地方におけるインターンシップの設計について
鳥取県で長期実践型のインターンシップを導入しているゲンヨウです。今日は広島に来ています。”地方創生インターンシップ”のセミナーに来ています。NPO法人ETIC.さんのお誘いで、半分は勉強、半分はワークショップのグループファシリテーターとして参加しています。
1.多様な主体が興味を持つインターンシップ
地方創生インターンシップは主に都市部の大学生を地方に還流させる狙いがあり実施されています。研修会の参加者は地方自治体を中心に、各地の経済団体や大学、そして僕らのようなコーディネート機関など中国四国エリアの方々が参加していました(今回は、中四国地区を対象とした開催で、これまで東京・仙台・福岡など日本の主要都市で開催されています)。
企業もインターンシップを取り入れる企業は大手では当たり前ですし、地方企業でも増えてきました。
大学生もインターンシップを3年生になったらやるという認識が当たり前になってきました。数年前では地方大学ではインターン=意識高い学生だったのですが、急激な変化です。
2.インターンシップの目的を言語化する
上記リンク先の記事にも書いたように、インターンシップという言葉は一つですが、インターンシップという中身は多様にあるという現状です。期間の長短、内容の難易度、賃金の有無など、変数の掛け合わせが増えていくばかりです。
そうなると、自社としてインターンシップをどういう形で導入するのかという部分まで言語化しておかないと、大学生や社内など、本来の目的とずれてしまう可能性が出てきています。
採用であれば、採用を目的としたプログラム設計になりますし、事業開発であれば、そちらに向けた設計になります。採用に向けた人材、事業開発に会う人材と人材像も必然的に変わります。そして、インターンシップ生ともインターンを実施する目的を確認していくことがより重要になってきます。
目的がはっきりすれば、社内の認識をどうするのか、学生と何をやるのかも鮮明になってきます。ただ、大学生が来るだけ価値は生まれません。
3.インターンシップを通して得る直接的な効果と副次的な効果
直接的な効果は、売上UPや採用につながったなどです。非常にわかりやすい効果です。ただ、地域の企業と一緒にインターンを実施していると、副次的な効果も重要ではないかと感じています。
例えば、社内人材の育成や、経営者の思いや考えをカタチにして浸透していく機能、企業としての若手人材受け入れ態勢の準備体操の機能だったりします。弊社は企業からコーディネートフィー(料金)をいただいて事業を行っているので、直接的な効果を狙いつつ、経営者の方とお話ししながら副次的な部分についても議論してプログラムを設計します。
本気の大人と、本気の学生から成果は生まれる。外から来た大学生がめっちゃ頑張って成果がでるということもあります。一方でそれは確約できるものではなく、仮説が外れればすぐに営業につながることはありません。
また、大学生がアイデアを出してくれるだろう「やってみなはれ」というまかせっきりの姿勢でも成果は出にくいです。大学生はフットワークは軽くできるのですが、アイデアがあるわけでもないですし、事業に関しては24時間頭の片隅にはおいて暮らしている経営者の方がいろいろ考えています。
そんな経営者の仮説を一緒に勧めていくプログラムが、よいプログラムになっています。あくまでも対等な関係性の中でプロジェクトを進めていくのが大事です。
4.地方にとってインターンシップは特効薬か
地方にとってインターンシップが採用の特効薬になるのかは、難しいと思っています。これは働くことや暮らすことの価値観の部分がまだまだ、都市や大きな企業に向かいやすい傾向があるからです。
もちろん、僕らの周りでは”暮らし”や”生き方”のような視点で、地方や地方企業を選んだり、転職したりしている流れも見ています。地域仕掛け人市なんかはまさにそんな場だと思います。しかし、まだまだ限定的な動きという冷静さも持っています。
そう考えると、長期インターンシップは企業文化や地方で働く可能性を体感することはできますが、採用の一丁目一番地というよりは、企業の体質改善のような3丁目3番地くらいの位置づけで、長い目で考えていくと本質的には良いのではないかと思っています。もちろん、ご縁ができて採用につながればより良いかと思います。
施策としては採用よりも事業開発の数などを目的として立上げていき、その中で鳥取を好きな人が出たら採用してみるくらいのモチベーションで何とかならないのかなと思っています。
5.地方中小企業に興味がないのがスタートライン
「地方企業のことを知らないから、地域に就職しない」という話が出てくるのですが、僕が捉えている実態はもう少し残酷で。
「知らないというよりも、興味がない」
という部分だと感じています。例えば鳥取の4年制大学は、鳥取大学・鳥取環境大学・鳥取看護大学しかなく、学生数で言えば鳥取大・環境大に集約されています。そして、その2校の学生の8割は鳥取県外から来た学生です(僕も同じ立場でした)。
該当の大学生は、鳥取に関して言えば”大学生時代を過ごす街”くらいの認識であり、就職先としてのベクトルは無いに等しいです。まずは、そのベクトルをちゃんと地方での暮らしに向けて「知りたい」と感じさせる設計も同時に必要だなと感じています。
企業のことや働き方も認識してもらいながら、鳥取って暮らすのに面白いなと思ってもらう仕掛けが大事だと思っています。そういう意味で、鳥取県では企業インターンシップと、地域体験を”ふるさとワーキングホリデー”で掛け合わせて実施するのはありだと思います(弊社は今年の夏はそれをやりました)。
それでも、一か月という時間だけでは、なんとなくベクトルを向けられたかなという程度だと思うので、そこから地道に関係性を築くしかないです。
「都市部、大手」という価値観ではない選択を選ぶ人も徐々には増えてきています。その中で地方中小企業に可能性を感じられるようなプログラムをインターンシップを通じて実施することも大事ですし、そういった時代にあった人材を活かすことができるような会社の仕組みを同時に作っていくことも、求められていることです。
今日のおまけ記事は、地方中小企業の採用にとって大事なことについて、僕の考えを書いています。
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