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[RIZIN]エンタメ枠の存在
RIZINは格闘技のイベントにお祭り要素をプラスすることで話題性と注目を集め、興行を盛り上げるためのきっかけとして活用してきた。
それは「戦い」や「闘争」ということに対して比較的情熱や興味を抱きにくい日本の風土の中で、格闘技を盛り上げていくためには必要な要素だったのかも知れない。
恐らく現在の状況では「PRIDE」や「K-1」全盛の時代のように純粋な格闘技要素だけで興行を盛り上げ、成功させていくのは難しいのだろう。
とは言え、純粋に格闘技が好きな人たちにとってそのエンタメ要素は「邪魔」以外の何ものでもない存在となっている可能性があり、土台となる層が興味を失う原因の一つとなっていることも考えられる。
そういった状況を鑑みると、RIZINが活用する「エンタメ枠」は「劇薬」として作用していると言ってもいいのかも知れない。
瞬間的な効果は大きいが、その分反動もでかい。
格闘技というジャンルを純粋に楽しむという環境を壊すことで利を得ているため、盛り上がりを生み出すことは出来るけれど、純粋な格闘技ファンは冷めてしまう。
これは日本の格闘技界の発達を阻害することで、その場の利益を得ることに成功しているとも言えるかも知れない。
話題性と知名度
格闘技のイベントにそういったエンタメ枠を設けなくてはならない理由として、「話題性」と「知名度」が必要というところがあると思う。
だからRIZINは団体で人気の出た選手をあの手この手で繰り返し起用している。
もしくは全盛期の過ぎた海外の人気選手や問題を起こした海外の人気選手たちの売ビジネスに手を貸すことで、その恩恵を受けている。
そうまでして「花」を求めなくてはならない状況に陥っている理由の一つとして、ファイターの育成や売り出し方の問題があるのではないかと思う。
RIZINはそこに参戦していくための流れが曖昧なところがあり、どういった基準で選考されているのかもイマイチよく分からないところがある。
判断基準が不透明だと統一感がなく、出場しているファイターの実力に対する説得力も曖昧になってしまう。
また場合によっては格闘技の実力よりもSNSでの知名度が優先されることもあるので、敷居が低く見えてしまうこともある。
その結果、誰に求められているのかもよく分からない「エンタメ枠」が生まれてしまったりする。
これからを担うファイターたちを育成し売り出す流れを生み出して、「知名度」や「話題性」が得られる環境を作っていくのではなく、手っ取り早い手段へと流れてしまっているせいで、業界の根本的な部分の成長が促されず、変な偏りを生み出してしまっているのではないだろうか。
求められる根本的な育成
RIZINに参戦するまでの流れにちゃんとした動線があり、参戦するまでのストーリーを発信していく造りがあれば、純粋な格闘技要素を活かしながら知名度を確保していくことも出来るはずだ。
そうすれば見当違いな色物で目引くことをしなくても、選手の人気や知名度を拡大させながらRIZINのイベントを盛り上げていくことも可能になるのではないだろうか。
UFCの下部組織やコンテンダーシリーズのように、後進育成や才能発掘の舞台をコンテンツ化して、そこにRIZINの人気選手を絡めていく。
それが出来れば業界の地力を底上げしながら、盛り上がりと興味を焚き付けていくことも可能となるかも知れない。
業界が格闘技というジャンルを育み、ファイターの成長と競争を促しながらモチベーションを刺激して、魅力や人気を切り出していく。
それを行うことが出来れば日本の格闘技界はより自立した存在となって、軸の通った姿勢を示していくことが出来るようになるのかも知れない。
最後に
エンタメ要素の取り入れ自体に問題があるのではなく、業界の強化という根本的な部分を無視したまま、他の業界から得られるパワーに依存し、地力を育む環境が形成されていない状況が問題なのではないかと感じる。
過ぎたエンタメ要素の存在はそういった問題を表面化させる典型的な例となっているのではないかと思う。