[UFC295] ライトヘビー級のベルトはどちらの手に
ジョン・ジョーンズの欠場によりスティぺ・ミオシッチとのヘビー級タイトルマッチは流れることになってしまったが、UFC295はそれでもまだ熱を失わない。
ヘビー級タイトルマッチの代わりにメインイベントとなったのはライトヘビー級タイトルマッチ。
イリー・プロハースカVS.アレックス・ペレイラ
ジャマール・ヒルがアキレス腱断裂の大怪我によって返上した王座を賭けて両雄がぶつかり合う。
以前にライトヘビー級の王座を獲得していたプロハースカだが、ヒルと同様に大怪我による長期離脱からベルトを返上することになってしまったため、防衛戦を行うことなくベルトを手ばすこととなってしまっていた。
その復帰戦が今回のタイトルマッチとなる。
それだけでもインパクトがあるのだが、対戦相手がアデサニヤを打ち倒した元ミドル級王者のアレックス・ペレイラであり、ライトヘビー級転向2戦目でタイトル挑戦を迎えているという大物っぷりにも驚きを感じる。
物凄い勢いでミドル級のランキングを駆け上がり、あっさりと王座を獲得してしまったペレイラはライトヘビー級に階級を上げると、初戦で元ライトヘビー級王者のヤン・ブラホビッチと対戦し、これを判定で退けてみせた。
キックボクシングからMMAに転向してUFCに入り、次々と当てられる大物ファイター悉く退けながら異常なキャリアの積み上げ方をしているペレイラは、もうライトヘビー級王座の目の前まで来てしまっている。
これは本当に凄まじい活躍だ。
「石の拳」アレックス・ペレイラ
そんなペレイラの躍進を支えているのが、正確で高い破壊力を誇るストライキングである。
打たれ強くはないもののディフェンスも固く、当てれば倒せるパンチを左右の拳から正確に放つことが出来るので、対戦相手はケージの中で常に高い危険に晒されなければならなくなってしまう。
そんなペレイラに拳を届かせようとして、まだガードも崩せていない内からはやって打った打撃は防御の上を叩くことが多く、その中で生まれた隙をペレイラは正確に突いてあっさりとKOを演出することが出来てしまう。
UFCにおいてもそれだけ突出した破壊力を見せているのが、アレックス・ペレイラの「石の拳」なのである。
GLORYでの活躍や現在のUFCでの活躍を鑑みると、打撃という部分でペレイラは世界のトップに位置していると言えるのかもしれない。
全フィニッシュ勝利で王座を手にした元王者の実力
RIZINのヘビー級GP準優勝・ライトヘビー級チャンピオンと日本の舞台で大きな活躍を見せたイリー・プロハースカはUFCに移ると僅か3戦でタイトルマッチへと漕ぎ着けた。
そしてタイトルマッチでペレイラの師であり当時の王者でもあったグローバー・テイシェイラと壮絶な死闘を繰り広げた末にリアネイキッドチョークを極めて王座を獲得することに成功した。
これまでの道のりを振り返ると、プロハースカもペレイラに負けず劣らずの驚異的なキャリアの積み重ね方をしていることが分かる。
プロハースカもペレイラ同様に破壊的な攻撃能力を持っているが、どちらかというとペレイラよりも野生的な感性で思いもよらないクリティカルな一撃を繰り出すところに怖さがあるタイプだと思う。
またプロハースカはテイシェイラとの試合でも見せたようにグラウンドでの粘り強さも持っているので、寝ても立っても戦うことが出来るファイターでもある。
なので、総合力という意味ではプロハースカの方が優っているのかもしれない。
キャリアの面でもペレイラの8-2に対して29-3-1と非常に分厚い経験値を獲得して来ている。
31歳でそれだけのキャリアを築いていることにまず驚くが、その勝率もまた凄まじいものがある。
そういったところからもMMAファイターとしての厚みは圧倒的にプロハースカの方が上になるだろうと思う。
懸念点は過去の敗戦が全てフィニッシュ負けとなっていること。
それはつまり打撃を当てることが得意なペレイラの一撃で全てがひっくり返される可能性が十分にあるということでもある。
なので、過去の悪夢をUFCの舞台で再現できるだけの一発を持っているペレイラを、プロハースカが上手く封じることが出来るかどうかが鍵となってくるのではないかと思う。
グラウンド対応にキャリアの浅さが出ているペレイラのウィークポイントを的確に突いていけるかどうか。
キャリアの差を飛び越える一発を回避するためにやるべきことを遂行できればプロハースカの王座復帰は一気に近づくことになるだろう。