[UFC] グラッソ、シェフチェンコからベルトを守る!
NOCHE UFCで行われたメインベントのアレクサ・グラッソVS.ヴァレンティーナ・シェフチェンコ2。
ダイレクトリマッチとなった今回の一戦で、以前まで絶対女王として君臨していたシェフチェンコは王座への返り咲きを狙っていた。
打撃の回転力、パワー、体幹などの面で優れた能力を備えているシェフチェンコはこれまで打撃面でも組み面でも力強い展開を見せ、あらゆる挑戦者を退けてきていた。
絶対女王の綻び
しかし、年月を積み重ねるにつれてその安定感にも翳りが見えて来ているところがある。
打撃のもらい方やスクランブルなど、際での勝負で上手を取れなくなっている場面が見受けられるようになっており、グラッソとの初戦でも良い流れを作っておきながら自身のイージーなミスをカバーすることが出来ずチョークを極められる結果となってしまっている。
堅牢な牙城に生まれた小さな綻びが絶対的にさえ見えた女王のバランスを徐々に崩していっていることが今回の試合で改めて分かった。
内容はどちらが勝ってもおかしくないような大接戦(ドロー防衛)ではあったけれど、かつてのシェフチェンコならそういった試合の鍵となる場面を確実に抑え、最終的には勝利を自分のものとしていたはずだ。
けれど今のシェフチェンコはそういった機会をグラッソに奪われる側に回ってしまっている。
そのチャンスを相手に与えてしまっているとも言えるだろう。
かつては見せなかった隙や脆さを見せるようになり、相手につけ込む余裕を与えてしまっているように感じた。
シェフチェンコは今回も勝敗を左右する最終ラウンドでバックテイクを許す非常に手痛いミスを犯してしまった。
何よりも、重要な防衛戦とダイレクトリマッチで同じようなミスを犯し、大切なチャンスを逸してしまうのなんて難攻不落だった頃のシェフチェンコではまず考えられないことだろう。
大接戦の結果とその影響
とは言え打撃の切れと正確さ、四つの状態からのテイクダウンなどは健在でグラッソを非常に苦しめていた。
きっとシェフチェンコが勝っていたと思う人も多くいるだろうと思う。
それくらい両者互いに一歩も譲らない激しいぶつかり合いだった。
ただ返り咲きを望みながらもベルトを掴む機会が遠のく結果になってしまったシェフチェンコにとって、今回の敗戦はこの先に影響を与えるものになってもおかしくない。
そういった敗戦から勢いや調子が乱れてしまい、思ったように復調できないファイターは多い。
特に多くの経験を積んだベテランのファイターはその難しさを抱えやすく、そこから栄光を掴むまでに復活するのは中々に厳しいものがある。
「ファイター」と「王者」
UFCに限らず格闘技というジャンルの中で闘うファイターたちは試合の結果一つでその先の運命が大きく変化する劇的な世界の中で生きている。
そのレベルや質が高くなればなるほどその勝敗が持つ意味は大きくなっていく。
あらゆる要素をそこへ昇華させながらトレーニングを積み続け、必ず訪れる二つの結果の内「勝利」という一つを手に入れることが出来る勇敢さを示すからこそ勝利することはあからさまに特別なことなのだろうと思う。
そこに「王者」の意味をもたらすベルトが加われば、その意味はさらに大きく重くなる。
そう考えるとタイトルマッチというものが如何に重い意味を持つ戦いなのか窺い知ることが出来る。
そんな厳しい試練を超えることが出来た者だけが得ることが出来るチャンピオンベルトがどれだけ特別なものかは想像するまでもない。
そんな偉業をシェフチェンコはこれまで幾度も達成してきた。
移ろう時代
しかしここで新たな時代を運ぶアレクサ・グラッソというメキシコのファイターに出会うことで、シェフチェンコはこれまでにない状況に身を置くことになった。
“バレット”の異名を持つキルギスの華麗な女王はその座を追われて尚高みを目指して挑戦を続けるのか。
メキシコ独立記念日の夜に特別なベルトを手にしたアレクサ・グラッソはシェフチェンコという大きな壁を超えた。
そんな彼女は次に誰を迎え撃つのか。
ヌネスが去り、シェフチェンコがベルトを失い、時代が移ろっていく女子の階級はこれから一体どんな展望を見せていくのだろうか。
新たな時代が築かれ始め、転換点となる今のUFCには改めて注目が向けられる。
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