王者メラブ・ドバリシビリに求められるオフェンスと変化。
この一戦でサンドヘイゲンはヌルマゴメドフに対するディフェンス対応のポイントを示していた。
ケージを背負わずタックルに慌てず最初の段階で対処を間違えないように丁寧に最善の対応を行う、これはウマル・ヌルマゴメドフの必勝パターンを挫くのに大きな働きを見せていたが、サンドヘイゲンはそこからさらに一歩踏み込んでいくことは出来ず、攻めの要素が足りない状態になってしまっていた。
ヌルマゴメドフが手を拱いているうちに攻めに転じ、新たなる一手を打つことで先手を取っていくことが出来なければ、本当の意味でディフェンスを機能させたことにはならないのではないかと思う。
だから結果的にこの一戦では後半に連れてサンドヘイゲンのディフェンス対応にもヌルマゴメドフが馴れていってしまい、落ち着きを取り戻したことで逆にサンドヘイゲンが変化を付けられる展開となっていってしまった。
ヌルマゴメドフが迷い、姿勢を整えている間に主導権を奪いにいくことが出来ず、ディフェンシブな姿勢に変化を付けられなかった結果、ヌルマゴメドフが主導権を握るのをただ待っているだけのような状態に陥っていたのではないか思う。
なのでやはりここで攻撃も合わせて機能させることが出来なければヌルマゴメドフに勝つことは出来ないので、UFCバンタム級王者のメラブ・ドバリシビリにはサンドヘイゲンが見せたディフェンスに加えて有効なオフェンスと変化を織り交ぜていくことが求められることになる。
ただそこで難しくなってくるのが「あと一歩踏み込む」ということ。
打撃をクリティカルにヒットさせるためのアクションをコンスタントに挟み、5Rを通してポイントでも優位に立つ状況を作るためにもこの動きは必須となってくるが、攻撃が届く距離はヌルマゴメドフのタックルの距離でもあるため、多くのファイターが入り込めず、もしくは無闇に突っ込んでタックルの餌食になってしまうか、多くの場合はそういった状況になっていると感じる。
サンドヘイゲンもその点で上手く試合作りが出来ておらず、ヌルマゴメドフを追い詰める動きはほとんど取れていなかったのではないかと思う。
あと一歩踏み込めば攻撃を届かせることが出来るのだが、それが出来ず中途半端に入り込むことで逆に打撃をもらってしまい、ヌルマゴメドフにポイントを奪われてしまうという悪循環に陥ってしまうこのパターンを、ドバリシビリは崩していくことが出来るのか。
そのためには広い選択肢を行使出来るだけの総合力と、発想力や想像力で出し抜くことが出来るようなファイトIQが必要となってくるだろう。
そこの勝負でリードしていけるだけの可能性を見せ、無敗のヌルマゴメドフをさらに掘り下げていくことが出来るような内容をドバリシビリが見せてくれることに期待したい。
爆発力がある分、冷静なヌルマゴメドフに「裏を描かれしまう恐れがある」というところが大きな懸念点はあるが、強みもそこにあるので、ドバリシビリがどういった選択を行っていくのかというところに注目が向けられる。
サンドヘイゲンが削り出した一つの可能性を活かして初防衛戦に新たな発見をもたらして欲しいと感じている。