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キンモクセイ盗賊団の秋まつり|毎週ショートショートnote

                               410字
植物マニアなじじさま宅は、手入れが行き届き、秋の野花に蝶が舞う。その一角に、立派な樹形を誇る標本キンモクセイはある。
ある朝、その木から信号が発せられ、伝令が街じゅうを駆けた。

公園の植え込み、雑木林。小学校の中庭は、穴場スポット。小鳥たちは花をつつき、落とす。乱暴にくちばしで引きちぎる輩もいるが、それだと価値が下がる。いちばん多くの花を集めた者は、その年の王となる。

レース後は、花を貨幣とした物々交換まつり。
熟れた木の実は栄養たっぷり。ふんわりススキは巣の模様替えに。小鳥たちの笑い声や羽ばたきが、かしましい。ここで出逢うつがいも多い。

じじさまは、おもてなしに大忙し。念入りに掃除し、すがすがしい空気に。半分にカットした蜜柑を枝に差し、石段には米粒をまいておく。お礼として届いた種は、翌年芽吹き、庭の一員となる。
風も浮かれて、じじさまの池を黄金に染める。
毎年、キンモクセイ盗賊団のしわざで、街は華やいだ香りに満たされる。

(おわり)

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