[UFC]総合力で押し切ったロマン・コピィロフ
UFC302で行われたセザール・アルメイダVS.ロマン・コピィロフの一戦。
お互いに打撃に優れたファイターであるが、その威力と組み立ての上手さからコピィロフが優位を築き、2Rで仕留めるだろうと感じていたが、結果はコピィロフの3R判定勝ち。
その試合内容を鑑みると、「試合に勝って勝負に負けた」という印象を受ける内容になっていたように感じる。
というのも、お互いにストライキングを武器とするファイター同士であった為、試合展開としては打撃戦が繰り広げられることが予想されており、その殴り合いをどちらが制するかという所に勝負のポイントが設けられていたのだが、その点でコピィロフはアルメイダの上を行くことは出来なかったのだ。
1R目に関してはコピィロフが良い打撃を当てて確実にリードを奪っていたのだが、2R以降はスタンド技術の引き出しと対応能力に差が現れる展開となってしまった。
コピィロフの打撃に対応したアルメイダがコピィロフの攻撃をいなしつつ攻めに転じると、コピィロフはアルメイダを押し返すことが出来なくなり、主導権を奪われてしまう展開が目立つようになる。
加えて、スタミナの部分でもコピィロフは劣勢に陥っており、もはやアルメイダの強力な一撃がヒットするのは時間の問題のように見えた。
なのでコピィロフとアルメイダの打撃戦は、歴戦のキックボクサーであるセザール・アルメイダに軍配が上がる結果になったのではないかと思う。
しかし、この戦いはMMAによるもの。
スタンドで劣勢になったコピィロフはアルメイダの圧力を押し除けるようにタックルに入り、あっさりとアルメイダからテイクダウンを奪う。
アルメイダはこの部分での対応能力を示すことが出来て初めて、MMAの舞台でも強力な打撃を武器にして相手に押し付けていくことが可能となる。
そのお手本となるアレックス・ペレイラはより強力な打撃テクニックとテイシェイラから得たテイクダウンディフェンスを掛け合わせることでその問題をクリアし、次のステップへと進んでいくと、MMAの舞台でも猛威を振るう強力なファイターへと進化していった。
そのことからも組み展開の対処能力の有無が、キックの能力を活かしながら次のレベルへと上がっていくために必要な大きな鍵となってくる。
その点でアルメイダはまだ十分なスキルを得ることが出来ていなかった。
コピィロフが総合的な勝負に切り替えると、アルメイダはスタンドの優位を維持することが出来ず、テイクダウンからトップコントロールを繰り返されてしまい、判定で黒星を喫する結果となった。
ただ、ここでもしアルメイダがタックルを切っていたとしたら、コピィロフが生き残ることは難しかったのではないか思う。
それくらいの劣勢に陥っていたコピィロフは、アルメイダの未熟な部分に助けられたところがあるとも言えるだろう。
しかしそれでもファイターとして最重要となる「勝利」を奪ってみせたのはコピィロフである。
これで連敗を回避したコピィロフはさらに上を目指すことが可能となり、より強力なファイターとの試合が組まれることとなるだろう。
今回スタンド勝負で押し負けるような展開となったが、KO率の高い強力な打撃を持っていることに変わりはないので、次の試合でどのような戦いを見せてくれるのかというところに注目が向けられる。
次戦のロマン・コピィロフにも期待したい。
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