[UFC311]波乱とフィニッシュが入り混じった大会
イスラム・マハチェフがヘナート・モイカノを一本で下して王座の防衛に成功したUFC311は、変化と動きのある大会となった。
UFC311:個人的アワード
ベストバウト
(2)イリー・プロハースカVS.(3)ジャマール・ヒル
終始高いレベルを見せ続けていた一戦。
プロハースカの打撃に対する反応の良さが光っていた中で、ダウンを奪われたヒルも常に逆転の一手を狙い、劣勢の中でも危険を感じさせる攻撃を出し続けた。
そのヒリつく攻防の中で上手を取ったのはプロハースカ。
ヒルにペースを握られる展開もあり、雑な対応がヒヤリとさせる場面もあったが、「打撃に対する反応」と「攻撃リズムに変化をつけて有効打を生み出すための工夫」を行なっていたプロハースカはヒルの粘りと意地を打ち砕くことに成功した。
良い打撃を当てられても打ち合いで退かない気持ちの強さを見せていたヒルも、5R目のダメージには耐えられず、プロハースカに攻撃をまとめられてしまい、レフェリーストップを呼び込まれてしまった。
この一戦はUFCライトヘビー級のレベルの高さを物語るような、トップファイター同士の戦いになっていたと感じる。
ただ、そのトップ層がレベルの高い戦いを見せれば見せるほど、アレックス・ペレイラの打撃のポテンシャルとその実力に対する恐ろしさというものが如実に浮かび上がってくることになる。
そんな怪物に挑戦するのは一体誰になるのか、ライトヘビー級のタイトル戦線の今後が気になるところ。
MVP
バンタム級王者:メラブ・ドバリシビリ
正直な話、ドバリシビリが王座を防衛出来るとは思ってもいなかった。
間違いなくウマル・ヌルマゴメドフが王座を獲得することになるだろうと思っていた。
しかし、屈強なジョージアの戦士は驚異的なスタミナでヌルマゴメドフを削り、その無敗の挑戦者を3-0の判定で下すことに成功している。
ドバリシビリのプレッシャーとスタミナはヌルマゴメドフにも効果的に作用し、5Rマッチの後半ではドバリシビリが主導権を握る流れとなった。
持っている武器や対応能力ではヌルマゴメドフの方が上だと感じたが、多くのファイターが下がってしまうところで下がらず、手を緩めてしまうところで諦めず、寧ろさらに前進していった。
この不屈の姿勢とレスリング能力の高さはドバリシビリの強みとなっているスタミナをより効果的に活かしていく流れを生み、ヌルマゴメドフを退けることが出来る力強い武器へと変貌させていくことになった。
ドバリシビリは今回の戦いでヌルマゴメドフのようなMMAエリートを退けるためには、弱体化させていくことが必須になるということを示したのではないかと思う。
ただそれを遂行するための難易度は依然として高いままだが、一つの対抗策を表すような活躍を見せた防衛戦になっていたのではないかと思う。
勇敢でタフな戦い方を武器としてヌルマゴメドフまで退けることが出来たドバリシビリは、このバンタム級の真の王者としてベルトの価値を高めることに成功している。
これでほとんどのトップファイターを倒すことに成功したドバリシビリだが、このまま王座を堅守する存在となることが出来るのか。
このバンタム級タイトルマッチは今大会一番の衝撃を生み出した戦いになっていたと感じる。
無敗が崩れた日
先ほど触れたヌルマゴメドフもそうだが、今回のUFC311ではパーフェクトレコード保持者の記録が立て続けに途絶えている。
中村倫也
あらゆる面で後手に回り、手数も少なく、良いところをほとんど出せないまま敗戦した中村は、最悪の形で連勝を途切れさせることになってしまった。
ガフロフはとにかく中村のレスリングを警戒していたので、付け入るには打撃を仕掛けて距離を潰し、カウンターなどの返しに対してタックルを合わせるような動きが必要になったのではないかと思うが、中村は中々攻撃を仕掛けることが出来ず、ガフロフに先手を譲り続けてしまった。
この戦いに関してはガフロフの強さが目立ったというよりも、中村倫也の守りに入っているようなスタイルや対応の問題が浮き彫りとなった試合になっていたのではないかと思う。
ガフロフくらいのレベルにある選手を圧倒できるくらいの実力がなければ、UFCのバンタム級で上を目指していくことは難しくなってくるだろう。
ペイトン・タルボット
グラップリング巧者の仕掛けを掻い潜ることが出来ず、経験値の差を見せつけられるような苦しい敗戦を喫することとなった。
タルボットにはテイクダウンに対する反応や倒されても立ち上がる技術が備わっていると感じていたが、更なる対処能力の向上が必要だったこと今回の試合で明らかとなった。
スタンドの打撃は相変わらず強く、当て感も良かったので、グラップリングの攻防レベルが強化されることになれば、上を目指せるだけのスキルが整ってくることになるのではないかと思う。
ただその苦手箇所の改善が中々上手くいかないストライカーもいたりするので、タルボットがどちらのタイプなのかによって、今後の流れは変わってくることになるのかもしれない。
期待のルーキーがまさかの敗戦を喫することになってしまったが、ここから更なる成長を遂げることが出来るのかどうか、今後に期待。
最後に
今回のUFC311は他にもジャイルトン・アウメイダが打撃で勝利したり、アザマト・ベコエフが衝撃的なUFCデビューを飾ったりと、劇的なフィニッシュも多く生み出される動きのある大会となっていた。
なので盛り上がりのある面白い内容になっていたと感じるが、やはり消滅した2カードの結果も気になるところではあるので、どこかでこのカードが再び組まれることを期待したい。
特に今回怪我でメインイベントを欠場したアルマン・ツァルキヤンには、状態を戻した上で再びタイトルマッチへと臨めるように頑張ってもらいたい。
また、これは大会の内容とは直接関係はないけれど、肝心なところで映像が乱れるようなことがなければ、もっとこの大会を楽しむことが出来ていたのではないかと思う。
今回のUFC311で一番残念だったのはその“回線”に関する問題だったように感じる。