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歯周病という「慢性炎症」が糖尿病を引き起こしていた! #2 糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい

日本人の8割がかかっている「歯周病」。実は糖尿病をはじめ、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎など、命にかかわる病気の原因になることをご存じでしょうか? 医師・西田亙先生の『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい』は、歯周病と全身の病気の驚きの関係から、予防と改善に役立つお口ケアの方法まで、私たちが知らない健康の新常識を教えてくれる一冊。読んだらきっとすぐに歯を磨きたくなる、そんな本書の中身をご紹介します。

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口の中で「ボヤ」が起きている

なぜ歯周病の治療をすることで、Aさんの糖尿病は良くなったのでしょうか。

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そのカギになるのが「慢性炎症」です。体の中でくすぶっている「慢性炎症」(Aさんの場合は歯周病)を見つけだし、その火種を消してあげないと、最強と言われるインスリン治療を行っても糖尿病は良くならないのです。

糖尿病と歯周病は、「慢性炎症」を通してつながっています。

歯周病が「慢性炎症」の1つであることは、イメージしやすいでしょう。

歯周病とは、「歯肉炎」と「歯周炎」という、外からやってきたバイ菌が歯のまわりに感染することで起こる病気です。お口の中でボヤ――火事までは至らない――が起きている状態にたとえられます。大きな火事ならすぐに消火されますが、小さなボヤはそのまま放っておかれ、くすぶり続けます。このずっと続くボヤが「慢性炎症」なのです。

お口が臭いときは、歯のまわりでボヤが起きています。また、歯周病の人は、体力が弱ったとき「歯が浮く」ようなことがあります。風邪やインフルエンザのような熱が出るわけではないのですが、この歯のまわりの浮く感じが、まさに慢性炎症なのです。

慢性炎症の影響は歯ぐきだけにとどまりません。あとでもお話しするように歯周病菌などのバイ菌は、歯ぐきを通して体の血管に入りこみます。このときにボヤの煙とも言うべき悪玉ホルモン(炎症性サイトカインと言います)が出て、さまざまな「悪さ」を働くのです。

内臓脂肪がたまると「お腹ボヤ」が

では糖尿病は「慢性炎症」とどう関係しているのでしょうか。

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内臓脂肪をたっぷりためこみ太った人が糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞などになりやすいことは、みなさんもよくご存じでしょう。

実はこれらの病気が、内臓脂肪の「慢性炎症」によって引き起こされるということが、医学界でも最近ようやく言われ始めました。

お腹ボヤ(慢性炎症)が起こるメカニズムはこうです。

中性脂肪をためている脂肪細胞は、本来は丸い小型です。それが、「食っちゃ寝、食っちゃ寝」の不摂生を続けていると、細胞の中に中性脂肪の油滴がたまり続け、しまいには針で突くと破れんばかりに肥大します。

そして脂肪細胞がものすごく大きくなると、人体の免疫軍団はそれを異物と認識して、悪玉脂肪細胞相手に戦争(炎症)を起こします。戦いは長期化し、ボヤ(慢性炎症)が起き、ここで悪玉ホルモンの煙が出るというわけです。

歯のまわりや脂肪細胞でボヤが起きたときに出る悪玉ホルモンの煙は、インスリンが効きづらい状態をつくり、血糖値を上げ、高血糖や糖尿病の原因になります。また、血圧を上げたり、不整脈を起こしたりもします。

悪玉ホルモンがする「悪さ」はこれだけではありません。悪玉ホルモンは血管を傷つけ、それにより血管に「プラーク」という物質がたまります(歯周病の原因である「歯垢」も同じ「プラーク」と呼ぶことに注目です)。プラークがたまると、血管は狭く固くなります。これが動脈硬化です。

動脈硬化が起こると、血栓ができやすくなり、はがれた血栓が脳の血管に詰まると脳梗塞、心臓の血管に詰まると心筋梗塞になります。

昔は、太った人のお腹はたんなる脂肪の塊だと思われていました。それが実は、ただの“脂身”ではなく、人体でも最大の悪玉ホルモンをつくる工場だということがわかってきたのです。

お父さんのお腹まわりのサイズがもし85センチを超えていたら(お母さんは90センチ)、内臓脂肪がボヤを起こし、そのボヤから悪玉ホルモンがたくさん出ていることをイメージしてください。

以上のように、歯のまわりで起きているボヤも内臓脂肪で起きているボヤも、原因は違うものの、同じ「慢性炎症」で、どちらも高血糖や糖尿病の原因になっているのです。

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