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AJ・マッキーは何故ポール・ヒューズに完敗したのか?

PFL SUPER FIGHTSで行われたAJ・マッキーVS.ポール・ヒューズの一戦は予想外の結果となった。

22-1というレコードを持ち、トップレベルの実力を誇るAJ・マッキーが若手のポール・ヒューズに一方的な試合を展開され、まさかの完敗を喫してしまった。

判定は2-1と割れることにはなったが、AJが自分の試合をさせてもらえなかったことや、求められていた内容と結果の落差を考えると個人的には完敗と言えるのではないかと思う。

ポール・ヒューズのポテンシャルとこれまでの活躍を高く評価する人は今回の結果にあまり驚きを感じてはいないかもしれないが、トップファイターであるAJ・マッキーのキャリアや実力を考えると多くの人はこの結果に驚くことになったのではないだろうか。

何故AJ・マッキーはポール・ヒューズに完敗したのか? 3つの考察。

1.新鋭のアグレッシブな勢いに飲まれてしまった?


©︎PFL

AJ・マッキーはこれまで下から上の選手を突き上げる立場として試合に臨み、脅威を与えながら快進撃を続けてきたところがある。

なので勢いのある選手を迎え討つという立場で試合に臨んだことや、その勢いを受ける側に回る経験が乏しく、飲み込む側ではなく飲まれる側から相手を攻略するという経験値が足りなかったのではないかと思う。

一方のポール・ヒューズは、キャリアと経験値ではAJ・マッキーに劣るもののその若さと6連勝中という勢いに加えて、ストライキング・グラップリングの両方でハードに戦うことが出来る技量を持っている。

そんな総合力もしっかりと蓄えた若手のパワーを前にして気圧されてしまったところもあるのではないか。

もしくわそれを跳ね返すだけの引き出しが見つけられないと感じてしまったのか。

そんな、気持ちの部分で押し負けてしまっていることが伺えるようなパフォーマンスであった上に、それがポール・ヒューズの距離を作ることにも繋がり、中に入られてしまったAJ・マッキーはリーチを活かすことが出来ず、常に不利な距離設定に追いやられてしまっていた。

その結果、AJ・マッキーは自分らしい試合運びが出来なくなってしまったと考えられる。

2.ライト級が適正ではない可能性


©︎PFL

AJ・マッキーが強烈な活躍を見せていたのはフェザー級で試合を行っていた時であり、当然のことながらフェザー級の時の方が打撃や仕掛けに入るスピードが速かった。

そしてそれはAJ・マッキーの強みを活かすことにも繋がっていたのではないかと思う。

AJ・マッキーはライト級に転向してからもヒューズ戦までは全勝を記録し負けはなかったが、フェザー級の時と比べると判定で勝つことが増えており、やや脅威性が低下していることが伺えた。

グラップリングの多彩さや対応力は健在だけれど、一発の脅威が上がった訳ではなく、逆にスタミナ面での不安が強まってしまったことを考えると、果たしてライト級がAJ・マッキーの適正階級と言えるのかどうか。

減量苦は軽減されるので、体格のことを考えるとライト級の方がいいのかもしれないが、ファイターとしての性能を存分に発揮出来るのはフェザー級なのかもしれない。

フェザー級最後の試合となったパトリシオ・ピットブル戦も判定ほどの開きがあった内容には見えず、少しの違いでコールされる名前が異なっていた可能性がある。

つまりAJ・マッキーはフェザー級であればチャンピオンクラスの実力を発揮することが出来るということだ。

それでも階級アップを選択したAJ・マッキーは少なからずライト級にメリットを感じていたはずなので、彼自身はそこを適正と考えているのかもしれない。

しかし、今回の敗戦でAJ・マッキーがライト級で戦っていくということの難しさが垣間見えることになったのではないかと思う。

3.ストロングポイントの偏り


©︎PFL

最後に挙げる要素はAJ・マッキーの総合的な能力の中でストロングポイントとされる部分に偏りがあるのではないかということ。

どのファイターにもある程度の偏りはあると思うが、MMAにおいては「均等に強い」ということが重要であり、常にその難しさが要求されることにもなる。

チャンピオンになろうとすれば尚更その要素は高いレベルで求められることになってくる。

AJ・マッキーはその点で十分に優れているファイターであると言えるが、ストライキングよりもグラップリングでの引き出しがより優れている傾向にある。

それはライト級に転向してより顕著になっていると言えるかもしれない。

逆に言えばストライキングの強さに難があるとも言える。

そうなると総合力に優れていて且つ打撃も強力なファイターとぶつかった時に、スタンドで対抗する手段が乏しくなり、プレッシャーに押し負ける展開を強いられてしまうことになるだろう。

ケージに追い込むのではなく、自分が追い込まれることになってしまうと、得意のグラップリングの展開も上手く機能させることが出来なくなってしまう。

今回のポール・ヒューズ戦はまさにそういった状況で、スタンドの打撃勝負で上手を取られてしまい、劣勢となったところを組んで解決していこうとするが、何も崩されてしないヒューズはいとも簡単にAJのタックルを切ることが出来てしまうので、AJはヒューズの打撃が届く危険な距離から抜け出すことが出来なくなってしまっていた。

ポール・ヒューズとAJ・マッキーはトータルファイター同士ではあるが、その中でも強みと言える部分があり、AJの強みとなるグラップリングに対抗できるだけの技術と戦術をヒューズは持っていたが、ヒューズの強みとなるストライキングに対抗する術をAJは持っていなかった。

つまりより均等に強化されていたのはポール・ヒューズの方であり、その点でAJ・マッキーが劣っていたということになるのではないかと思う。

打ち合う展開ではAJが完全に負けていたので、そこの能力にはかなりの差があったのではないかと思われる。

予想以上に開いた力量の差


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また、試合の組み立ての部分でもヒューズが上手で、きちんと自分が勝てる展開を作り、それを強いる状況へと追い込んだ。

そのポール・ヒューズもAJ・マッキーと同様にCage Warriorsまではフェザー級で戦っており、PFL参戦後にライト級への転向を行っている。

このように同じく一階級上げた者同士の戦いでハッキリと明暗が別れたことを考えると、ライト級によりフィットすることが出来るポテンシャルを秘めているのはヒューズの方であって、この階級においては力量の差がかなりあったということになるのではないだろうか。

ライト級王者のウスマン・ヌルマゴメドフにコールされたAJ・マッキーを圧倒する内容で破ったポール・ヒューズは自身の実力を証明し、この階級における存在感を示すことに成功した。


©︎PFL

13-1の戦績を持つ若手ファイターのヒューズがこれですぐにタイトル戦ということにはならないと思うが、ライト級戦線に大きな衝撃を与え、後の挑戦者候補リストに入ったことは間違いないのではないかと思う。

力強い戦いを見せるアイルランドの27歳が研ぎ続けるその牙は果たしてどこまで届くのか。

今後の活躍に期待と注目が向けられる。


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