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[UFN249]注目試合と感想(3試合分)
①プレストン・パーソンズVS.ジャコビー・スミス
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フィニッシュ率の非常に高い無敗のニューフェイスが華々しくデビューを飾った。
レスリングベースでありながら、打撃スキルが高く、打ち分けやスピードもあり、ストライキングの勝負で十分に脅威を与えることが出来るスミスは、その能力の高さを披露して見せた。
今回は打撃で圧倒したため、本来の武器であるレスリングは使用されなかったが、そこにレスリングの技術が加わってくるとなると、かなり支配的なパフォーマンスが展開されることが予想できる。
実際にパウンドアウトによるフィニッシュも複数あるので、ストライキングとグラップリングの両方で強さを持ったファイターであることはすでに証明されていると言っていいだろう。
またキレのある肉体を持っていることも一目瞭然で、スピードと反応の良さを生み出す肉体的な強さも兼ね備えているように感じた。
現時点ですでに穴の少なさを感じさせるスミスはウェルター級に新たな動きをもたらすファイターになってくるに違いない。
次戦が待ち遠しく感じるくらいに圧倒的なパフォーマンスを見せたジャコビー・スミスのハイスペックぶりに驚かされた一戦だった。
②クリスチャン・ロドリゲスVS.オースティン・バシ
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期待のプロスペクトであるバシとプロスペクトキラーであるロドリゲスがぶつかった一戦。
ロザスJrとの戦いでもそうだったが、ロドリゲスはプロスペクトの壁となって期待の若手の前に立ちはだかり、優れた対応能力をもって洗礼を浴びさせる役割を度々担っている。
相手の強みへの対処に優れているロドリゲスは、まだ自分の武器に広がりを持たない若手との相性が非常に良く、その一本槍を攻略しながら至らない部分を指摘し、最終的に勝ち切ることが出来る造詣の深さを持っている。
それは今回の一戦でも発揮され、ドバリシビリを彷彿とさせるようなレスリングとスタミナで果敢に攻めるバシの仕掛けを悉く挫いたロドリゲスは、ストライキング勝負でバシをリードし、より多くのダメージを与えることに成功した。
その結果、無敗のプロスペクトはUFCデビュー戦で初黒星を喫し、苦いスタートを切ることになった。
ロドリゲスの対応能力は改めて見事だったが、ここまで無敗であっただけあってバシに備わっていた武器も素晴らしく、今後の成長次第では止めることが難しいファイターになってくることを予感させる内容になっていたと感じている。
あれだけ繰り返しレスリングの展開を作り、アクションを続けていたバシだったが、試合後の息の落ち着き具合を見ると、スタミナは本当に「無尽蔵」という言葉が相応しいくらいのものを持っているのだろう。
そういう意味でもバシは優れた能力と伸び代を持ったファイターになっていると思うので、今後の活躍に期待したい。
③クリス・カーティスVS.ロマン・コピィロフ
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ハイレベルな打撃戦が繰り広げられたこの一戦は互いの上手さが光ったが、MMAをやることを忘れなかったコピィロフがリードを掴み、劇的なフィニッシュにまで結びつけた。
ボクシングの上手さとディフェンス能力という部分でカーティスは優れていたが、一発の威力や打ち分けという部分ではコピィロフに劣っており、狭い範囲で僅かにリードすることしか出来ていなかったように見えた。
お互いにボクシングを展開し続けた一戦ではあったが、コピィロフは要所でローキックなどを織り交ぜてより広い選択肢で迫るオフェンス展開を見せていた。
またコピィロフはスタミナに厳しさを感じるとタックルを仕掛ける判断も下しており、ボクシング一辺倒のカーティスに対してMMAでしっかりと対抗する冷静さも見せている。
これがボクシングの試合であれば、場合によってはカーティスが勝利を収める結果になっていたかもしれないが、MMAの試合という前提で見るとカーティスはあまりにも攻撃の選択肢が少なすぎたと感じる。
そこに広がりがあればコピィロフをもっと苦しめることも出来ていたであろうし、試合の結果を変えるような内容に繋がっていた可能性もある。
そういう意味ではカーティスは惜しい戦い方をしてしまったのではないかと思う。
今回コピィロフは自身の武器の強力さを改めて示したが、スタミナが切れてくる場面でグラップリングを仕掛けられながらでも、その強みを活かし続けることが出来るのかどうか。
より上のポジションを確保していくためには、その辺りが大きなポイントになってくるのではないかと感じた。