秘密のお祭りデート|掌編小説 ネコミミ村まつり
夏の恋は秘密めいている。
彼女はふしぎな色をまとっていた。
それがなんなのかわからなくて、気がついたら僕はとらわれていた。
「はあい。いらっしゃいませ~。『ネコミミパパイヤジェラート』おふたつですね?カップ、コーン、『ネコミミもなか』とございますが『ネコミミもなか』になさいますか?」
僕は彼女につれてこられたお祭りで、ナゾのジェラート屋台にいた。
夏祭りにジェラ―ト屋?アイスクリームでなく?
不可思議なワードを連発する店員は、客に選択の余地を与える気はないらしい。
「ネコミミパパイヤセット」なる、ジェラートとラッシーがのっかったトレイを手渡されたとき、品定めでもするかのように店員の瞳がキラリと光った。
「やっぱ、これだよね~」
音羽は慣れた手つきで猫の顔のかたちをしたもなかを割り、オレンジ色のジェラートをすくって口に入れる。
「ん~!とろけるう~。ほら、九尾くんも」
なんでも、温暖なこの地ではパパイヤが特産なんだとか。猫の耳のような突起のあるその果物は糖度が高く、珍重されているという。
シャリシャリかつクリーミー。シャーベットとアイスクリームのいいとこ取りで、クセになる味わいだ。
「パパイヤって消化酵素があるんだって。だから、何個食べてもおっけーなんだ。あ、ネコミミパパイヤカレーも食べなきゃ」
音羽は天真爛漫なセリフをぶちかまし、僕は狐ならぬネコミミにつままれたままだ。カレーを先に食べるべきだろと、冷静な自分が脳内で指摘する。
それにしても。ここの村人、やけにビジュアルがよくないか?
ネコミミもウソみたいになじんでいるし。つけていない僕が浮くレベルだ。
「それが伝統ってもんよ。生まれたときからネコミミなんだから」
「は?まさか…」
「生えてるわけじゃないよ?もちろん」
普通の祭りで見かける、お面を売る屋台。ここでは、大小、毛色、かたいのからふわふわまで、さまざまなネコミミが整然と並べられていた。
老若ニャン女、全員ネコミミ。華やかな花火を見上げる、猫の海。
潮の香りが風にのって漂ってくる。あとは、誘うような甘い果実の香り。
今まで聞いたこともない行事だから、村人以外は禁じられているのでは?
その疑問を彼女にぶつけてみた。
浴衣姿の音羽の耳が、ぱっと赤く染まる(ネコミミではないほうだ)
この祭りに恋人を招く行為は、実家の両親に紹介するに等しい——だと、なんとか聞き出せた。
「……え。まじで」
「引いた?」
「いや、…なんてゆーか、ありがとう」
「ふふ。それはネコミミをかじるようなもの。ここまで言うのがセットなんだよね」
彼女の覚悟に応えるべく、僕は生まれてはじめてネコミミを購入した。
僕の実家がキツネ族の末裔だと、いつ伝えようか悩みながら。
(おわり)
ちよさんの企画に参加いたします
抽選当たるかな…??
「ネコミミ村まつり」のストーリー部門にもダブル応募です
一緒に観ると恋のかなう「ネコミミ花火」を題材に
▼くわしくは、こちら
▼「ネコミミ花火」について
*なんのはなしかわからない、すてきなカレーソング(?)「北へ南へ なんのはなしですか」とジェラートは、セット販売でえす(?)
ミモザさんwith見据茶さん、サイコーだぜ!!
おふたりはひらめきも仕事も早くて、((((;゚Д゚))))ガクブルさせられてばっかりです
▼多才な歌姫の記事はこちら
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