[UFC305] ドリカス・デュ・プレシ、衝撃の一本勝ちで王座発防衛に成功!
ミドル級タイトルマッチ
○ドリカス・デュ・プレシ(C)VS.●イズラエル・アデサニヤ(2)
※デュ・プレシの4R一本勝ち(リアネイキッドチョーク)
1Rからまともに打撃をヒットさせられずにいたデュ・プレシはテイクダウンとバックテイクでRNCのチャンスを作るが、ほとんどの場面でアデサニヤにペースを握られる展開となった。
アデサニヤは距離を掴み、的確に打撃をヒットさせ、特にボディへの有効打が多く、確実にデュ・プレシにダメージを蓄積させていく。
ボディのダメージで機動力を失っていたデュ・プレシだったが、3R以降はアデサニヤもスタミナの消耗から反応速度とステップの鈍さがかなり目立ち始めようになってしまう。
それでもスタンド勝負となるとアデサニヤの方が強くなる展開が続き、デュ・プレシの攻撃はほとんど躱されてしまうような状況だった。
そのようにアデサニヤが比較的有利な状況が続いたまま4Rの終盤に入ったこともあり、このまま5Rまで縺れ込み、上手いことアデサニヤが逃げ切る展開となるかと思っていた矢先のことだった。
4R終盤に持ち前のガッツで前に出るデュ・プレシが、ケージ際に追い込んだアデサニヤにパンチを振りながら突っ込むと、アデサニヤは鈍い反応ながらなんとか避けることに成功するが、その対処は非常におざなりで足は動かないまま顔を背けるだけの処理となった。
そんなアデサニヤはデュ・プレシの追撃を受ける形となり、ついにはデュ・プレシに背中を向ける状態となってしまう。
この対処がアデサニヤにとって致命的なものとなり、バックを取ったデュ・プレシはそのままヘロヘロのアデサニヤをテイクダウンし、首に腕を巻きつけるとそのまま締め上げて身体を伸ばし苦悶のアデサニヤからタップを奪い、見事勝利したデュ・プレシは王座防衛することに成功した。
ミドル級、新時代の王
これで王座初防衛に成功したデュ・プレシはUFC負け無しのまま並いる強豪を倒し、ミドル級の新時代を担う存在となった。
もしデュ・プレシが今回アデサニヤにあのまま負けていたとしたら、デュ・プレシは特別タフなファイターという印象に止まっていたかもしれないが、またも逆転勝ちのような形で勝利を収めた為、タフでガッツがあることに加えて逆転勝ち出来る「負けない強さ」があるというイメージが幻想となって植え付けられることになったのではないかと思う。
これからの挑戦者たちは、そんな最後まで勝機を失わないデュ・プレシの粘り強さを振り切る力強さが求められることになるだろう。
そしてデュ・プレシは単純に総合力と身体能力が高いので、多少の不利要素を覆すパワー(気持ち的にも物理的にも)があるので、チャレンジャーに緊張感を与える難攻不落のイメージをもたらすことが出来る王者になっていくように感じる。
衰えを感じる元王者のアデサニヤ
比較的有利に試合を進め、ハイプレッシャーも無く、自分のペースを作ることが出来る環境があったにも関わらず、急速なスタミナの低下とそれに伴う反応速度とステップワークの劣化があったところを見ると、少なからずアデサニヤにも衰えが来ていると感じてしまう。
ケージ際からの脱出も以前はもっと華麗でスマートにこなしていたが、今は詰められると大分苦労しているように見え、打撃をもらった後の対処も非常に危なっかしいところがある。
タックルに対する反応や対処も以前の方がキレがあったように感じられるので、UFCで輝かしい実績を築いたアデサニヤも「年齢」と「戦い続けてきた影響」を受ける状況になってきたということなのだろう。
そういった衰えの根本にはやはり「スタミナの消耗に伴うパフォーマンスの低下」があり、これが持っている技術や能力を最大限発揮する機会を失わせており、コンディションが良好であっても、技術量が豊富であっても、クオリティを保って戦い抜くということが難しくなってしまう状況を生み出している。
そのため、どんな状況であっても自信を失わないデュ・プレシは5Rマッチでも戦っていける性能を持っているが、今のアデサニヤには5Rマッチに大きな不安がある。
なので、今回に仮に勝っていたとしても防衛を続けることは厳しかったのではないかと思う。
今回あっさりと一本勝ちを許してしまった力無いところにもそんな陰りのような変化が感じられた。
しかし、スタンドの攻防における技術はやはり世界トップクラスなので、この先勝率が下がっていくことになったとしても、現役を続行するアデサニヤが華々しい勝利を挙げる瞬間をまた見てみたいと思う。
次なる挑戦者は誰か?
ショーン・ストリックランド、イズラエル・アデサニヤをクリアしたデュ・プレシが次に迎える挑戦者は一体誰になるのだろうか。
ストリックランドとの再戦か、はたまた別の挑戦者となるのか。
個人的にストリックランドはあのシンプルなファイトスタイルが強さを生み出していると感じているため、故に大きな変化や引き出しが見られるファイターではないと思っているので、ストリックランドとの再戦というよりは他のファイターとの戦いを見てみたい気がしてしまう。
今のミドル級のランキングを見て面白そうだと感じるのは、ハムザト・チマエフそしてロバート・ウィテカー。
そこにもう一人付け加えるとしたらカイオ・ボハーリョ。
最初の2名は王座戦の可能性が十分あるが、ボハーリョもラスベガス96でキャノニアに勝つことが出来れば、その可能性が十分出てくることになるだろう。
時代の流れという見えない力が影響しているように感じられるほどの衝撃的な一本勝利で王座を防衛し、新時代を切り開いたデュ・プレシは今回の勝利でUFC無傷の8連勝となった。
今後そこに食らい付いていく「新たな力」や「壁を超えて進化した力」はその「新時代の王」を超えていくことが出来るのか、今後のミドル級にも引き続き大きな注目が向けられる。
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