論理展開からフォントまで、優秀な人がつくった資料を徹底的にパクれ! #1 仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。
プレゼンのうまい人は、何文字で資料をつくり、何分喋るのか? 文章がうまい人は、一つの文章にメッセージをいくつ入れるのか? 営業がうまい人は、一ヶ月に何回顧客に会いに行くのか? テレビでもおなじみのコンサルタント、坂口孝則さんの『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』は、あらゆる角度から「数」で仕事をとらえ直したまったく新しい仕事の本。ムダなく、ミスなく、いつも結果を出す人になれる、そんな本書の中身をご紹介します。
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先輩社員が作成した資料を集める
ぼくは会社に入社してから資材係になった。この職場ではさまざまな資料が飛び交っていた。
ただ、そのなかでも一番重要なのは、「どこの取引先からなにをいくらで購入するか」を説明する資料だった。資材係とは、メーカーの生産に必要な部材を買い集める仕事だと説明した。その仕事のキモとなる資料だった。
まず、優秀な先輩の「どこの取引先からなにをいくらで購入するか」を説明する資料をぼくは集めた。会社は面白いところで、資料が見放題だ。しかも、作成者に質問すれば、なぜかほとんどのひとが丁寧に教えてくれる。
ぼくは20枚くらいの資料を集めて、それを眺めていった。つまり、資料一枚一枚の具体的な型も20ていどを使いまわしてできあがっている。それを活用すればいい。まず形から入る姿勢が重要だ。ぼくは印刷された資料をそっくりそのまま新たにパソコンで作りはじめた。
まずは枠を作った。印刷する。そして、お手本の資料を重ねあわせて蛍光灯にあてた。ミリ単位でズレていると、それを修正し、ぴったり重なるまで続けた。
次にフォントだ。多くは「MS明朝」か「MSゴシック」を使っていたけれど、それも印刷してたしかめた。エクセルでも、ワードでも、パワーポイントでも、タイトルや本文の文字の大きさをそのまま真似ていった。
色使いも何度も印刷し直してたしかめた。1枚は縦何行になっているか、横何文字になっているかを指で数え、印刷余白も定規で測った。
もちろん、最初から作成者に頼んで電子ファイルを入手すればよいだろう。ただ、このときの模倣が訓練になった。それ以降、セミナーなどでよい資料に出会うと、資料の「型」の模倣が容易だった。
そして、ぼくの前には、20とおりの、そっくりそのままのコピー資料が完成した。サイズから、タイトルから、内容から、グラフから、なにからなにまでそっくりのやつだ。ぼくはこのとき、仕事のフォーマットを作り上げた。
あとは、これを自分の仕事に適用すればいいだけだ。
内容よりも先に「型」を決める
お手本にする資料のコピーができたら、それを部分にわけて赤でマルをつける。それで自分なりにそのブロックには「なにが書かれているか」を追記していく。これは最初のうちは不慣れでかまわない。やや抽象的な思考が必要だけれど、すぐに慣れていく。
あくまでぼくが分析した前述の資料だけど、こういう構造だった。
・この調達品の取引先を決める重要性
・どの取引先に決定するかの結論
・品質・コスト・納期に関する他社と比べた定量的優位性
・この取引先を選定した際のメリット
まあ、こんな構造だった。
そして、自分の仕事にあてはめるときには、この資料の型をそのまま使って、この順番そのままに、そして文の長さやグラフなども、そっくりそのまま盗用する。自分の資料ではグラフは不要だと考えてはいけない。書く内容が型を規定するのではなく、型が書く内容を規定するのだ。
たとえば、「この調達品の取引先を決める重要性」のところでお手本とする資料が5行ぶん書かれていたとする。それを3行や6行にしてはいけない。5行ちょうどで書く。なにかデータが引用されているところでは、自分の資料でも同じようなデータを引用する。計算式があるところでは、計算式を同じく使って書く。
こうすると、論理展開から形式まで、すべて先哲たちのエッセンスが詰まった新資料が誕生する。資料作成がヘタなひとたちは、自分で一から作ろうとする。それは時間のムダであるばかりではなく、先人たちへの敬意を忘れている、とぼくは思う。
そして、型を作ったあとは、それぞれフォーマット資料として保存しておこう。これもぼくの例だけれど、パソコンに入っているのは次のようなものだ。
・企画書フォーマット
・提案書フォーマット
・プロジェクトスケジュール設定フォーマット
・市場分析資料フォーマット
・問題・課題提示フォーマット
・新概念説明フォーマット
……などだ。これらを作っておけば、新規作成時すぐに型にあてはめられるようになる。書く内容が型を規定するのではなく、型が書く内容を規定するのだから。
そして、この考えが身につけば、会議の場は違ったものになる。これまで他者が提出する資料は、読むだけのものだった。セミナーでも、講師の資料はただのテキストだった。
しかし、これからは自分の資料「型」を増やしてくれる機会となる。働くみんなは毎日、必死で伝わる資料を考えている。つまり、ぼくのために、代わりに頭脳労働をしてくれているのだ。世界はぼくのための実験場だ。
「ほう、これはわかりやすい資料だ」。そう語るひとがいる。そのときこそ、「ぼくのためにありがとう」と心のなかでお礼を述べるべきだ。「計る」「数える」「記録する」仕事術は、そうやってはじまる。
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