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健診でチェック! ヘモグロビンA1c「5.7以上」は糖尿病予備軍 #1 糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい

日本人の8割がかかっている「歯周病」。実は糖尿病をはじめ、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎など、命にかかわる病気の原因になることをご存じでしょうか? 医師・西田亙先生の『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい』は、歯周病と全身の病気の驚きの関係から、予防と改善に役立つお口ケアの方法まで、私たちが知らない健康の新常識を教えてくれる一冊。読んだらきっとすぐに歯を磨きたくなる、そんな本書の中身をご紹介します。

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日本の基準は甘すぎる?

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」との違いを何によって決めているのでしょうか。

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それは、「ヘモグロビンA1c」の値です。

ヘモグロビンA1cとは、体内に酸素を運ぶヘモグロビンとブドウ糖が結合したものです。血糖値が高いほど結合しやすくなり、血糖値と並んで、糖尿病を診断する指標とされています。

厚生労働省は、ヘモグロビンA1cの値が6.5パーセント以上の人を、糖尿病が「強く疑われる」人だと言います。そして6.0パーセント以上の人は、糖尿病の「可能性を否定できない」人、つまり予備軍だと言っています。

しかし、ここに問題が潜んでいます。なぜなら、アメリカではヘモグロビンA1cの値が5.7パーセント以上だと「前糖尿病(prediabetes)」と呼ばれるからです。「前糖尿病」とは文字通り、その人が糖尿病の前段階にある、という意味です。

これに対して日本の特定健診では、ヘモグロビンA1cが5.6パーセント以上になると「要注意」と言われるだけです。

みなさんには、アメリカにならい、「ヘモグロビンA1cが5.7から6.4パーセントまでは前糖尿病」と覚えておいていただきたいと思います。黄信号は5.7。この数字はぜひ、肝に銘じてください。

なぜこの数字を覚えてほしいかと言うと、歯周病になってもいきなり歯が一気に抜けるわけではないように、糖尿病も、ある日突然糖尿病を発症するわけではなく、必ず神様からもらった「猶予期間」があるからです。

病院で糖尿病と診断される人は、糖尿病全体のありようから見れば氷山の一角に過ぎません。自分は健康だと思っていても、ほとんどの人はこの氷山のどこかに入っています。

歯周病は、最初に歯肉炎があり、だんだん軽度から中度、重度歯周炎へと進み、最後に歯を失います。でも歯肉炎や軽度の歯周炎で治療をする人は少なく、重度になってから歯科医院に駆けこむために、大切な歯が抜けてしまうのです。

糖尿病も同じで、自覚症状がないまま進行する病気であることを理解していないと、気づいたときには「遅かった」、すなわち合併症を併発して苦しむことになってしまいます。

私自身も、少し太ればすぐに海面近くまで行く可能性があります。5.7を超えた人は、もう海面に近づいています。発症が近いのです。上の氷山の図を覚えておき、6.5を超えたら海面上で発症、5.7を超える程度でも海面に近い発症間近なのだということを、イメージしてほしいと思います。

子どもも若者も糖尿病予備軍

現代は、20代の若者でも、ヘモグロビンA1cの値が5.7パーセント以上という人がざらにいます。さらには、小学生の多くが糖尿病予備軍だと聞けば、みなさんはまさかと思われることでしょう。

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ですが、これはまぎれもない現実。いま、日本で糖尿病に蝕まれているのは成人だけではありません。

香川県で発行されている「四国新聞」は2017年1月1日付の1面に、次の見出しを大きく掲げました。

「讃岐っ子は生活習慣病予備軍」

おめでたい元日に、かくも不吉な見出しをよく付けたものだと、私は思いました。この事実の本当の恐ろしさがわかっていれば、こんな見出しで一面を飾れるわけがないからです。

香川県は全国でも珍しく、以前から小学4年生に小児生活習慣病予防健診を実施しています。その結果、男子で約15パーセント、女子で約14パーセントにあたる児童のヘモグロビンA1cの値が5.6パーセント以上だったというのです。

これはアメリカであれば、「ほぼ前糖尿病」と診断されるレベルです。15パーセントという数字は、40人のクラスのうち6人の子どもが「前糖尿病」の状態にあるということです。背筋が寒くなるほどの結果です。

40歳以上の男性の2人に1人、女性の3人に1人が糖尿病、あるいは予備軍であるという事実はもちろん重大ですが、未来の国を支える子どもをめぐる状況のほうが、より深刻な事態ではないでしょうか。

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