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[UFC312]同じ轍を踏む挑戦者

UFCミドル級王者ドリカス・デュ・プレシと挑戦者ショーン・ストリックランドの再戦は前回ほどの盛り上がりもなく、ちょっと激しめなスパーリングのような内容になってしまった。

ナンバーシリーズのメインイベントにしては見応えもなく、ウェイトのあるミドル級の試合にしては迫力に欠ける内容となってしまったのは何故なのか。

それはストリックランドの「変化の無さ」「武器の少なさ」が試合を単純化させてしまった所為なのではないかと思う。

前回の戦いではストリックランドのジャブがデュ・プレシを苦しめることが出来ていたので、結果的に接戦へと発展するに至ったが、それでもストリックランドは僅かにデュ・プレシに及ばなかった。

なのに何故か今回の再戦でもストリックランドは同じ戦法でデュ・プレシとのタイトルマッチに臨んでしまった。

当然のことではあるが、UFCの王者に同じ手が二度も通用するはずがなく、前回の試合から学び改善されたデュ・プレシはストリックランドを攻略するための策を講じ、ジャブの被弾を減らすことに成功すると、手数とアグレッシブさでリードを広げていった。

なので試合全体を振り返ると、同じ手が通用していないのにそれを繰り返す挑戦者と、対策済みの攻撃を処理しながら手数でプレッシャーを押し除ける王者の攻防が単調に繰り返されるだけの状態となってしまっており、結果として勝負に熱が帯びることのない退屈なタイトルマッチが繰り広げられることになってしまった。

ストリックランドの引き出しの幅


©︎Getty Images / Getty Images Sport | Darrian Traynor

また、ストリックランドには試合を作っていくための効果的な武器が「ジャブ」しかなく、その限られた武器で対策を講じる王者を崩していこうとしていた為、終始攻撃の仕掛けに可能性が感じられないところがあった。

それも退屈さを生んだ一つの原因になっていたと感じる。

ストリックランドが得意とする「プレッシャーで相手を追い詰めてボクシングでダメージを与えていくシンプルな戦法」は、それ故の強さを持っていると感じるが、対策されてしまったらほとんど機能しなくなってしまう弱みもある。

自身のファイトスタイルの欠陥を突かれても変化を見せられなかったストリックランドの引き出しの狭さは致命的で、タフなMMAを展開できるアップデートされた王者デュ・プレシに及ばないのは当然のことだった。

加えてストリックランドは最終的に打撃勝負でもデュ・プレシに先手を取られてしまい、顔面に大きなダメージを与えられてしまっている。

デュ・プレシの王座を奪うのは誰か?


©︎Getty Images / Getty Images Sport | Darrian Traynor

そのようにして最後までストリックランドに主導権を与えない動きを取り、手数とアグレッシブさでプレッシャーを跳ね除け続けたデュ・プレシは運動量でも違いを見せて、見事にミドル級の王座を防衛して見せた。

その一方でストリックランドは新たな変化をほとんど示すことが出来ないまま敗戦してしまったので、デュ・プレシから新たな情報を引き出すこともほとんど出来ず仕舞いとなった。

そういう意味でこのタイトルマッチは後続に対して「新たな価値」を生み出すことが出来なかった試合となったのではないかと思う。

デュ・プレシの魅力や強さを引き出し、タイトルマッチの価値を高めてくれるファイターは他にも沢山いると思うので、ストリックランドではない選択肢で王座を競うミドル級を見てみたいと思う。

イマボフ・チマエフ・ボハーリョなど可能性を感じる選手はランキング内に複数いる。

連勝を継続している王者デュ・プレシの対戦相手はそういった可能性のあるファイターが務めるとより一層面白くなってくるのではないかと思う。

果たしてミドル級の強豪ランカーは、UFCデビューから勝ち続けている王者デュ・プレシを止めることは出来るのか。

新たな挑戦者が現れることになるであろうミドル級はここから更に面白みを増していくことになるだろう。

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