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「振れ幅を小さくする」のがメンタルコントロールで一番大切なこと #1 ウチダメンタル

日本を代表するプロサッカー選手として、一時代を築いた内田篤人さん。引退後、初めて発表した本が『ウチダメンタル 心の幹を太くする術』です。本書では、重圧やケガと長年向き合ってきた内田さんがこれまで実践してきた「メンタル統制メソッド」を初公開。仕事や勉強、人間関係など、日常生活にも役立つこと間違いありません。ファンはもちろん、そうでない方もぜひご覧ください!

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「強いか、弱いか」でとらえない


メンタルの上下、その抑揚(振れ幅)を抑える――簡単にいえば、それがウチダメンタルの根幹だ。それができる人って“心の幹が太い”んだろうと思う。

さっきも書いたけど、メンタルはどうしても、「強い」「弱い」みたいな話が主流になる。僕も現役中によく聞かれた。どうやったら「メンタルが強くなれますか?」って。
 
逆にメンタルが強く見えるのは誰ですか? って聞くと、決まって挙がるのが「本田圭佑さん」。「長谷部誠さん」とか「遠藤保仁さん」と言う人もいたかな。ちなみに、僕も強く見られているらしい。
 
イメージとしては理解できるけど、あんまりしっくりこない。
 
強弱でわけると、強い人が良くて、弱い人が悪い、みたいな感覚があるからだ。この説明もちょっとしっくりこないかな。強い人はポジティブ(強気)、弱い人はネガティブ(弱気)、でどうだろう。
 
確かに、みんなのイメージのなかで「強い」人の代表格である本田さんは、ポジティブだ。超ポジティブ。本当にポジティブ(笑)。サッカーに対してはもちろんのこと、ビジネスや社会問題など、どんなことでも常に前向きで熱いし、それを発信する力がある。
 
じゃあ、ハセ(長谷部誠)さんは? ヤット(遠藤保仁)さんは?
 
確かにポジティブな面はあるけど、本田さんほど強気ではないし、何かを伝えようとするわけでもない。むしろ、冷静に淡々としている。
 
全然、タイプが違うのに同じようにメンタルが強いと思われる。その共通点は、振れ幅の小ささにあると思う。
 
いつもメンタルを一定の状態に保てる――よく医療系のテレビドラマで心電図がピーッとなって、まっすぐになると危篤状態になるよね? あのピーッとまっすぐ線が伸びているような状態にできる人は、メンタルが強いと思われる。
 
じゃあ、本田さんとハセさん、ヤットさんでは何が違うかといえば、メンタルには「良い」「悪い」じゃない「上下」があって、イメージ的にいえば、本田さんは上部でメンタルを一定に保つことができて、ハセさんは真ん中で、ヤットさんは下部で保つことができる、というわけだ。

メンタルは振れ幅で決まる


これが僕のメンタルに対するイメージ。

つまり、いわゆる世の中にあるメンタルが強い人・弱い人の行動は上下に対応していて、そこに良し悪し(一流とそうじゃない人の差とか、パフォーマンスのいい・悪い)は存在しない。

繰り返しになるけれど、一般的なメンタルの強い・弱いは、ここに差を持たせている気がしている。それが僕にはどうも合わない。
 
大事なことは、どうしても上下してしまう感情の振れ幅を小さくすること。あるときは、本田さんのように「上部メンタル」になって、あるときは、ヤットさんのように「下部メンタル」になる。
 
サッカーにたとえていえば、試合前にすごく気合いが入っていて、「行こうぜ!」って自分も周りも鼓舞するんだけど、負けちゃうと「ドーン」と沈む。
 
こうやってさっきまで「上」だったの急に「下」になる、またちょっとすると「上」になる……感情が乱高下するような選手は、プレーの波も激しくなってしまう。それはやっぱりプレースタイルにも出るし、メンタル的にもろく見えてしまったりする。
 
もちろん、僕にだって感情の波はある。でもそれを極力小さく、細かい上下で済ませる。遠くから見たらまっすぐブレない、心電図のピーッて線のように見えるようにしていた。
 
さっき、モヤモヤしてるときは、「とことんモヤモヤしてやろうと思った」って書いたけど、そうやって考えるのもこの「振れ幅」のためだ。
 
うまくプレーができなくても、サッカー選手はしんどいのが当たり前だよねって考える。マイナスの感情を違う感情で無理やり補ってあげようとしたり、下げようとしたりしない。受け入れるわけだ。
 
振れ幅を極力減らす。
 
太い心の幹を作る。

 
僕はずっとそうやってメンタルを捉えている。

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