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[UFC] 5R観たかった試合
UFC294で行われたコ・メインのウスマンVS.チマエフの試合。
このミドル級の一戦は5分3Rで行われたが、これだけのファイターのぶつかり合いはどうしても5分5R観たいと思ってしまう。
このカードだけに限らず、メインではないが故に階級のトップランカー同士の対決が3Rで終わってしまうことはしばしばある。
ハイレベルで拮抗した実力者同士の対決は3Rでは測れない深さがあると思っているので、より多くの局面・展開が必要になるのではないかと思う。
もちろん上位同士の戦いでも思った以上の実力差があったり、KO/TKOによる早期決着になることもよくある。
ただ5Rは3Rの範囲も含んだ試合形式になるので、より高い可能性を引き出すポテンシャルがある。
3Rで行われる試合にもメリットはあると思うけれど、トップランカーやチャンピオンに近いレベルのファイター同士の対決に関してはメインに限らず5Rで行い、多くの要素が引き出された上で勝敗が決するのが望ましいのではないかと改めて感じた。
破壊的なコントロール
急遽のオファーに応え、一つ上の階級での参戦となったウスマンがどれくらいの負担を背負っていたのかは分からないが、ウェルター級であれだけのテイクダウンディフェンスを見せていたウスマンを力任せにコントロールしてしまったチマエフの破壊的なレスリングは驚異的だった。
あれを止められるファイターはUFCでも本当に限られた人だけなのではないかと思う。
ただ、元々ウェルターの中でも大きかったチマエフがミドルにフィットする肉体で臨めたことで単純に力の出力も上がっていたのではないかとも思うので、これまで以上にパワーがあったというところもあっただろう。
それに加えてウスマンが本調子ではなかったという要素も相まって、あれだけの状況が生まれた可能性もあるが、同じ条件でもウスマン相手にあれだけのことが出来るファイターはそういないはずだ。
鉄壁・難攻不落の王者としてウェルターの王座に君臨していた頃のウスマンからは想像もつかないような抑えられ方をされてしまった上に、1Rを丸々奪われたウスマンはスタートを完全に挫かれていた。
しかも遠ざかっている勝ちを手繰り寄せようとしている状況で。
チマエフはウスマンを挫くにはどこを切り落とせば良いのかを正確に把握し、それを遂行するために全力を注いでウスマンの可能性を奪うことに成功していた。
しかし、連敗中とは言えウスマンは世界最高のファイターの一人。
チマエフ相手に長い1ラウンドを凌ぎ切り、自分のターンを手繰り寄せるところまで辿り着く。
スタンドの打撃の「上手さ」では上をいくウスマンは消耗したチマエフからポイントを取り返し始めていた。
ただやはりウスマンはこの試合どこか動きの悪さがあり、タックルに対する反応や切るための処理に力強さがないように感じられる場面が多かった。
また3R目ではウスマンの消耗も見られるようになり、チマエフを苦しめるチャンスで寄せ切れない場面も見られた。
そんな流れの中でもウスマンが着実にチマエフを苦しませる展開を作り始めていたが、3Rの時間は短く試合は終了してしまう。
結果は一者ドローの2-0でチマエフの判定勝ち。
1ラウンドを丸々奪った上でこの結果ということを考えると後からウスマンがどれだけ盛り返して行ったのかが窺える。
5Rで更なる深掘りを
今回この二人の戦いを見て、改めてこの二人の勝負は「ウェルター級」・「5分5R」で観てみたい思った。
もちろんお互いにちゃんとした準備期間を儲けた上で。
ウスマンがウェルター級でもチマエフには対応出来ないのか、それとも適正階級では錆び付かない技術があることを見せつけられるのか。
正直ウスマンがウェルター級王者の時は、彼を止めるにはそのピカイチなテイクダウンディフェンス技術を挫く必要があるだろうと思っていた。
ただそれは非常に難しいことなので、それが出来れば苦労しないというぐらいの選択肢でしかないとも思っていた。
その中で可能性があるとすればチマエフやラフモノフなのだろうと思っていたけれど、今回の戦いでチマエフはミドル級ではあるけれどレスリングでウスマンを崩すことに成功した。
チマエフはそれをウェルター級でも見せることが出来るのか。
スタミナとストライキングの技術(威力とは別)にやや不安のあるチマエフがウェルター級で5分5Rの中ウスマンと対峙した場合はどうなるのか。
カマル・ウスマンとカムザット・チマエフの戦いは互いにランキングを持つウェルター級こそが本番となるのではないかと思う。
準備期間を確保した上でウェルター級5分5Rの戦いを観てみたい。
そのためにはウェルター級王座に絡む二人の流れが噛み合う必要もあるのだろうと思う。