私のこと好き?企画参加「めんどくさい彼女」743字
僕には姉がふたりいる。
長女は聡明で、理詰めで言い負かしてくる。
次女は運動神経が抜群で、なにかと張りあってくる。
どちらにも勝てるわけがないので、適当に受け流して生きてきた。
***
開口一番、彼女は言った。
「私のこと好き?」
僕は自動的に答えるしかない。
「ああ。はい、好きですよ」
「どこが?」
「どこが?と言われますと?」
外見をほめろと言っているのか、内面のほうか。
僕は頭を働かせ、内面の美しさがにじみ出ている目だと伝えた。
とたんに、彼女のようすがおかしくなる。
近くのカフェに僕を引っぱっていき、いちばん高いメニューを買えと要求する。
「これ3人前のパフェらしいけど?いける?」
「君が食べるの」
「ああ、ハイ。そうですか」
生クリームがニガテな人間にとっては、地獄である。
見かねた彼女が僕からスプーンを奪い、交代してくれた。
「こんなにおいしいのに。ほんとは私のこと好きじゃないでしょ」
「めんどくさい彼女やるのって、めんどくさそうだね」
「うん。まあね」
とパフェに夢中な彼女は、ポカをしでかす。
真っ赤なイチゴを飲み込んでから、うらめしげに僕を見た。
「誘導した?今」
「時間切れですね」
1時間限定の「彼女ガチャ」
機械をまわすと「小悪魔系彼女」「女王様彼女」などと書かれたチケットが出てくる。
専用アプリを通じて、カノジョ役の彼女と待ち合わせるシステムだ。
始めてトライしたところ「めんどくさい彼女」にあたったというわけ。
***
彼女の好きなところを、姉貴たちに詰問された。
「あー演技がヘタなとこかな」
「は?わけわかんない」と寄ってたかってボロクソ言われた。
いつものことで慣れているし、性格のいいかわいい彼女ができた僕には、どうってことはない。
(おわり)
*三羽烏さんの企画に参加いたします。お誘いありがとうございました。
P.S. タイトルを「めんどくさい姉」に変更しようかな…
彼女には「恋人」と「She」の両方の意味があるので、混乱させるべく「彼女」を多用しました。