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ヘビー級No.1はオレクサンドル・ウシクに

現在のPFPランキング1位の座に着いている現ヘビー級3団体統一王者のオレクサンドル・ウシクはタイソン・フューリーとの再戦を制してヘビー級No.1ボクサーであることを改めて証明した。

ヘビー級の4団体統一戦でウシクは初めてフューリーと対戦し、体格で勝るフューリーをあわやKOというところまで追い込む活躍を見せ、自身の実力を世界に示したウシクは史上初のヘビー級4団体統一王者に輝いた。


Photo By AP

ウシクはアンソニー・ジョシュアに2度勝利を収め、ダニエル・デュボアをTKOで下し、最終的にはあのタイソン・フューリーにも2度の勝利を収めることになった。

こうしてヘビー級の中でチャンピオンレベルに位置しているボクサーを軒並み倒し、再戦もしっかりと制して来たウシクは間違いなく現ヘビー級No.1のボクサーだと言える。

また、クルーザー級でも4団体を統一しているウシクはクロフォードや井上と同じく2階級で4団体統一を果たしている選手でもあるので、それも踏まえて考えるとウシクは現在のボクシング界のキングと言ってもいいのかもしれない。

長い射程距離の攻略


©︎AFP

ヘビー級の中では体格やパワーでやや劣りながらも、その卓越した技術でリードを奪い、強豪たちに対しても差を付ける内容を見せてきた。

今回のフューリーとの再戦でもそれは変わらなかった。

ウシクは序盤のラウンドではフューリーの長いジャブに手こずっていたが、徐々にそれにも反応するようになり、手数とコンビネーションでポイントを稼ぐラウンドを築き上げていくようになる。

その中でポイントになっていたと感じたのは決して「受け身に回らない」ということ。

ウシクは試合を通して「距離を確保できる長いジャブ」に対する効果的なアクションを取り続けていた。

あれだけ長いジャブを放たれ続けたら普通は踏み込めなくなってしまったり、後手に回って退がらされる展開を作られてしまったりするだろう。

しかしそこで止まったり退いたりしてしまうと、あっという間にフューリーがペースを握る展開となってしまうので、ウシクは前に出て懐へと入っていき、戦況を切り開いていく必要があった。

しかもただ闇雲に前へ出るのではなく、効果的な攻撃を仕掛けることでその状況を作り出していかなければならない。

これは非常に難しいことであり、チャンピオンクラスのボクサーであってもそう簡単にはいかないと思われる。

そんな難易度の高い作業をウシクは持ち前の技術力を活かすことで、しっかりとこなして見せた。

ウシクはジャブを見切って外した後に手を返したり、絶妙なタイミングで飛び込んでフューリーの懐へと入り、自身が有利となる距離を作り出していくことで、攻撃のチャンスを作りつつフューリーの距離を崩していくことに成功していた。

退がって受けずに前に出てチャンスを作る、そうすることでウシクはフューリーの長い射程距離を攻略し、自身が有利となる状況を要所で作り出していたと感じる。

コンビネーションと手数


©︎ロイター

またウシクは攻撃を仕掛ける際にコンビネーションを多用しており、単発で終わらせることなくしっかりと手数を出して効果的なオフェンスを見せていた。

そういった部分も、拮抗した戦いの中でリードを掴んでいくことに繋がっていく強かなポイントになっていたと感じる。

攻撃の動線を築いてチャンスを作り、攻めに出る時はしっかりと手数を出してダメージとポイントを稼ぐ。

これは明確な差が付き辛い試合展開の中でも、違いを生み出すための大きな要素として作用していたのではないかと思う。

違いを生み出す技術力


©︎Getty Images

体格で劣りながらも技術を活かすことで攻略するための手段を実行し、それを遂行することで相手からリードを奪っていくウシクは、やはり世界トップレベルの総合力を持っていると言える。

恵まれた体格を持つウシクはパワー・スタミナ・スピードなどで非常に優れているが、ヘビー級の中ではそれらの項目で劣ることもある。

しかしこれまでの結果からも分かるように、「技術力」という部分ではヘビー級においても他のボクサーを凌駕していたようだ。

その結果、ウシクは体格で劣るヘビー級の中でも総合的な能力では勝ることになり、他のボクサーを出し抜けるだけの違いを生み出していくことが可能となった。

今回の勝利でウシクはヘビー級でも目ぼしい相手を欠く状態となってしまったが、スケジュールの都合上返上することになったIBFのベルトをデュボアから回収し、再び4団体を統一する形となったら期待したいのはライトヘビー級の4団体統一王者であるアルツール・ベテルビエフとの対戦だ。


©︎Getty Images

もしもこれが実現することになれば、この戦いもボクシングの歴史を動かすような歴史的な一戦となってくるので、非常に面白いのではないかと思う。

昔のこと過ぎてあまり参考にはならないが、一応ウシクは2011年のボクシング世界選手権の決勝でベテルビエフと対戦し、勝利を収めている。

無敗同士の統一王者でパワーとテクニックのぶつかり合いという構図も興味を引く組み合わせになっていると感じるので、どこかでこの二人の試合が実現することを期待したい。

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