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農村16きっぷの学生の質問に答えました

鳥取で大学生と地域をつなぐNPOを経営しているゲンヨウです。先日、農村16きっぷの学生が質問をぶつけてくれました。昨年、農林水産大臣賞を受賞したコンテスト「食と農林漁業大学生アワード」に今年も申し込むとのことです。なかなか17年も活動を続けている学生団体も少ないので、初期のころの話も含めて面白かったです。時間に限りもあったので、答えられなかったものを含めて答えていきます。

1.設立のきっかけ、思い、当初の目標は?

設立のキッカケは、3つです。
(1)地域の社会人の大人との接点を創りたい
大学3年生の後期から鳥取の経営者や行政マンが参加しているメーリングリスト(今だとFacebookグループみたいなもの)で情報共有するコミュニティに参加して、議論したり、飲み会に行ったり、イベントのお手伝いをしたのが面白かったこと、そして地域の人達も学生との接点を求めていたこと。

(2)日本の学生が日本でモチベーションをあげる仕組み
大学2-3年生の時にアジア(中国・東南アジア)に遊びに行った時に、現地の大学生や若者がすごく学ぶことに真剣でした。僕はもともと砂漠緑化とか国際協力に興味があって鳥取に来たのですが、自分も含めた日本の学生のモチベーションと比べて海外の若者の学ぶ意欲に圧倒されて、これは10年でひっくり返るなと思って、鳥取の学生が鳥取でモチベーションをあげる方法が必要だと感じたこと。

(3)同期の女子大生が農村で生き生きと動いていた
当時同級生の女子複数人が、鳥取県内の農村体験をして報告を書くアルバイト(レポートレディー)というのをやっていました。純粋に集落に若い人が入ったら面白いって話も身近で聞いてたので、農学部の学生による農業系のボランティア派遣はありだなと思いました。

2.最初の集落と関わりを持ったきっかけは?

学生人材バンクを立ち上げたのが2002年4月1日。最初に、大学内にあったボランティア情報とか片っ端から集めていて、その中に棚田ボランティアのチラシを見つけました。

それで、鳥取県の中山間地関係の課に行ったと思います。そこで案内してもらったボランティアに2002年、2003年は行っていました。岩美町横尾とか、若桜町のつく米とか、八頭町の姫路とかに最初は行ってました。

自分の車で、周りの後輩とか乗せて行ったりしていたと思います。また、最初に活動に加わってくれた後輩が自分の車で行ってくれたこともありました。東部エリアに限られますが、農村派遣の最初はそんな感じです。

3.そもそもなぜ自分たちがボランティアに行く団体ではなく、学生と集落を繋ぐ団体にしたのですか?

可能性を広げたかったからです。学生人材バンクを立ち上げたときも、ボランティアに限らずアルバイトの情報も流していたし、大学生にとってキッカケになれば何でもOK。最初からつなぐ組織でした。

また自分たちだけで行くことにしてしまうと、広がりが少なくなる可能性があります。少しでも広がりがでる方式を選びました。また、いろんな地域から話が出たときにいろいろ対応できると良いなと思ったからです。

実際にやってみて、運営には興味はないけどボランティアなら行ってみたいという学生もいましたし、ボランティアの現場を踏んでから運営をやってみたいというパターンもあったので良かったかなと思います。

4.鳥取で農村ボランティアをすることの良さ。

(1)地域に必要とされる経験ができる
 ボランティアが必要なところに派遣しているので、基本的には「役に立った」という経験ができます。また、20歳前後の子たちは地域でも少ない世代なので、好意的に受け止めてもらえます(孫のように)。

(2)誰でも関われる簡単な技術で始められる
 農村ボランティア作業は、スコップや草刈り鎌などで始められる簡単な作業が多いです。まさに人海戦術なのですが、その分、大学生の基本的な体力があれば、始められます。地域への参加のハードルが低いのもポイントかと。

(3)多様な世代と交流できる
 集落の方は70代以上の方が多いです。自分の親から祖父母の年齢の方と接することができます。また、鳥取の大学生は鳥取県以外の子が多いので、地域の違いも経験できます(方言や食文化など)。また地域で子供を接するときもあります。小学生くらいの子たちとの接点というのも、ふだんはなかなか会わない世代になります。そんな多様な人との出会いで生き方を知ります。

5.鳥取の農村の現状や問題は?

現状はボランティアに参加したもらったらわかると思いますが、多くの農地を少ない人数(しかも、高齢な方)で運営している状況。地域の問題をなんとするかは難しいのですが、鳥獣害は広がっているなと思っています。

農村ボランティアだけでなく、農業全般で人不足なことは聞いていて、農家からのアルバイト依頼なども聞くので、人の問題は感じます。昔は家族・親戚で作業をしていたのが、面積の拡大や、親せきなどの高齢化など状況は変わっていると感じます。

最近は、大雨など農地に大きな被害を出してしまう天災が増えていると感じます。人海戦術でどうにもならない部分と、人が関わることで何とかなる部分はありますが、人で何とかなる部分は関われたらと思います。

6.もしも農村16きっぷがなかったら鳥取はどうなってたと思いますか?

そこまで大きな影響を与える企画になってはまだいないと思うのですが、卒業生で地域に移住して農業をやっている人、集落に住むようになった人など、いくつかの地区では頑張ってくれています。事業を行っていたり、若手で町の農業委員を務めている男性もいますが、そういうキッカケにはなれたと思っています。

集落に限らず、鳥取県内に卒業生が30名以上残っているので、これからが楽しみな感じです。そういう意味では、少しだけ鳥取を面白くしている原動力かなと思います。

7.ツミキャリの現状についてどう思われていますか?

ツミキャリ(メール配信システムでボランティアやアルバイトなどを告知するシステム)については、大学生の連絡ツールが変わってきたので、そこへの対応が必要だと感じています。

現状は、農村16きっぷの構成員である大学生スタッフが多いので、まずはその人たちが現場に行く。そして次には友達を連れてくるみたいな仕組みにしていく方が、広く大学生を集める仕組みにはなりそうですね。

8.今までの取り組みで失敗したこと→改善点、

失敗はいくらでもあって、集落の納涼祭で酔いつぶれて、集会所に泊めてもらったときに窓を閉め忘れて帰って、後日の大雨で障子を全部だめにしてたとか。ボランティアに行く道を間違えて遅刻したとか。道具忘れたとか。

村咲クを智頭の中島集落で始めた年、プレ体験で6月に泊めさせてもらったのね。その夜に、僕らの体験の受入れに前向きな方たちが、他の地域の方と外で大声で言い合っている(聞いてた聞いてないみたいな話)のをトイレの窓から見てしまったときはかなりビックリして。

僕らを守ってくれている地域の人がいるから、僕らの活動ができていることもあるんだなと再確認。村咲クではそういう人が地域の人に「よい企画だね」と言ってもらえるように、僕らの思いや視点を気づく取り組みとして”中島集落の良いところプレゼン”を本番のメニューに入れました。

結局、中島の村咲クは10年以上続いたので、大きな問題にはならなかったけどその時はさすがにビックリした。地域との関わりについての意識はそこでグンと上がった気がする。

あと、学生スタッフがみんな辞めそうになるというのも経験しました。僕の心ない一言で、当日の3年生チームを怒らせてしまって。これも事実確認して誤って、無事に終わったのですが。一人一人の気持ちと行動を尊重しつつ状況調整することの大事さを学びました。

大学生が入れ替わるというのは、新しい風や文化が入るからいいことでもあるし、毎年、同じような注意事項を伝えたりもしなきゃいけない、そんな難しさもあります。可能性>難しさなので続けていますが、上級生のスーパーパワーに助けられていることも多いと思います。

8.農村16きっぷの今後の目標、ゴールは?

16きっぷのプロジェクトとしての方向性は、いろんな集落とちゃんと関わるという部分だけで、細かな中身は学生チームで決めたら良いと思う。どちらかというと、僕ら職員チームは、学生がのびのびとやるためのインフラ(環境)整備に力を使った方が良いかなと思っています。

今年から、寄付をちゃんと呼びかけようと始めていますが、これもその一つで、現状は県からの委託事業というお仕事をうまく組み合わせて、学生たちの行動環境に還元しています。その事業がいつ終わるかわからないという一面もあるので、寄付を集めるようにしました。

年間300万円くらいあれば、アジト(学生拠点)の家賃やインターネット代、レンタカーやガソリン代。道具類・消耗品(軍手・長靴)なども準備できるし、リーダー会議や学生の面談などもある程度見ることができるかなと考えています。

(参考)寄付金について。
symcableというサービスを活用してインターネットでの寄付を受け付けています。認定NPO法人を目指して、社内の体制なども変えてきています。まだ認定ではありませんが、寄付いただければありがたいです。

9.農村16きっぷの一番の成果は何?

継続していることだと感じます。地味だけど続けているという事実が強いんじゃないかなと。その継続から、上記にあるような新規就農始めた若者や、集落に住み始めた人などが起こっています。

実は、農村の委託事業を受けた最初の年(2004年)に、ある集落の方から

「若いというのもあるけど、君たちが私たちの知らない情報などを持っていてそれを教えてくれることが事務局として意味があるということだよ」

とお話しいただいたのを覚えています。続けながら、少しずつ新しいこと、冊子作成、イベント開催、農村体験、空き家借りる、農家民宿など・・・。いくつもの小さなチャレンジを続けながら始めていくことで、いろいろな企画が生まれています。

企画を実行する上でも、日々のボランティアという土台があるから、チャレンジできる部分もあるわけで、継続が一番の価値を生んでいるのではないかと最近は思います。

10.その他の質問

(1)始めの頃の集落側の対応
 鳥大の子が何かやっている。よくわからないけど助かるみたいな感じだったと思います。いつも、「いつ実家に帰るの?」みたいな話題は出ていたので、半信半疑だったかなと思います。

棚田ボランティアのような、慣れている集落は最初から話がしやすかったように思います。新しく始めるところは僕らも含めて不慣れでした。

(2)この17年間で集落、農村16きっぷの変化
一番は圧倒的に、大学生メンバーが増えたことかなと思います。最初の数年は一学年に2・3人なので全体でも10人いかないスタッフでやっていたので(派遣エリアは今の半分くらい)、ずっと農村の活動を学生はやっていたと思います。現状の広報、交流班の動き+ボラという形でした。学祭で展示をやった年がありましたね。懐かしい。

人数が増えて、班を分けたことによってできるようになったこともあれば、ひたすらやるって環境は減ってるかもしれないです。現スタッフからは信じられないかもしれないですが、新歓→春ボラ派遣→村咲ク夏→秋パンフ作成合宿→夏休み→秋のボラシーズン→柿ドロボー→冬の村咲ク→春パンフみたいな感じでした。その分、職員(当初は僕も)も加わってやっていたのもあります。

OBOGからすると、今年、アジトにエアコンが入ったのはすごい衝撃だと思います(笑)最初は、一階の会議室も二部屋に分かれていて、壁はあとからぶち破ったので(もちろん許可もらってます)。

(3)どうやって後輩に団体を繋いできた?
最初は16きっぷの会議に若き僕も入っていたので、一緒に作っていた感じですね。23歳から26歳くらいまでの話。そこからは、最初の職員になった「よしこさん(旧姓藤田)」が引っ張ってくれて、それを受け継いだ学生チームが後輩に背中を見せていく感じになっていったかと思います。

今のリーダー会議もそうですが、中心学生とは職員がコミュニケーションを取るようにしています。僕も意識はしていたり、学生と限られた時間の中でも会話をするようにしています。

(4)農村16きっぷの仕組み的な話
現状(2019年8月現在)は、鳥取県農林水産部の”農山村ボランティア事務局”という委託事業を原資にレンタカーの代金やガソリン代金などは行っております。委託事業なので○○という仕事をしてくださいという取り決めを収める形でお金をもらっています。お仕事としての該当エリアは東部と西部になります。

学生人材バンクでは、担当職員の上田と僕が行政との調整を、西部エリアには藤吉という職員を配置して新規集落との調整なども行っています。

学生チームには現場について、行ってもらっている部分が大きく、報告書や写真撮影などは、そこも含めたものになっています。

中部地区については、受託業者は別のNPOさんがされていますが、大学生への依頼など、地域の希望などもあるのでそこについては、学生人材バンクが独自に費用を出すことにして、みんなには行ってもらっています。

もともと県内全域を僕らが扱っていた時代が長かったので、関係性のある地域は連絡をしてきますし、一昨年に一時期弊社が受託していた時に関りをつくった新規集落もあるので、そことの関係性も大事にしたいですので、費用については考えずに派遣しています。

また、中山間地域に限定した委託事業ではあるのですが、住民からはその辺の線引きはわかりにくいので、原則話を受けるようにしています。

農村16きっぷが評価されている部分は圧倒的な派遣実績と派遣力だと思います。農村ボランティアの特徴としては

(A)地域の日程調整と天候によって日付が動きやすい
(B)ある程度体力が必要なので若い世代が好まれる

の2点です。大学生は、比較的日程の柔軟性(土日に限るが)があることと、体力があるという点でマッチしています。一般的なボランティアが多い層は①高校生~大学生、②退職後の人たちが多いのですが、農村ボランティアになると②の人たちが体力的になかなか難しくなるからです。

また、活動当初に関しては携帯電話へのメールで募集情報を流し、人を集めることができる低コスト運営も良かったと考えます。一人一人電話や郵送で対応していたら、かなり時間もお金もかかってしまうので。そういう意味でも大学生が担っていることは大きな要因だったと思います。

質問は以上でした。

また気になったら声かけてください。

twitterもやっています。こちらに質問してもらっても良いかも。


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中川玄洋@NPO法人bankup
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