[UFCファイトナイト・ルイビル] 個人的ベストバウト
今大会でベストバウトだと感じた試合はプレリム・ライト級の一戦。
ティアゴ・モイゼスVS.ルドビト・クライン
お互いにサブミッション・KO/TKOを狙える総合的に優れたファイターであり、勝つための形や武器を持っている。
そんなMMAファイターとしての厚みを持った両者の戦いは非常に見応えのある駆け引きとテクニックが詰まった一戦となっていた。
その中でも特に目を引いたのはクラインのテクダウンディフェンスだった。
モイゼスの一手を封じたクライン
まずこの試合はルドビド・クラインが判定勝ちを収めており、試合をリードしていたのもクラインだった。
加えてクラインは打撃面でも優れた展開を作りダウンも奪っている。
しかしそういった状況下でもモイゼスは強みであるグラップリングの技術を活かすことでリードを奪い返すことが出来るファイターなので、テイクダウンを奪うことでクラインの勢いを潰すことが出来る可能性を持っていた。
けれど結果的にそういった展開が生まれることにはならなかった。
モイゼスは何度も良いタイミングでタックルに入ることに成功していたが、クラインの丁寧なテイクダウンディフェンスがそれをほぼ全て防いだ為、モイゼスは自分の展開に持ち込むことが出来なかった。
ただ、モイゼスも選択肢を潰されてしまっていたものの、極端に崩れることはなく一発の可能性を感じさせる圧力をクラインにかけ続けていた。
その緊張感のあるやり取りの中で、虚を突かれる事もなく対応し切って見せたクラインの安定したディフェンス能力が光る内容となっていた。
勝負を決定付けた一撃
攻撃の手段を摘まれてしまい劣勢に陥りながらも粘り強く次の一手を探るモイゼスだが、3R目になるとクラインを倒す以外に勝利することが出来ない状態になってしまう。
しかし得意のグラップリングの展開には持ち込むことが出来ないため、ストライキングで勝負を掛けていく必要があった。
そこでクラインに致命的なダメージを与えることが出来れば、まだまだ勝負は分からないことになる。
そんな狙いを逆手に取って強力なカウンターを打ち込んだのはモイゼスではなくクラインの方だった。
クラインはモイゼスの打撃に合わせる形でテンカオをモイゼスのボディへ打ち込み、試合を決定づけるダメージを与えることに成功する。
今大会は膝が決まり手になることが多く、膝で合わせられる場面がよく見かけられたが、モイゼスVS.クラインでも勝負を分ける一撃は膝による打撃となった。
カウンターをもらったモイゼスはマットに倒れ込んでしまったが、クラインの上からの追撃を耐えてタイムアップまでなんとかサバイブしてみせた。
拮抗した攻防の中でお互いが見どころのある仕掛けを行い、選択肢の多いMMAの面白さを引き立てながらファイターが持つスキルを光らせていく。
そんな濃厚な内容となったモイゼスVS.クラインは、今大会の中では一番見応えのある試合のように感じたので、ベストバウトに選出したいと思う。