お姫様ラッコの初恋|毎週ショートショートnote
410字
離さないで。ずっとそばにいて。
無口だけれど、わたしにはわかる。ふたりの想いはシンクロしている。
波がやさしく体を揺らす。守られている安心感で、あたたかな眠りへ。
「ララさま。どちらへ?」
うるさいのが来た。同い年のクセに説教くさいタオ、わたしの従者。
「彼氏んちに決まってるし!」
小言をさえぎり、石ころ探しのルーティーンへ。ホタテを楽に割れる究極ストーン。見つけたら彼に贈るんだ。すでに候補はいくつかあり、脇腹ポッケにしまってある。
ある日、台風が来て離ればなれになった。なにがあろうと、いつも抱きしめてくれたのに。
重すぎた?もう飽きたのかな。
わたしは泣きながら彼の家へ急ぐ。沈没船が海底を覆い、その姿はどこにもない。ちぎれた海藻が流され、泡となって消えた。
「いい加減コクれば?」
タオは、眠るララの頬をなでた。
「もうちょっと落ち着いてからね。お姫様育ちだから時間をかけないと」
「にしても、恋敵が昆布て」
同僚は、あきれて空を仰いだ。
(おわり)
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