ビジネス文書は「相手にやってほしいこと」をまず書きなさい #3 仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。
プレゼンのうまい人は、何文字で資料をつくり、何分喋るのか? 文章がうまい人は、一つの文章にメッセージをいくつ入れるのか? 営業がうまい人は、一ヶ月に何回顧客に会いに行くのか? テレビでもおなじみのコンサルタント、坂口孝則さんの『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』は、あらゆる角度から「数」で仕事をとらえ直したまったく新しい仕事の本。ムダなく、ミスなく、いつも結果を出す人になれる、そんな本書の中身をご紹介します。
* * *
時間がない人でも要点がわかるように
さて、ここから文章の構成の基本を述べていきたい。まずは第1章の資料作成のところと基本的には変わらない。目的・対象者・メッセージ、そしてストーリーが必要になる。
重複する内容は説明しない。ここでのストーリーは、文章の論理構成だと考えてほしい。
・目的: この文章を読んだひとになにをしてほしいのか
・対象者:誰が読むのか、読んでほしいのか
・メッセージ:この文章によってなにを伝えたいのか
資料もそうだけれど、文章は資料以上にごまかしがきかない。資料は図やグラフを貼り付ければ、読み手もなんとなく理解した気になる。しかし、文章は文字だけで説得しなければいけない。
このうち、対象者はあえて文章に書く必要はない。ここでビジネスマンがもっとも書く機会の多い社内文章を考えると、配布先が対象者を規定する。そしてビジネスマンが文章を配布する先は、基本的に時間がないひとたちだ。
文学作品を読みたいわけではないので、できるだけ短時間に要点を知りたいと思っている。資料は説明するひとが聴き手の時間を制約するけれど、文章の場合は読み手が時間をコントロールする。
よって、ビジネス文章の基本は、
・時間がない人でも、要点を素早く知ることができるものであり
・かつ読み手の都合によっては、細部まで確認できるもの
である必要がある。根底に流れる思想は、あくまで読み手の立場に立って書くことだ。文章を書きたい順に書いてはいけない。あくまで読者が読みたい順に書く。
アメリカ著名人の伝記は、多くが優秀なゴーストライターによるものだ。それらをいくつか手にとってみるといい。生まれて成人するまでを順に追うものではなく、冒頭にクライマックスシーンが書かれている。最初につかみ、読者の関心をひいている。
この構成で書けばちゃんと伝わる
ここで一例として、会社で利益改善プロジェクトを発足するときの、他部門への協力要請文章を考えよう。文章を書くひとの思考はこうだ。
・「こういう背景がある」(売上低迷、競争環境激化、社内コスト増大)
→「したがって、こうしなければいけない」(利益改善プロジェクト開始の必要性)
→「協力してほしい」(各部門からプロジェクトメンバーを1名選定してほしい)
説明では、これを入れ替える。
・「プロジェクトを発足する」(利益改善プロジェクト開始の必要性)
→「各部門は協力してほしい」(各部門からプロジェクトメンバーを1名選定してほしい)
→「なぜならば、こういう背景がある」(売上低迷、競争環境激化、社内コスト増大)
部門長各位
お世話になります。
このたび社長命令にて緊急利益改善プロジェクトを開始する運びになりました。つきましては、11月1日のプロジェクトキックオフ会議にあわせて、部門より1名ずつ当プロジェクトメンバーの選定と当会議への参加指示をお願いいたします。(※やってほしいことを端的に書く)
この緊急利益改善プロジェクトとは、当社の2期連続赤字決算を受け、外部調達費の見直し、製品仕様の見直し、社内コストのムダ撲滅を目的とし、来期までに100億円のコスト削減を全社で取り組むものです。(※内容の概要を書く)
当プロジェクト発足の背景は次のとおりです。
理由1:売上低迷
昨今の顧客需要は……
理由2:競争環境激化
さらに競合他社の参入により……
理由3:社内コスト増大
また固定費の増加が……(※背景を具体的に述べる)
これ以降は、プロジェクトの取り組み内容詳細、活動予定などを述べていけばいい。
繰り返すと、趣旨は相手にやってほしいことから、メッセージの概要、背景や細部に移ることだ。多忙な読み手であっても、最初の数行さえ読めば、部下に転送できる。
「そんで結局、なにしてほしいんだ?」と疑問をもたせてはいけない。読み手が賛成しようが反対しようが、まずは書き手の意図を「そういうことね」と理解させねばならない。
◇ ◇ ◇