[ONE]和田竜光、ストロー級黒星発進となる
フライ級からストロー級に転向した和田竜光がその初戦を迎えたが、ウズベキスタンの強豪を超えることが出来ず、黒星発進となった。
ウズベキスタン出身のサンジャル・ザキロフは無敗を継続中の強豪であり、和田同様にストロー級の中ではかなりのサイズを持った選手になっている。
今回の和田の敗戦にはその体格も大きく影響していたのではないかと思う。
敗因と思われる要素
体格差
和田もザキロフも身長は同じ170cmとなっているが、体の厚みや骨格はザキロフの方が優れているのは一目瞭然であり、減量から戻る体重幅もザキロフの方が大きいのだろうと思う。
また、和田はリーチのある打撃の処理に苦しんでおり、「ストロー級の初戦」かつ「体格で劣る状況」という馴れない要素が合わさってしまったところも試合を難しくした一つの要因だったのではないかと思われる。
手数とボクシング技術
リーチのあるザキロフの間合いを潰すための選択肢が乏しく、強引な飛び込みでワンツーを放つ場面が目立った和田は、ザキロフのジャブで牽制されると踏み込んでいくことが出来なくなってしまい、和田の攻撃は届かないがザキロフの攻撃は届く距離で試合を展開され、的確なジャブで削られると同時に手数でも上回られてしまったことでポイントでもリードされる苦しい展開を作られることになってしまった。
加えてザキロフはそこにタックルも混ぜることで余計に入り込み辛くさせており、先手を取り続けながら自分のペースで試合を展開できる流れを作っていった。
そういった試合作りという部分でもザキロフは和田より優れていたと感じる。
受けに回り過ぎたこと
和田は相手の攻撃を挫いて自分の攻撃を通すような、ある種のカウンター的な立ち回りが上手い選手であり、それで試合をリードしていく流れを作っていく特徴があると感じているが、今回は相手のターンにやりたいことをやらせ過ぎてしまった上に、自分のターンで効果的な攻撃を返すことが出来なかったので、得意の試合展開に相手を引き込んでいくことが出来なかったのではないかと思う。
また、和田はザキロフの攻撃を上手く防ぐことは出来ていたが、その先へと進むことが出来ず、ただ受けるだけになってしまっていた。
その結果、ザキロフは和田の反撃に怖さを感じなくなってしまい、いつまでも自分のペースで試合を進めていくことが可能となってしまったため、元気な状態を保ったまま有利な展開を維持することが出来るようになってしまった。
つまり和田はディフェンスでは対抗することが出来ていたが、オフェンスでは効果的なアクションを取ることが出来ておらず、それが結果的にザキロフを自由に、そして楽にさせてしまっていたのではないかと思う。
追い詰められることはないと察した相手から有利を奪うことは難しい。
またそういった状態に陥ってしまうと不利から抜け出すことも難しくなってしまうだろう。
そういった敗因の一方で和田がザキロフとの試合で見せた有効な攻撃とはなんだったのか。
有効だった攻撃
カーフキック
この攻撃は今回の試合の中で一番効果的に働いた攻撃になっていたのではないかと思う。
足が流れて倒れる場面やスイッチしてもらうのを嫌がる姿勢も見受けられていた。
ここを起点にして相手に問題を抱えさせることが出来れば、もう少しザキロフを不自由にすることが出来たかもしれない。
効果的に働いたかもしれない攻撃
サイドキックと関節蹴り
また、試合を見ていて和田はザキロフの打撃に苦労していたように見えたので、サイドキックや関節蹴りを用いて距離を確保しながら相手の嫌がる攻撃を挟んでいくのもありだったのではないかと感じた。
相手が意識しなくてはならない情報を増やすことはペースを取り戻す上で有効な手段だと感じるので、攻撃の種類を増やし、ただ見せていくだけでも相手のペースを乱すことに繋がったかもしれない。
そうして突進力を弱めたところに打撃で先手を取っていくことが出来れば、和田が自分のペースにザキロフを引き込んでいくことも出来たかもしれない。グラップリング展開とスクランブル
和田陣営で今回の作戦がどのように決められていのかは分からないが、クリエイティブなグラップリングの攻防は和田のストロングポイントの一つだと思うので、もっと積極的に組みの展開を挟んでザキロフの体力を削りつつ翻弄していく流れを作っても良かったのではないかと感じた。
グラップリングでもザキロフに先手を取られ続けてしまい、ディフェンス後に反撃の一手を打つことも出来ていなかったため、この部分でもただ受けるだけになってしまっていたのは勿体無かったのではないかと感じる。
総括
今回の試合は、「惨敗・全く歯が立たなかった」そんな内容にはならなかったが、試合作りなどを含めて総合的な能力で上手を取られていた印象。
フィジカルで優れていた部分もあったとは思うが、それでももう少し工夫や修正を入れることが出来れば、結果を変えられる可能性を感じる内容にはなっていたと思うので、ここからストロー級の和田竜光として仕上げていく過程で新たな階級にも上手くマッチしていくことが出来れば、良い結果を積み上げていくことも可能になってるのではないかと思う。
また年齢的な部分での厳しさが試合にあまり反映されていなかったように感じられたので、そこはポジティブな要素になっていたのではないかと思っている。