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[RIZIN] 役者が集うフェザー級

RIZIN LANDMARK5では金原正徳が山本空良に勝利し、斎藤裕が平本蓮を退け、朝倉未来が前王者の牛久絢太郎を下した。

クレベル・コイケがベルトを持つフェザー級で新たな動きが生まれたLANDMARK5。

金原・斎藤・朝倉の3人がこの大会で勝利を収めた。

しかし、3人が皆クレベルへの挑戦を求めているわけではない。

斎藤は次戦まで間をとる考えを示し、金原は強豪・ケラモフとの試合を望んだ。

この3人の中で唯一クレベルと対戦経験がある朝倉だけが王者との再戦を望んでいた。

しかしクレベルは鈴木千裕とのタイトルマッチを控えているため、他のファイターがすぐに挑戦できる状況ではない。

その挑戦者となっている鈴木千裕は金原・朝倉・斎藤との対戦経験がないので、当然彼らに勝利したことはない。

そんな鈴木のRIZINでの戦績は5勝1敗で現在5連勝中、そして二刀流の鈴木はキックボクシンでも海外の強豪を退け連勝を継続している。

なので確かに勢いと華はある。

しかし、現在のRIZINフェザー級のトップ層との試合は行なっていないので、金原や朝倉を差し置いていきなりタイトルマッチに挑戦するというのは少し違和感がある。

フェザー級タイトルマッチのマンネリ化を避ける目的もあるのかもしれないが、フェザー級上位勢との試合を一つ挟んでも良かったのではないかと思う。

ある程度はタイトル挑戦への説得力を生ませるステップが必要だったのではないだろうか。

金原・朝倉・ケラモフなど、現在のフェザー級には鈴木以上にタイトル挑戦の説得力を持つ選手はいるのではないかと思う。

RIZINの異質さ

こういったタイトル挑戦やカードの組み合わせに統一感や説得力が感じられないのは「ランキングという目安がない」所為なのではないかと感じるところがある。

ランキングがないことで思い切ったカードやインパクトのある組み合わせを作ることはできるが、選手が上を目指すためのモチベーションやベルトの価値にマイナスな影響を与えているようにも思える。

現在のポジションを明確にする指標のようなものが何もないので、選手たちの向く方向がそれぞれバラバラになってしまい、チャンピオンそっち退けで次戦を考える選手が出てくるという異常な状況まで生まれてしまっている。

金原正徳の勝利者マイクでそれは顕著に現れている。

彼はケージ上でケラモフを「フェザー級最強の選手」と表現した上で、進退を懸けた対戦相手に指名した。

タイトルマッチが既に決まっているとはいえ、キャリアの集大成となる試合の対戦相手として現チャンピオンがまるで触れられないというのは格闘技団体の中でも少し異質なことなのではないかと思う。

対戦相手に勝ったことによる実力証明が地位によって示されないと、選手は上を目指すのではなく個人的に戦いたいと思う相手との対戦を求めてしまうのだろう。

具体的に誰がどの位置で、誰を倒したらどうなるのかが不透明な状態ではベルトまでの道のりも明確にはならないので、「とりあえずやりたい奴と戦う」もしくは「とりあえず誰でもいい」といった流れになりやすくなってしまうだろう。

それはチャンピオンの存在とベルトの価値の低下に繋がり、階級の方向性に統一感を損なう可能性がある。

世界の主要な格闘技団体であるUFC・Bellator・ONEなどが階級ごとにランキングを定める中でRIZINは何の目安も定めていない。

この縛りが無いという特徴は興行への注目度を「エンタメに寄せることで獲得できる」という性質を助けることになるかもしれないが、格闘技の盛り上がりや発展を考えるとマイナスな特徴でしかないように感じる。

真っ当な競争を生み出せない格闘技団体が、そのジャンルで成長していくことは難しいのではないだろうか。

個性的な面々が集まる階級

バンタム級やライト級に関しては、その階級で圧倒的に輝いているのが「堀口恭司(元王者)」「ホベルト・サトシ・ソウザ」というチャンピオンたちなので、階級の視線が上に向けられるという流れが出来ていると感じるが、フェザー級にはチャンピオン級の輝きと個性を放っている選手が複数いるので具体的な括りがないとまとまりがつかなくなってしまう傾向にあるのではないかと思う。

優劣を示す要素がない状態で我の強い個性的な選手が集まると、チャンピオンやベルトに対する拘りは弱まってしまう可能性がある。

立ち位置をハッキリさせ競争率をより高めることでベルトの価値を高めて、タイトルマッチまでの道筋を明確にし、勝利を積み重ねることや負けを重ねることの意味合いを深めることで、格闘技がより味わい深くなっていくのではないだろうか。

そうなればフェザー級の戦いはより魅力的になっていくのではないかと個人的には感じている。

この選手に勝ったということは次はここと戦うのかな、というようなその先への期待を観戦している側も持つことで次の興行への期待も膨らむだろう。

一つの勝ちが明確に次のステップアップに繋がることが分かれば、その試合の結果とマッチアップにより注目が向けられるということも考えられる。

エンタメに寄せなくとも格闘技の魅力でもっと人々の目を惹きつけていくことも出来るのではないかと思う。

効果の薄いズレたところに特色を見出すのではなく、必然性とストーリー性を生み出し、当事者であるファイターや試合を楽しむ観客にも分かりやすくするためにも「ランキング制度」というものがあっても良いのではないだろうか。

そのスタイルで運営されるRIZINの大会を見てみたいと思うし、きっと戦いはより熱くなるだろうと思う。

そうなった時のフェザー級タイトルマッチ、クレベル・コイケVS.フェザー級ランキング1位の戦いはめちゃくちゃに痺れるものになるに違いない。

クレベルVS.鈴木も魅力的なカードではあると思うが、勝ち取った権利という背景が生み出す緊張感というものがないので、やや重厚さに欠けてしまうような印象がある。

ただMMAとキックでその実力を示しながら確実に前に進んできた鈴木千裕がもしここでクレベルを倒すようなことがあれば、フェザー級は新たな時代を迎えることになるだろう。

そういった大きな衝撃を生み出すポンテンシャルを秘めた組み合わせになっているとは思う。

海外の強豪選手や国内の実力者が増えるにつれて混沌具合は増していくだろうフェザー級は今後どういった形で進んでいくのだろうか。

RIZINの団体としての変化も含めて今後の動きに注目が向けられる。

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