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井岡一翔、王座陥落。
IBF世界スーパーフライ級チャンピオンのフェルナンド・マルティネスと統一戦を行った井岡一翔は、フルラウンドを戦い抜いた末に判定負けを喫し王座陥落という結果となった。
王座統一に成功したマルティネスは無敗のままWBAとIBFのタイトルを保持するに2団体統一王者となったので、4団体を統べるにはあと2つのベルトが必要となる。
WBOには田中恒成が、WBCにはジェシー・ロドリゲスがそれぞれタイトルを手にしているため、マルティネスはこの二人からベルトを奪う必要がある。
そして今回マルティネスが井岡に勝利したことでロドリゲスVS.マルティネスの無敗王者同士の統一戦が行われる機運が高まることになった。
エストラーダをKOしてWBCの王座に着いたロドリゲスと、アウェイの地で力強い戦いを見せたマルティネスではどちらが上なのか、これは恐らくスーパーフライ級の天下を分ける戦いとなってくるだろう思われる。
井岡のスタイルを潰して主導権を奪ったマルティネス
今回の戦いでは井岡のスタイルを潰して彼を取り込んでしまったマルティネスが終始、主導権を握る展開となった。
マルティネスはボディを効かされながらも、それに対処しながら戦える引き出しの広さを見せ、ファイトスタイルに幅を持たせながら戦うことが出来る対応能力の高さが光るような試合展開を見せていた。
一方の井岡は的確なヒットと作りの上手さ、そしてディフェンス技術の高さでこれまで優位を確保してきており、手数の少なさも的確な攻撃でカバーしていたので、結果的に全体を通して相手をコントロールする流れを作ることが出来ていたのだが、今回の相手はその仕組みを崩し、井岡のスタイルを潰すことに成功している。
手数・パワー・スタミナで上回っていたうえに、井岡が体勢を整える前に攻撃を仕掛けることで、井岡の丁寧なボクシングを展開させることなく一方的に攻撃する流れを敷いていたマルティネス。
加えて、井岡の脅威となる武器がボディへの攻撃だけだと分かると、アウトボクシングでポイントをキープしていく動きや、打ち下ろしの右などを返してポイントが流れないようにする工夫も上手く、効かされながらも井岡に流れが行かないようにする巧みさが光っていた。
なので全体的にマルティネスの方が出来ることの幅が広い印象で、逆に井岡は自身のスタイルが枷となって状況を打開するための選択肢が狭まってしまっているように見えた。
変化を付けて相手を困らせるような工夫や、揺さぶるための手段を用いて翻弄することが出来れば相手を自分の流れに取り込んで、自身の強みを押し付ける展開に持ち込むことが出来たかも知れない。
しかし、強い形を持っていた井岡が別角度からのアプローチを仕掛けることは難しく、多彩なマルティネスに対して一本槍で攻撃を仕掛けていくような状況となってしまった結果、後半にはもうマルティネスに見切られていたように見えた。
だからマルティネスはあれだけボディを効かされながらも12Rを戦い抜き、且つポイントをキープしていくことが出来たのではないかと思う。
これまで技術力の高さで勝利を重ねてきた井岡だが、新たな時代を築き始めている強者たちが設定する次のレベルは、それだけでは超えていけないほどの大きな壁となっているようだ。
なので今後スーパーフライ級で王座を保持していくためには、フェルナンド・マルティネスやジェシー・ロドリゲスに匹敵する強度が求められることになる。
果たして今回の統一戦で書き替えられた勢力図はどのような形で収まっていくのか、WBOのベルトを守る田中恒成の今後の戦いにも注目が向けられる。