47都道府県の歴史と地理がわかる事典 #1
都道府県は、存在そのものが日本人の心のよりどころだ。各都道府県の歴史・地理をコンパクトながら深掘り解説した『47都道府県の歴史と地理がわかる事典』は全都道府県に足を運んで集めた「鉄板ネタ」「地雷ネタ」まで盛り込んだ、読んで楽しく役に立つ画期的な事典。
※本記事掲載の情報は、書籍刊行当時のものです。
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はじめに
少子高齢化による人口減少で、47都道府県はもう維持できないかもしれない──日本の地方について、悲観的な見通しが語られることが増えました。
ですが、仕事や旅行で全国各地を訪れるたびに、ご当地の豊かな自然を目にし、地元の人たちのソウルフードを味わい、地域に根を張って活躍している方たちから元気をもらい、毎回新しい感激があります。最近は日本のガイドブックには載っていない、思いがけないところで、外国からの観光客に会い、「ここにこんな面白いスポットがあったのか!」と驚かされることも増えました。
また日本の地方行政区分の始まりは、1300年以上前の飛鳥時代にまでさかのぼるのですが、当時からの地名や土地柄は、「過去の遺物」としてでなく「生きた歴史」として、現在の都道府県へと受け継がれています。
そんなことを思う時、強く感じるのは、「都道府県は日本の宝だ」「日本の地方には、まだまだ凄い力がある」ということです。
私は、リクルートが運営するオンライン予備校「スタディサプリ」で、高校日本史・倫理・政治経済・現代社会、中学地理・歴史・公民の7科目を担当する、いわば「社会科のオールラウンダー」です。またこれまで、47都道府県すべてを訪れ、全国各地で20以上の職種を体験してきました。
その経験をもとに、47都道府県の歴史・地形・気候・産業・文化など教科書に出てくる内容から、出身有名人・最新のご当地ネタなど教科書には出てこない内容まで、すべて盛り込んだのがこの一冊です。
出張や商談などビジネスのお供に、新たな旅行先選びのヒントに、受験生の息抜きに、昔習った歴史や地理をもう一度勉強したいという、大人の学び直しに──。
ご自分の出身県からスタートして(ここですでに知らないことだらけのはず!)、お隣の県、同じ地方と広げて読んでいくことで、きっと日本の魅力を再発見していただけることと思います。そして、そのことが、地方が力を取り戻す一歩につながると信じています。
ようこそ、新しい日本に出会う旅へ!
1 北海道 北海道地方
[人口]529万人(→) [面積]7万8421 ※北方領土合わせ8万3424(全国1位) [人口密度]67人/km2(全国最下位)
[道庁所在地]札幌市(人口195万人、全国5位)
[主要都市(人口順)]札幌、旭川、函館、苫小牧、釧路、帯広、北見、小樽など
[道花]ハマナス [道木]エゾマツ [道鳥]タンチョウ
[道章]未来を象徴した星形
1 地理
(1)地形→周囲はすべて海
日本最北端の本州に次ぐ大きな島を中心に、利尻島・礼文島・奥尻島などを含む500以上の島々からなり、全国の約5分の1の面積を占める。反面、人口密度は最も低く、手つかずの自然が多く残ることから、エゾヒグマ、エゾシカ、キタキツネなど固有種の動物も存在。また、ロシア(もとソ連)との間に択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島の北方領土問題も抱える。
道内最高峰(2291m)の大雪山〔旭岳〕や十勝岳、有珠山や羊蹄山〔蝦夷富士〕など火山が多く、温泉地の数は全国1位。2008年にG8サミットが行われた洞爺湖、特別天然記念物マリモの阿寒湖、流入・流出する川がなく透明度日本一の摩周湖、心霊写真で有名な(流行ったな……)屈斜路湖や、面積全国3位のサロマ湖など多くの湖がある。また、全国3位の長さの石狩川や天塩川、十勝川なども有名。
1980年には、日本最大の淡水魚イトウが生息し、道鳥タンチョウの繁殖地でもある釧路湿原が、日本で初めてラムサール条約(=水辺の環境と生物保護のための国際条約)登録地となった。2005年には、オホーツク海に面する知床半島が、ユネスコの世界自然遺産に登録され、エコツーリズムも盛んに行われている。加藤登紀子の名曲「知床旅情」も有名。また、南の襟裳岬も森進一の熱唱により全国的な知名度を獲得した。
(2)気候→「北海道の気候」
短い夏は涼しく、長い冬は寒さが厳しい冷帯〔亜寒帯〕。年間平均気温は全国最低の9・3℃。1902年、上川盆地の旭川市で、マイナス41℃が観測され、現在も日本の最低気温記録である。
太平洋側は、夏に寒流の千島海流〔親潮〕の影響で南東の季節風が冷やされ濃霧が発生する。日本海側は、冬に北西の季節風の影響で雪が多く、オホーツク海沿岸には、アザラシやクリオネとともに流氷が押し寄せる。全体的に降水量が少なく、内地とは違い基本的に梅つ雨ゆが存在しない。位置的に台風の接近や上陸も少ないはずだが、近年は大きな被害もある。
(3)特産
[農業]農業生産額全国1位。十勝平野などで畑作される小麦、小豆、大豆、ソバ、トウモロコシ、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、テンサイ〔砂糖大根〕、アスパラガスが全国1位。石狩平野や上川盆地では稲作が行われ、「ななつぼし」「ゆめぴりか」などが有名な米は新潟県に次ぐ全国2位。[酪農]根釧台地などで盛ん。乳牛の飼育頭数が全国1位で、生乳やバターの生産も全国1位。[林業]エゾマツ、トドマツなど天然林が多く、木材生産は全国1位。[水産業]漁獲高全国1位。特にサケ、マス、スケトウダラ、サンマやホタテ貝、ウニ、昆布が全国1位。主な漁港は、北洋漁業の基地である釧路や花咲ガニ漁の根室など。[工業]資源に恵まれ、食品などの加工業が盛ん。室蘭は鉄鋼業、苫小牧は製紙・パルプで知られる工業都市。苫小牧や千歳に自動車関連、札幌にIT関連企業を誘致するなど、低い第二次産業比率の増大をはかる。[観光業]時計台とススキノの札幌、運河・倉庫群と寿司屋通りの小樽、五稜郭と夜景の函館、旭山動物園の旭川、ラベンダー畑の富良野のを中心に、国内有数の観光地。ニセコなどスキー場も多い。[伝統産業]アイヌの二風谷アットゥシ(織物)、木彫の熊など。[ご当地グルメ]ジンギスカン、石狩鍋、札幌ラーメン(味噌・塩・醬油)、旭川ラーメン、鮭のちゃんちゃん焼き、スープカレー、帯広豚丼、室蘭やきとり(実は豚肉)など。[お土産]白い恋人、生チョコレート、夕張メロン、札幌円山動物園ラーメン、いかめし、松前漬け、ガラナ飲料など。
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