[ボクシング] バンタム級に敵無しか?中谷潤人がTKO勝利で王座防衛!
7大タイトル戦が組まれたボクシングイベントの2日目、WBC世界バンタム級王者の中谷潤人が同級1位のペッチ・ソー・チットパッタナを挑戦者に迎えて大トリを飾る防衛戦を行った。
序盤から距離やタイミングを全て掴み、スピードで圧倒的なアドバンテージを確保していった中谷は挑戦者に対して大きな差を見せつける。
フレームが大きく懐の深い中谷は危なげなくペッチの攻撃を処理し、スピードの及ばないペッチがインファイトに持ち込んでもしっかりと対応して見せた。
側から見ていて全く危なさを感じない中谷は、もしかしたら一発をもらうかもしれないといった不安さえ漂わない程であり、目には見えない圧倒的なまでの差がそういった何があっても覆られなさそうな雰囲気を生み出すことに繋がっていたのだろうと思う。
77戦を行って76勝を収め、一度もダウンを経験した事のないペッチを以ってしても中谷の表層に触れるに留まり、それ以上の深さを測ることは出来ない状態だった。
そうしてペッチの攻撃を悉く封じた中谷は、ペッチの穴を突き始めタフな挑戦者に的確な攻撃をヒットさせ始める。
そしてやってきた6回、中谷が得意な左カウンターを決めるとペッチはグラつきダメージを露わにした。
そこを逃さなかった中谷は追撃のラッシュを仕掛け、ペッチにキャリア初のダウンを経験させる。
かなりダメージは深そうではあったが、ペッチは何とかゆっくりと立ち上がり、再び中谷と向かい合ってどうにかそのラウンドを生き残ろうと対処していくが、6R終了間際に無情にも中谷の左が炸裂しペッチはマットに沈んでしまう。
ここから立ち上がる気力はもう残されておらずレフェリーがストップして試合が終了した。
これで王座の防衛に成功したは中谷は全く挑戦者を寄せ付けずにV2を達成。
まだまだ底を見せていない中谷には大きな余裕がある。
それはつまり現在のバンタム級の選手と比べて力量的に頭一つ違うレベルにいることを示唆していると言えるだろう。
現在のバンタム級で他のチャンピオンやタイトル挑戦圏にいるランカーを含めても中谷に肉薄できるような存在は今のところ見当たらず、現状バンタム級では一強状態になっていると言ってもいいかもしれない。
29戦29勝22KOという戦績からも分かる通り、中谷は対戦相手を倒す方法と負けないための危機管理を徹底しており、ディフェンス面でもオフェンス面でもバリエーション豊富な対処策を持っている。
そのため、リングの上でどう対処していくべきなのかが「分かってしまう」ため、相手の一歩先をいくことが可能となり、追い詰められる前に対応することが出来てしまうといった術を見つけているのではないだろうか。
だから難攻不落と化した攻防一体の立ち回りを見せることが出来るのだろうと思う。
そして彼はまだその限界値を晒されていないため、世界はその処理限界を未だに把握できないままでいる。
そこを暴いていけるだけの力量を持った選手との戦いが期待されるが、バンタム級では彼の底知れなさが強調されていくだけのように思うので、スーパーバンタムもしくはフェザーといった階級まで上げていってやっとその先が見えてくることになるのではないかと感じる。
夢のカード、井上尚弥VS.中谷潤人
そんな「ネクストモンスター」中谷との対戦を期待されているのが日本史上最高ボクサーである井上尚弥だ。
先述した「底の暴かれ具合」で言うと中谷よりも井上の方が暴かれてしまっている感があるため、この状態で両者が対戦することになれば、もしかすると井上は中谷に上手く戦われてしまうかもしれない。
多くの部分で井上尚弥の方が秀でていると感じるが、一発をもらう怖さは井上の方が高く、逆に中谷はその点で非常に優れた安定感を持っている。
なので果敢に攻める井上の攻撃をいなし、返しを的確にヒットさせながら小さなアドバンテージを重ねつつラウンドを奪っていくことで、中谷が井上を焦らせる展開へと持ち込むことが出来れば、痛烈な一発を後半の重要なラウンドでヒットさせるということも可能になってくるかもしれない。
それが出来れば「モンスター討伐」という偉業を達成することも可能になるだろう。
ただその一方で中谷の底を暴いてしまうだけの実力を持っているのが井上尚弥であるので、中谷がこれまでに感じなかった想定外を井上が感じさせることになる可能性は大いにあり得る。
チャンピオン故に広がる選択肢
ここから中谷はバンタム級の統一戦へと照準を合わせ、井上はグットマンやアフマダリエフといったスーパーバンタム級に残っている挑戦者と戦う予定がある。
また、井上は近い内にフェザー級への転向も視野に入れているので、どのタイミングで井上・中谷が巡り合うことになるのかは分からないが、仮にこのカードが実現すればPFPランキングに位置する日本人ボクサー同士のビッグマッチという歴史的な一戦が生まれることになるだろう。
一部ではラスベガスでこのカードが実現することになるのではないかという説が囁かれているが、フェザー級転向という目標を据えながら最終決戦とも言えるような一戦を組むということが果たしてあるのかどうか。
中谷は井上以外にもバンタム級転向を考えるジェシー“バム”ロドリゲスとの対戦も期待されているため、選択肢や分岐は複数あると言えるだろう。
エストラーダを仕留めたロドリゲス
そんな高い実力と才能を示す中谷は現時点で26歳と非常に若い。
なのでいずれにせよ将来的には日本のボクシング界を代表し、歴史に名を刻むレベルの活躍をしていくことになるだろう。
世界は井上の次に中谷という才能に酔いしれることになるはずだ。