見出し画像

ポール・ヒューズ、ウスマン・ヌルマゴメドフ攻略に一歩届かず。

ライト級のベルトを掛けて行われたウスマン・ヌルマゴメドフ対ポール・ヒューズの一戦。

ポールは前戦でAJ・マッキーを敗るという番狂せを起こしており、挑戦者として面白い存在になると感じていたが、今回の防衛戦では予想以上の活躍をしたと感じている。

テイクダウンディフェンスとクリンチ際の打撃などでウスマンを削り、スタミナの余裕を失わせることでパフォーマンスを低下させていったポールは、自分の方に流れを引き寄せる戦い方が出来ており、王者を苦しめることに成功していた。

またポールの腰の強さはウスマンを相手にしてもしっかりと機能しており、タックルの仕掛けを何度も防ぐことで王者の選択肢を一つ削ることが出来ていたのは大きかったように感じる。

しかし、前回のシャブリーと同様に、ポールもウスマンの「長い射程」に苦戦しており、攻め時でも手を出していくことが出来ず、チャンスの場面でウスマンに落ち着くことが出来るだけの余裕を与えてしまっていた。

王者ヌルマゴメドフの強力な武器


©︎PFL

ウスマン・ヌルマゴメドフの強力な武器として考えられる「テイクダウン」「射程の長い攻撃」は、攻守に優れた状況を作り出すことが出来る要素として大きな役割を果たしている。

その中でポールは「テイクダウン」に対する処理は見事に行なっており、レスリングに対抗するというディフェンス面で必須となるスキルをしっかりと機能させていた。

しかし「射程の長い攻撃」への対処があと一歩足りず、オフェンス面で優位を築けるところまで試合を展開させることが出来なかった。

ウスマンはジョン・ジョーンズのように長い手足を活かして距離をコントロールし、自分が有利な状態を保つことが出来る強みがある。

そこを崩そうと無理に入っていけば、カウンターやタックルを合わせられる危険があるため、対戦相手はウスマンの距離で試合を行う時間が長くなってしまう傾向にある。

結果的にそこを警戒し続けたポールもチャンスの場面で一歩踏み込んでいくことが出来ず、その「長い射程」の呪縛から逃れることは出来ていなかった。

挑戦者ヒューズが王者に肉薄したポイント


©︎PFL

その一方で、被弾のリスクを徹底的に排除するウスマンは近い距離での打ち合いを避ける傾向にあり、距離を潰される状況になれば組み付いてグラップリングで相手をコントロールする方向へとシフトするが、ポールはここでウスマンの仕掛けを挫き、展開をリードする動きを見せていた。

特にボディへの攻撃は効果的に機能していたように感じる。

つまりこの試合でポールは「距離を潰した状態」ではウスマンをリードしており、そこに大きなチャンスがあったのではないかと思う。

タックルを切られたり、ボディへの被弾などによってウスマンのスタミナには消耗が見え始めていたので、詰めていくチャンスは後半にあったと感じるが、慎重な姿勢を崩せなかったポールはそこでも前半と同じリズムで試合を展開してしまった。

当然ポールもスタミナを消耗していたと思うので、キツイ状態ではあったのだろうと思う。

しかし、MMAのスーパーエリートであるヌルマゴメドフファミリーから勝利を得るにはそこでさらに頑張っていくことが必須となる。

メラブ・ドバリシビリがその必要性と重要性を身を持って示したように、ポールも後半にギアを上げて自分の距離で戦っていくことが出来れば、違う結果を生み出すことが出来ていたかもしれない。

それくらいの可能性を感じる流れを作り出していた場面もあったと感じるので、そういう意味ではポールにとって今回の一戦は「かなり惜しい戦い」になってしまったと感じている。

「僅かに許したテイクダウンに対する修正」「積極的なオフェンス展開の構築」などが向上すれば、ポールはさらに良いファイターとしてその可能性を見出していくことが出来るようになるのではないかと思う。

消耗を誘いオフェンスを展開するための有効な手段は?(考察)

自分の距離を潰されてやりづらい状況へと追い込まれることになれば、自然とスタミナの消耗は促進されることになるので、それだけで状況を厳しくさせることが出来るようになる。

つまり、ウスマンとの対戦であの鉄壁の距離を攻略していくことが出来れば、大きなアドバンテージを獲得していくことに繋がるのではないかと思う(高いレスリング力が備わっていることが前提となる)。

そのためにはどのようなアクションが有効になってくるのか。

考えられるのは「カーフ・関節蹴り・フェイント」そして「ケージに追い込んで距離を潰し、近距離の打ち合いで削っていく」というものになってくるのではないかと思う。

関節蹴りやカーフは今回の試合でポールが活用しており、ウスマンのリアクションに変化が見られる攻撃として機能していたように感じる。


©︎PFL

またその上で近距離の打ち合いを展開することが出来れば、懐の中で回転力を発揮し、より有利なポジションで打ち合いに持ち込むことが可能となるので、オフェンス面で重要となるダメージの部分でもリードしていくことが出来るのではないかと思う。

しかし、再戦となれば・・・


©︎PFL

今回の激闘は2人の再戦を期待する声を生むことになったが、課題が判明したポール対処方法を理解したウスマンとでは得られた情報の価値が違うと思うので、再びこの2人が戦うことになれば、恐らくより差の開いた内容になってくるのではないかと思う。

もしやるとしてもそれなりの時間を置かなければ、ポールが勝てる可能性は低くなってしまうだろう。

ウスマン・ヌルマゴメドフに同じ手は2度通用することはないと思うので、ポールが再びウスマンに挑むのであれば、大幅な成長が必要となってくる。

将来的にUFCに参戦する可能性が濃厚なウスマンを止められるものは現れるのか、今回良い線まで行ったポールに続くファイターが出てくることを期待したい。

総合値が高くグラップリング対応に優れたブラジリアンファイターや、ドバリシビリのようにガッツのあるスタミナお化けのトータルファイター、この辺りの選手が出てくれば可能性を感じることが出来る存在として数えることが出来るようになってくるのではないかと思う。

現状頭一つ抜けているウスマン・ヌルマゴメドフに対する包囲網が今後どのように展開されていくのか、その動きにも注目したい。

いいなと思ったら応援しよう!