最高の接客をするために「お客さんの一口目」を絶対に見逃さない #4 本日も、満席御礼。
登録者数40万人超の人気料理チャンネル、『鳥羽周作のシズるチャンネル』でおなじみの鳥羽周作さん。『本日も、満席御礼。』は、スターシェフへ登りつめた鳥羽さんの意外すぎる経歴や人生哲学、成功の秘密が明かされる初めての本。豪快な笑顔の裏に隠された、プロの魂に感動すること間違いなしの本書より、一部を抜粋します。
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圧倒的な「想像力」と「愛」
第一線で活躍している人と接していて、ある共通点に気づきました。
それは「ものさしの目盛りが細かい」ということです。
目盛りが細かいからふつうの人が素通りするところにも気づきます。本当に小さなゴミであっても落ちていることに気づく。
一流の人は「気持ちよさの解像度」が異常に高いんでしょう。だから「なんでそのゴミを拾わないの?」とまわりに言っても、ふつうの人は「ゴミなんてありました?」となってしまう。ものすごく小さな部分であっても、ズレていると違和感を覚えるんです。
そこがひとつ上のレベルに行けるかどうかの分かれ目だと僕は思います。
では、どうすれば「気持ちよさの解像度」を高くできるのか? それはやっぱり圧倒的な「想像力」と「愛」しかありません。
「これって、こういうふうにしたら、もっとよくなるかもな」「もしかしたら、こうしたほうが気持ちいいかもな」と想像できるかどうか。そして「喜んでほしい」「感動してほしい」と相手を思い続ける「愛」。結局は、それしかないんだと思うんです。
そして、想像力を高めるために重要なのが「観察」です。
僕は接客のスタッフに「お客さんの一口目を絶対に見逃すな」とよく言っています。
店に入ってきた瞬間から観察する
たとえば、2人でいらしたお客さんが一口食べて「うんうん」とか「いいね」と目で会話していることがあります。そのときに「いかがですか?」と聞くと「おいしいです」という言葉が返ってきます。そのタイミングで料理の説明をすると満足していただけます。
逆に一口目の反応が微妙なときは、あえて説明はせずに次の料理に行く。そうやって一口目の雰囲気で、どういうサービスをしていくか決めるわけです。
お客さんとお話しするかどうかもケース・バイ・ケースで決めています。雰囲気を見て「今日は盛り上がってるから、僕は出ていかないほうがいいな」と思ったら、あまり席には行きません。
あと、お客さんがお店に入ってきたときに靴やカバンなどの身なりもさりげなく観察しています。身なりだけでも「その人が何に興味があるか」とか「どういう立場の人か」といったことがわかるんです。
ぜんぜん洋服にこだわりのなさそうな人に服の話をしても「なんのこっちゃ」と思われてしまいます。一方で、高いバッグを持っていて最初からワインのグラスを回して飲んでいる人は、おそらくふだんからいいレストランに行っているはずです。そういう人には食の話をしたほうがいい。
上座と下座のどっちに座るかも見ます。たとえば、デートで来た男性がいきなり上座に座ったりすると「ああ、あんまりレストランに慣れていないのかな」とわかります。
それがいい悪いではなくて「だったら、そういう人に合った緊張させないようなカジュアルなサービスをしよう」と思うんです。
お客さんを知るために、お店に入ってきた瞬間からきちんと観察していると、最高の接客ができるはずです。
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