で暮らすことの面白さ、自分たちの動きが街への影響力が大きいことなど、ピンと来た子が残っている感じがします。
サークル的に大学生が街に関われるのは、1年生から3年生の前期くらいの約二年半です。それ以降は卒論や就活があるので、なかなか地域に出られなくなります。この2年半で地域の可能性を体感してもらうことが、数年後の可能性を生むことになります。
4.若者の成長を社会投資と考える
地域に残る率が低いのは事実ですが、僕は経験値を積んだ人材が日本に拡散していくことが投資とも考えています。
先日、大学院生と話している時に「農村で学生プロジェクトを体感していたことで卒論への姿勢が違う」という話をしていました。特にリーダー経験者は更に目線が高いとのこと。
大学生の地域プロジェクトは、メンバーも多いので最近は、幹部学年(2年生)と月次面談をしながら、基本的には自分たちで決めてもらう運営方法をとっています。その幹部数人をリーダーと呼んでいます。
リーダーは必然的に、チーム運営をすることで自分たちのやりたい事を実施していきます。1年生時代に何気なく経験してきたことをベースに、先輩にサポートしてもらいながら、決めたり進めたりします。
結果として、リーダーは地域とコミュニケーション機会も増えますし、少し俯瞰したプロジェクト運営をすることになるので、農村への解像度があがります。結果、卒論で農村を扱う場合に、学びの目線を高くし、地域に時間を割いて調査してもらえることの貴重さを認識して動きます。それが大学院生の言葉に繋がっているんだと。
そんな目線を持った人材が各地に分散していく。自分たちがやってみたい事を小さくても実現してきたメンバーが、自分の暮らす地域へ目線を向けたときに動きが生まれるのではないかと考えています。
中心メンバーになることは少なくとも、地域で踏ん張っているキーマンの右腕や賛同者にはなれます。10年後の各地のキーマンを鳥取が生んでいると思えば、大きな投資ではないかと(各地に感謝されるかも・・・w)
同じように高校生や中学生でも、経験値を増やしていくことは将来の投資になると思うのです。
5.失敗も成長を受け止めながら進める
たくさん失敗します。事故やケガにつながることはさすがに止めますが、大学生が入れ替わり経験することが大事なので、地域の理解を得ながらも、小さな失敗が成長につながり、それが数年後に帰ってくると理解してもらいながら暖かく見守ってもらっています。
すべての失敗をマニュアル化して防げるようにしては、成長の余白も少なくなると思っていて、クオリティは上がったり下がったりするけど、そこはアリだと捉えています。
その目線も若者チャレンジを促進するには大事だし、僕らは財団を通しても、チャレンジする若者を良い意味で守れる壁になりたいなとも思っています。
今回は主に大学生のチャレンジを具体例で話しましたが、本質は地域の若者(中学生から若手社会人くらいまで)全般に言えることだと思っています。今日はここまで
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