[UFC293] アデサニヤ、王座防衛ならず
UFC293のメインイベントで行われたイズラエル・アデサニヤとショーン・ストリックランドの戦い。
アレックス・ペレイラからベルトを取り返したアデサニヤの防衛戦は終始攻め込まれる展開となり、取り戻したベルトを守ることは出来なかった。
●(C)イズラエル・アデサニヤVS.○(5)ショーン・ストリックランド
ストリックランドの5R判定勝利(3-0) ※新チャンピオン誕生
今回の試合内容はアデサニヤの時代の終わりを予感させるようなものだった。
もしかすると2度行われたペレイラとの戦いを見て、多くのファイターがアデサニヤに対する恐れや幻想を抱かなくなった影響もあるのかもしれない。
それに伴って、手を出さず蹴りを主体に距離を制するアデサニヤの綺麗な戦い方に対する苦手意識もなくなっていったのではないかと思う。
前戦のペレイラ戦もそうだったけれど、挑戦者側が全くアデサニヤの攻撃に脅威を感じていないため、余裕でプレッシャーを与えて距離を潰すことに成功してしまっている。
加えてストリックランドは極力手を出さずディフェンスに重点を置くことで、ペレイラがもらったようなカウンターを被弾するリスクも排除していた。
そのスタイルで迫るストリックランドをアデサニヤはまるで迎撃することが出来ず、チャンピオンとしては致命的な攻撃力の無さを露呈させていた。
これまでアデサニヤはそのストライキングスキルで勝利の山を築いてきただけに、ストライキングで力負けしてしまうとなると、今後の戦いはかなり厳しくなってくるのではないかと感じる。
見切られたしまったアデサニヤ
以前は勢いのあったストリックランドもペレイラに敗れてからはそれまでの勢いもなくなり、そのファイトスタイルが通用しなくなってきている感があった。
ランキングとしては5位で今回の試合まで2連勝と調子を戻しつつはあったけれど、ミドル級の中で脅威的な強さを感じさせる程の内容ではなかったように思う。
またストリックランドはアデサニヤに敗れたキャノニアにもスプリットの判定で敗れている。
そのストリックランドに今回アデサニヤは手も足も出ないような内容で負けてしまった。
もしかすると今のアデサニヤでは他のミドル級トップランカーを退けることも難しいかもしれない。
それくらいアデサニヤのケージ内での立ち回りと弱点は把握されてしまっているように感じる。
その弱点と攻略方法がペレイラの手によって浮き彫りにされたことで、アデサニヤの牙城はとても脆くなってしまった。
ストリックランドに容易く完封されてしまうほどに。
ラストスタイルベンダーは甦ることが出来るか
今回の大きな敗戦でアデサニヤはさらなる成長が求められることになるだろう。
KOを生み出せる強力なキックボクシングスキルを今一度呼び起こし、打ち合いでも負けない力強さを見せつける必要がある。
もしくはやはりMMAでの戦いなので、組み技による戦術展開の広がりを考えるか。
いずれにせよ、ここまで勝ち続けて来たところからさらなる成長を促すとなると、大きな変化が必要になるだろうと思われる。
それが実現出来なければ徐々にランキングを下げていくことになるかもしれない。
彼は再び失ってしまったベルトをもう一度奪い返すことが出来るだろうか。
新たなるミドル級
ミドル級を支配してきたカリスマ的存在のアデサニヤが陥落し、ドリカス・デュ・プレシよりも先にまさかのストリックランドが王座を獲得することで、一つの均衡が崩された。
新チャンピオンとなったストリックランドが王者としてどれくらいの間ミドル級を統治することが出来るのか。
これまでアデサニヤに敗れて来たファイター達もこれを機に再び王座獲得を狙うようになり、タイトル戦線へと復帰してくるだろう。
そうなった時にストリックランドはどれだけの挑戦者を退けることが出来るのだろうか。
ストリックランドがそのベルトに重みを宿すことが出来なければしばらくの間、ミドル級は騒がしくなるかもしれない。
そんなこれからを試されることになる新チャンピオンのストリックランドの首を狙うことになるであろうデュ・プレシ。
彼を退けてストリックランドはチャンピオンとしての力量を改めて世界に示すことが出来るのか。
新たなミドル級がどうなっていくのかというところに大きな注目が向けられる。